テスト期間に入ると国体まであまり日にちがないとかなんとかで、部活停止直前に練習試合が組まれた。
あああ、休みなのに早起きしなくちゃいけないなんて・・・つらいです。
眠さに耐えながらも集合場所へ向かう途中、いつもはあまり使わない道を歩いていたのですが・・・事故に遭いました。
「うわっ」
「え?きゃあ!」
背後でがちゃんっと音がしてうわっと声が上がって、何事かと振り向いたところで衝撃が走った。何がなんだかわからない内に何か重いものにのしかかられて道路脇の芝生に倒れ込む。
「いってぇ・・・あ」
「いたたた・・・え」
私の上に乗っかっていたものがむくりと起き上がった。それはジャージ姿の男の子で、整った顔立ちの切れ長の目は驚きに見開かれている。
その視線の先の彼の大きな手。その手が鷲掴んでいるのは私の胸。
彼は何かを確かめるかのようにもにもにと手を動かして・・・
「きゃあああ!」
「あ、すんません」
おいコラァァァ!「あ、すんません」で済むと思ってんのかぁぁぁ!歯ぁ食いしばれやぁぁ!とばかりに思いっきりひっぱたいてやりましたよ。うん、手が痛い!ていうかお尻も腰も背中も首も痛い!
「イテェ・・・不可抗力なのに」
「う、うそ!もにもにした!」
「・・・まぁ、なんていうか・・・無意識だ」
「っ・・・!・・・っ!」
なんなのこの子おおお!悪気がなさすぎる!アンタねええ!美形だからってなんでも許されるとか思ったら大間違いなんだからねええええ!休日の朝早くだったからか通行人が他にないからまだよかったようなものの、これ公衆の面前だったら相当な恥ずかしさだぞ!いや、他に人がいたら即通報ものだぞ!
「怪我」
「え?」
「怪我、ないスか」
「え、あ、う・・・ん、多分」
一応心配してくれている様子の彼に怒りが少しばかり引いた。よくよく見てみればなんだか見たことあるような子だし、もしや。
手を借りて立ち上がりながらだいぶ上の方にある彼の顔をじっと見る。この高身長、切れ長の目、整った顔立ち。そして道路の端に転がる自転車。き、君はもしや!
「富ヶ丘中、流川楓」
「!」
「オレの名前。なんかあったら、連絡くれ」
おおおおお!やはり!やはり流川くんでしたか!なんだこの遭遇率!さすがですトリップの神様!でももう少し穏やかな出逢い方したかった!初対面で胸揉まれるとか!ううう、おとめのじゅんじょーがぁ。
何か書くもんあるかって聞かれて、生徒手帳とペンを出したら流川くんはさらさらっと連絡先を書いてくれた。おお、ちゃんと責任を取ろうとするところは男前だな!
「海南大附属高校1年」
「あ、うん。私の名前」
「海南・・・」
生徒手帳の個人情報欄を勝手に見た流川くんは海南の名前にぴくりと反応したけど、それ以上は何も云わずに手帳を返した。そして倒れた自転車を起こして「じゃあ」と颯爽と去って行きました。
・・・・・・なんか、なんだったんだろう。今のは夢だったんじゃないかっていうあっさりさなんですけど。
はっ、ぼーっとしている場合ではない!早く行かないと集合時間に遅れるううう!と慌てて行ったら、実は盛大に太ももを切ってて血が出てたことに神くんが気づいて、気づいた途端に痛みだすやら、牧さんを始め皆にものすごく心配されるやらで我らが王者海南バスケ部は騒然となったのである。