時の流れというのは早いものであっという間に週末となり、マネージャーの仕事にもすっかり慣れた。
ふふふ、順応力が高いのと物覚えがいいのは私の長所であると自負しておりますので!
御手洗先輩は最後に「とにかく周りをこき使え!」という名言を残して今度こそ正式に引退した。ありがとうございました先輩。先輩の教えを守り、立派にバスケ部を支えていきたいと思います!
というわけで小菅くんよ、大いに役立ってくれたまえ。え、なんでオレってそんなもん目の前に居たからに決まっているじゃないか。
「さん、なんか御手洗先輩に似てきたよな」
「む、しつれーな」
似てきたのではない。元々少し似ているのだ。少し、ほんの少しだけ。余計悪いってなんでじゃー。
さて本日は1週間後に控えた文化祭に向けて準備のため買い出しに行くのである。バスケ部は毎年やきそばを売っているらしいので今年も無難にそれでいくとのこと。
練習は午前中で終わったのでお昼を食べてから街へ繰り出す予定なのであるが勿論私に土地勘はまだない。出かけたのってこないだの仙道くんとのデートだけだし。
つまりは道案内をしてくれる誰かをゲットしなければならないのであるが誰にしましょうか。と、シャワー室へぞろぞろ向かう部員たちを品定めしていると「」と声をかけられた。はっ、そのだんでーなお声は!
「牧さん!」
「今日文化祭用の備品を買いに行くんだろう?」
「え、どうしてそれを?」
「御手洗先輩に聞いたんだ。それで、まだはこの辺りに不慣れだろうからつき合ってやれと云われてな」
「ええっ」
なんと!普段エアークラッシャーな割にこういうところ気が利くんですよね御手洗先輩て!さすが元敏腕マネージャー!しかしそんなまさか牧さんをつき合わせるわけにはあわわわわ。と慌てた私に牧さんが小さく笑った。どっきゅん。
「オレじゃ嫌か?」
「滅相もございません!」
「ははは、じゃあ30分後に校門前でな。」
「え?」
「せっかくだから昼も一緒に食おう」
な、なん・・・だと・・・?激しく動揺。ま、まきさんと一緒にランチ・・・だと・・・?
ていうか誘い方がなんとスマートなこと!すてきすぎ!私の心臓はばっくんばっくんと激しい振動を繰り返しております。顔!顔にやけてないよね!どぅへへへへ、牧さんと制服でーと・・・なんというおいしいシチュエーションなの!御手洗先輩マジでぐっじょぶです!
30分後、ドキドキしながら校門で待っていると制服に着替えた牧さんが「すまん、待たせたな」と現れた。いいえ、まったくこれっぽっちも待ったなどと思っておりません。むしろ待っていた時間すらおいしい時間でしたありがとうございます。
じゃあ行くか、と並んで歩き出したのでありますがこの高鳴る鼓動が牧さんに聞かれていませんように!いや、実際はありえないってわかってるけどちょっと乙女思考モードなんだよ悪いか。
「何が食いたい?」
「んと、おすすめのとこでいいです。」
「じゃあ、ハンバーガーでもいいか」
「え?はい」
意外だな。そういうジャンクフードとか食べるんだ。マックかなモスかなフレッシュネスかな。駅前にあったのってその3つだよね?と思いきや連れてこられたのはおしゃんてぃーなまちのハンバーガー屋さんだった。さっすがー、モテる男は違いますねー!持ってるぅー。へえ、比較的学校にも近いしよく来てるんだろうな。慣れた様子で店内に入って行く牧さんに続いて店の中に入るとアメリカンな内装ですごくおしゃれだった。メニューも豊富で男子が喜びそうなボリューム満点のものからアボカドとかシュリンプとか女子が好きそうなものまであって幅広い。やるねー。
結局牧さんは超ボリューミーなお肉たっぷりハンバーガーを選び、私はスタンダードなチーズバーガーにした。なんで女子らしいアボカドにしないのかって?ふ、確かにアボカドを選ぶことにより女子度を見せつけることはできるかも知れない・・・しかし!アボカドバーガーとは得てしてとっても食べにくいものなのである!ふふふ、身に覚えのあるものは多いに違いない。ま、そんなわけでここは大人しくチーズバーガーよ。
「で、でかい」
「ははは、すごいだろ」
お待たせしましたーとお店のお姉さんが持ってきてくれたそれはとてつもない大きさだった。特に牧さんのやつヤバい。私のチーズバーガーだって結構な高さだけどその2倍はあるように見える。
どうやって食べるんだ。と凝視していると牧さんは手慣れた様子で両手で持ってがぶりと食べ始めた。ほほう、いい食べっぷりですね!男らしい!すてき!と見ている場合ではない。私も食べなきゃ。見よう見まねでかぷりと食いつく。おおー!なんとジューシーなお肉なんだ!すばらしい!バンズもチーズもおいしいしソースも絶妙です!
「すごーい!おいしい!」
「はは、よかった。女子はこういうの敬遠するかと思ったんだが、無性にこれが食べたくなってな」
つき合わせて悪いとは思ったんだがそう云ってもらえて助かった、と牧さん。きゅきゅん。ちょっぴりわがままな牧さん萌え。でもちゃんと相手を思いやる牧さん萌え。
確かに大口あけて食べるようなハンバーガーはデートでは嫌がられるだろうなー。しかし私はそんなこと気にしないのである。牧さんと一緒ならどこへでも!!そもそも食べ方なんぞいくらでもあるのだふはははは。
「は猫みたいだな」
「えっ」
どうしたんですかいきなり。まぁ犬か猫かって云われたら猫だとは思いますが。でも牧さんに云われると嬉しい。で、突然そんなこと云い出してどうしたんですか。
「食べ方が可愛い」
「えっっ」
ま、まきさんにかわいいっていわれた・・・だと・・・?
幻聴か。幻聴なのか。あれ、おかしいなあれだけおいしいと思ってたハンバーガーの味がわからなくなりました。頭真っ白っていうのはこういうことなのか。顔から火が出るかと思いましたよ。破壊力パネェっす・・・!こうかはばつぐんだ!
「どうした、顔が真っ赤だが」
「気にしないでください!」
しかも無意識ー!ド天然め!なんかもう実質的にも精神的にもお腹いっぱいなので付け合わせのフライドポテトは牧さんにあげます。さすが牧さんも高校生男子なだけあってぺろりと平らげてしまった。おそろしや男子の胃袋。
さてランチも済ませたところでようやく買い出しへゴーであります。ハァ、ちょっと落ち着かなければ。牧さんはいろんな意味で心臓に悪すぎる。
「今日は何を買うんだ?」
「えっと、装飾用のペンキと筆とボードです」
「それだけでいいのか」
「はい。容器や割り箸は注文済みですし、他は去年のものが残っているそうなのでそれを使います」
食材も勿論前日に届くように手配済みである。まぁ逆に云うとこれだけでいいからマネージャーだけで準備してるんだけど。とは云え結局牧さんに手伝ってもらってるんですけど。うむ、役得である。
「去年ってどんな感じだったんですか?」
「ああ、かなりの盛況だったぞ。途中で食材がなくなって早々に店仕舞いしてしまった」
「あ、だから去年のデータより食材多く発注したんだ」
「そうなのか」
「そうなのです」
御手洗先輩の指示で昨年の1.5倍の量を注文したのですがそういう理由があったからなのですね。
ちなみに先輩は当日乱入すると自ら宣言しておりました。でも最後の文化祭いろいろ回りたいからがっつり手伝いはしないって。どうぞ外で十分お楽しみください。
「のクラスは何をするんだ?」
「チョコバナナ売るらしいです」
1学期の時点で決定しているものなので私は聞いただけなんですけどね。鉄板ですよねチョコバナナ。ひっそりいっぱい食べちゃおー。ぬしし。牧さんのクラスはスムージーを作るんだそうな。おしゃれだな。
「牧さんコスプレとかしないんですか」
「いや、しないが・・・オレのコスプレなんて見たいヤツいないだろ」
いえ、此処におります。ていうかいっぱいいると思う。警察官とかパイロットとか軍服とか着せたい。制服萌えやばい。ぐふっ想像しただけで破壊力パネェっす!ハードル高いって云うならあえてサッカーのユニフォームとか!個人的にイングランドのホーム用白の長袖を着てみてほしいー!絶対かっこいいー!スペインのアウェイ用黒もいいなぁ。ぐへへ。
「オレはともかく、のは楽しみだな」
「へ?」
なんでも似合いそうだもんな、って、え、うそ、私?楽しみって、いやいやコスプレしませんよ?え、しないよね?聞いてないよそんなこと。え、神くんからそんなようなことを聞いてるってうっそだぁ。そんなこと聞いてないもん、うん、しないよ・・・ね?
なんだか嫌な予感したので咲良ちゃんと伊乃ちゃんにメールしたら恐ろしい返事が返ってきた。
『え、知らなかったの?』っておいいいいいい!聞いてないよ!あと1週間で準備しろと?!え、誰か用意してくれんの?いやいや私誰にもサイズとか云ってないしきっと自己責任な気がする!こうなったら私はナシでもいいですかね。って返信したら2人とも激怒メールを返してきた。
『ダメに決まってるでしょ!!』・・・ですよねー。こうなったらウサギの着ぐるみでも着るか。・・・すっごく怒られるだろうな。
「大丈夫か?」
「はい、なんとか」
まぁなんとかなるだろう、うん。
牧さんに連れられて資材屋さんで必要なものを買い込み、荷物はオレが引き取ると云ってくれた牧さんに甘えてそれらを預けて、アイス屋さんを見つけたので休憩してバイバイした。
今度はゆっくりでかけような、と去り際に云われて再度顔から火が出る思いをしたことを書き足しておきます、丸
小菅
ルックスも悪くないし実力もあって親しみやすいので何気にモテるけどなんだかんだ神くんの影に埋もれている。御手洗先輩曰く「イマイチぱっとしない」。同じ部活の友人その1としてなんだかんだ登場。
補足 牧さんも割かし直球。思ったことを口に出すので可愛いとか割と云う。ただし人とちょっぴりずれている。