筋肉痛がやばい。どれだけ運動不足だったんだろう私は。バスケした訳でもないのに全身筋肉痛になってしまいいろんな意味で泣きたくなりながら登校して机に突っ伏していると、前の席の春野咲良ちゃんが「ねえねえ」と話しかけて来た。

ちゃんてほんとに彼氏いないの?」
「え?なんで?」

昨日御手洗先輩とそういう話をしていたこともあってびっくりして顔を上げる。女子はこういう話題本当に好きだよなぁ。
確か彼女と、彼女の親友である山中伊乃ちゃんとは編入2日目くらいにそういうガールズトークをしたような気がするのであるが、何故それを疑われているのだろうか。

「じゃあ好きな人がいるとか」
「いや今のところそういう相手はいないけど」

はて、なんで彼女はこんなことを云ってきたのだろう。何か理由があるのかと聞いてみれば、日曜日に私が男の子と歩いているのを見たと云うのである。・・・あれを見られていたのか。
まぁそうだよね、普通に近場だし誰か知り合いがいてもおかしくないよね。仙道くん、いろいろ目立つしね。
あれはご近所に住んでいるお友達で、この辺りを案内してもらっていたのだと云うと「そっかぁ」と笑顔が返って来た。

「でもさすがちゃんだよね!まだ引っ越して来て日が浅いんでしょ?それなのにもう近所に友達が出来て、しかもあんなイケメンで、デートまでしちゃって!きゃー!」
「え、うん、たまたま同学年で意気投合しちゃっただけなんだけど」
「すごいすごい!私なんて絶対口聞けないもん」
「向こうから話しかけてくれたから話せただけだよ?」

それってナンパじゃない?!きゃーすごいすごい!と朝からハイテンションな彼女におねーさんはついていけません。
そこに「何をそんなに盛り上がってるのよ」と登校してきた伊乃ちゃんが加わり、さらに乙女パワーが炸裂しました。え、伊乃ちゃんも見てたのですか。2人で遊んでいたのですかそうですか。
ていうかなんでこんな時間差で聞いてきたんだろうか。何故昨日・・・あ、あれですね、御手洗先輩が1日中騒いでいたから聞けなかったんだねそうですね。

「めっちゃ背高かったよね?!バスケ部とか?」
「うん」
「でもうちの学校の人じゃなかったよね?」
「うん、別の学校の人」
「ええー!どこの学校の人?!」

いや、それはプライバシー的な問題もあるのでちょっと云えないなぁーなんて、高校バスケ界では既に有名人だろうからあんま関係ないかもだけど、っていうかこの話が御手洗先輩の耳に入ったら大変なことになるだろうから云いたくないんですけどね!
仙道くんの言葉が正しければ、先輩が目の敵にしている相手と歩いていたなんて知れたら・・・きっと根掘り葉掘り事細かに聞かれるに違いない。それは勘弁願いたい。
というわけでお2人とも、その件はくれぐれもご内密に。

「ええー、せめて学校くらい教えてよぉ」
「ちょっと伊乃!」
「何よ咲良、あんただって知りたいでしょ?」

ぬぬぬ、ただでは引いてくれないか・・・まぁ2人はサッカー部の内波佐助くんとやらにぞっこんらしいのでこの夏の大会も見に行ってないらしいし、学校を云ったところでわからないかな。
仕方なく陵南高校の人と答えたらまさかのタイミングで神くんが朝練から戻って来ていた。

「おはようさん。陵南がどうしたの?」
「あ、神くん!お、おはよう」

いやー!聞かれたー!いいですか2人とも内密にですよ!と目で告げると2人は頷いた
。いや、陵南ってバスケ強いらしいって聞いてね!とごまかすと神くんは首を傾げながらも頷いた。ほっ、一応ごまかせたみたい。
と安心したのも束の間だった。ものすごい勢いで般若の形相をした御手洗先輩が突っ込んで来たのである。ひいっ!

「ちょっと、ー!聞いたわよ!せんどーとどういう関係なのよ!」
「いや、なんのことですか、私には何のことやらさっぱりわかりかねます」

な、なぜ仙道くんの名前が!このタイミングで!ってどう考えても先輩知っちゃってるよね!どうしてだー!
いやいやこの2人以外にも見てた人がいたんでしょうね!そしてその人は仙道くんのことを知っていたんでしょうね!なんで御手洗先輩に云っちゃうかなよりによって!

「しらばっくれんじゃない!見てたヤツがいるんだからね何人も!アンタが日曜、せんどーとデートしてるとこ!」
「え、せんどーって陵南の仙道?え、さん仙道とデートしたの?」
「い、いやあれはこの付近に不慣れな私を仙道くんがいろいろと案内してくれてただけで」
「それがデートっていうんでしょーがああん?」
「いや一概にそうとは云い切れないと思うんですよね」
「あんた英語圏で暮らしてたんでしょー!」

はい、でーとと云えますすみません。でも一緒に出かけただけだもん、別に他意があったわけじゃないもん。
え、それは合コンを飲み会と云うのとおんなじだって?まあそう云えなくはないかもしれない。
あ、先輩もしかしてそれ彼氏さんとの経験談ですか。ひぃ!口が滑りましたすみません!

「どこでどう知り合ったわけ?アンタ、イギリスからこっち越して来たのまだひと月と経ってないんでしょ!」
「お家がご近所で、偶然会っただけです」
「偶然会ってどうしてデートまでする仲になるのよ」
「ええ?同い年だってわかって、なんとなく仲良くなって、マネージャーやるにはジャージ買わなきゃと思って仙道くんにお店の場所聞いて」

そしたら流れで一緒に行くことになっただけです。ううう、やっぱり説明させられた・・・こういうのやだよー、プライバシーの侵害だい。
なんとなく恥ずかしくなって俯くと、先輩は「せんどーめ、手の早いヤツ!」と何故か闘志を燃やし出した。なぜ。

「ちょっと神!うかうかしてるとせんどーに取られるだろ!」
「取られるって」
「いいのか神!いやよくないだろ神!」
「先輩、落ち着いてください。とりあえずHR始まるので教室戻ってください」
「ちょ、おま、何をそんなに落ち着き払ってるのよ!」
「後はオレに任せてください」

神くんはぎゃあぎゃあと騒ぐ先輩の肩を押して教室の外に追い出した。
おお、神くんすごいぞ。大人しくなりゆきを見守っていた咲良ちゃんと伊乃ちゃんはニヤニヤと笑っている。ちょ、なんなのその笑みは!

「これは面白くなりそうね、咲良」
「そうねー、伊乃」
「ええええ」

全然面白くないんですけど!ちょうど担任が教室に入って来たのでこの話はお開きになったものの、席に戻って来た神くんが「後でじっくり話聞かせてね」って笑ったのがなんとなく怖かった。え、じ、神くん?




「ふうん、仙道にナンパされたんだ」
「ナンパじゃないよ?だって同じマンションなんだもん、挨拶はするし世間話くらいもするでしょ」
「挨拶はともかく、話はなぁ、あんまりしないよ。にしても同じマンションかぁ、いいなぁ仙道」

え、どういうことなの。神くん相手にはなんだかいろいろと嘘もごまかしも云えなくていろいろとしゃべってしまっているランチタイム@屋上 w/神くんなうです。

「だって同じマンションだったから一緒に登下校できるし、すぐに会えるし、一緒にご飯食べたりもできるんでしょ?」

ま、まぁそうですね。え?仙道みたいのが好みなの?ってどうしてそうなるんですかー。
そりゃ仙道くんはかっこいいし優しいしかっこいいし面白いしかっこいいし可愛いけど、好みか好みじゃないかって聞かれたら好みだけど、でも決してそういう目で見たことなんてないんです本当です嘘じゃないですたぶん。

「ハァ・・・さんてほんと素直っていうかなんていうか」
「え?」

「とりあえず、このことは御手洗先輩には内緒にしておこう。いろいろと面倒だから」
「う、うん。そうしてもらえると非常に助かります」

さすが神くん、わかっていらっしゃる!ぜひともよろしくお願いいたします。

「ねえさん」
「え?」
「オレはさんの好みにあてはまるかな」
「・・・え?」

なんですと。そりゃ神くんはかっこいいし優しいしかっこいいし癒しだしかっこいいし可愛いけど、好みか好みじゃないかって云われたら好みだけど、でも決してそんな風に見たことなんてないんです本当です嘘じゃないですたぶん。
あ、あれ、クスって笑われたんですけど。いつもなら癒されるのになんなんだこのドキドキは。

「ちなみにオレはさんすっごい好みなんだけど」
「・・・・・・え?」

なん・・・だと・・・?ぽかんとしていたら風で乱れていた前髪を優しく撫でられて顔から火が出るかと思った。

「仙道には負けないから」
「・・・・・・。」

神くん、おそるべし。暗転。







春野咲良
クラスメイト。乙女。しゃーんなろー。




山中伊乃
クラスメイト。姉御肌。ないすばでー。




補足 神くんは直球。が押しに弱いとわかっているので計算して押して来る。おそろしい子。