背後から急に口を塞がれました。
「っ?!」
「・・・静かに」
「・・・!」
手を当てていたのは長次くんだった。長次くんは私を抱えると跳躍して近くの木の上に飛び移る。
そこには3年生2人と、2年生2人がいた。あらま、長次くんのチームは下級生が多いね。伊賀崎くんと久作くんは昨日会ったけど、後の2人は初めましてだ。ふむふむ、三反田数馬くんと池田三郎次くんとな。よろしくお願いします。
三反田くんは保健委員らしく、穴に落ちた伊作くんを少し心配しているようだった。その伊作くん達は私が居なくなっているのに気づき慌てている。
このまま見つからないように移動するぞ、と長次くんが云い(久作くんが通訳してくれた)、気配を殺しながら移動を開始した私達だったけど、少し走ったところでこれまた邪魔が入った。
「見つけたぞさん!」
「み、見つけたのかぁ〜」
「み、見つかったのかぁ〜」
「よかった・・・!」
「小平太くんに神崎くんに富松くんにハチくん・・・どしたの」
その電車ごっこみたいなそれは。あ、いやね、なんとなくはわかったよ?神崎くん対策でしょ?
そうじゃない。なんで皆そんなに疲れてるんだ?あ、いやね、なんとなく想像はついたよ?小平太くんだよね・・・
なんかもう始まる前に疲れきっている下級生に小平太くんは気づいていないんだろうか。気づいていないんだろうなぁ。
ハチくんはなんとか大丈夫そうだけど、3年生の2人はアレ目を回しているんじゃないかな・・・大丈夫かな。
「うわっ、やっかいな相手に見つかってしまいましたね」
「ど、どうしますか中在家先輩」
「・・・・・・小平太は、私が相手する。孫兵は八左ヱ門、数馬は左門と作兵衛を。お前達はさんを連れて先に行け」
「は、はい!」
おお〜。長次くん、なんかカッコいいよ!てゆーかちゃんとしゃべれるんじゃん!今のは普通に聞こえたぞ!
ともかく、長次くんの合図で皆が散開した。長次くんが小平太くんに向かうと小平太くんは面白いとばかりに迎え撃って、電車ごっこの縄が解かれた。
「左門、君の相手はぼくだ!」
「よし、数馬来い!」
「ばっか!どこ行くんだ左門ー!」
「あ、おいお前ら!」
「竹谷先輩はこっちです」
「うわっ、と・・・悪いな孫兵。俺に毒虫攻撃は効かないぞ」
「わかってますよ。先輩に勝とうなんて思っていません」
おおお〜。皆、なんかカッコいいぞ!てゆーか神崎くんはなんで目の前に三反田くんがいるのに反対方向に向かって勢いよく飛び出して行くかな。富松くん可哀相に・・・
三反田くんは役目は終わったとばかりにもうこっちに合流してきました。あ、ちなみにさすがに2年生3年生に抱っこなんてさせられないから自力で走ってます。
伊賀崎くんは大丈夫かな。5年生相手を足止めするのって大変だろうし・・・と後ろを気にして振り返った時だった。
「うわああ!」
「うわー!三反田先輩!」
「大丈夫ですか?!」
「へ?」
うわー、なんかデジャブー。目を離した隙に三反田くんが穴に落ちました。保健委員ってなんか呪われているんじゃなかろーか。さすがに2年生2人じゃ穴の中から先輩を引き上げるのは困難そうだったので手伝ってあげようと穴を覗く。が。
「わわっ」
「さんゲット!」
「ハチくん!伊賀崎くんは?」
「置いてきました」
ハチくんに攫われました。やっぱ伊賀崎くんは足止めしきれなかったかぁ。となると、このままゴールって感じかな。
あ、でもあの子にまだ会ってないなー。
「ハチくん、私綾部くんにまだ会ってない」
「え?」
「気をつけた方が」
いいかもよ、と続けようとしたんだけど少し遅かったみたいです。何が起こったのか正確にはわかりませんが、がつっと云う音がしたかと思ったらハチくんがいきなりすっ転びました。結構なスピードで走っていたので私は勢い余って放り出されてしまう。(またかー!)しかしまたしても誰かがうまくキャッチしてくれた。
「ほいっと。だーいせーいこーう」
「綾部くん!」
「喜八郎がいいです」
「あ、うん。喜八郎くん・・・」
相変わらずマイペースだね君は。大成功、と云う事はやっぱりハチくんが転んだ原因は君にあるんですね。
最早ハチくんの姿は見えないけど大丈夫だろうか。なんか心配な子達が増えて行くんですけど・・・