此の度は5年生に囲まれました。
「いつの間になんでそんな仲良くなってんだよ」
「あら何ですか八左ヱ門くん、ヤキモチですかぁ?」
「ばっ、ちげーし!」
にやにやと悪い笑みを浮かべる三郎くんにむきー!と食って掛かる竹谷くん。竹谷くん・・・完全に遊ばれてるの気づいてないのかなぁ。
「さーん、ハチも名前で呼んでほしいって云ってます」
「お、俺は別にそんなこと云ってねえよ!」
三郎くんにからかわれ、売り言葉に買い言葉状態な竹谷くんは口ではああ云いながらもちらちらとこちらを伺うように視線を送って来る。
あー、三郎くんがからかいたくなる気持ちもわかるなぁ。反応が可愛すぎる・・・私もからかいたい・・・からかいたいけどさすがに可哀相な気もする。さっき蛇ぶつけちゃった手前、今回は助ける側に回ろう。
「ね、ハチって呼び方可愛いね。私もそう呼んでいい?」
「えっ、お・・・お好きにどうぞ」
「おいハチ・・・その返事はないだろ」
せっかくさんが助け舟出してくれてんのに・・・と三郎くんは呆れ顔。素直になれなくさせたのは君でしょーに。
またやいやいと云い合いを始めた三郎くんと八左ヱ門くんを雷蔵くんがなだめている間、勘ちゃんは隣でマイペースに麻婆豆腐を頬張る久々知くんに声を掛けていた。
「兵助も名前で呼んでもらえば?」
「ん?そうだな、さん俺もお願いします」
「うん」
正直どうでもいいとか思ってそうだなこの子は。そんなことより麻婆豆腐美味しいですね!っていい笑顔向けてくるし・・・幸せそうで何よりだよ。いや、おばちゃんの麻婆豆腐は絶品で私も幸せだけどね!
ふいにどたどたと足音がしたと思ったらぼろぼろな格好の小平太くんが食堂に飛び込んで来た。まるで道なき道を突き進んで来ましたというような風貌だけど・・・どしたんだ。
「あっ、さん!もうご飯食べちゃったか?!」
「うん、見ての通り現在進行形だけど。小平太くん・・・どうしたのそのカッコ」
「委員会帰りだ!あー、一歩遅かったかぁ!急いで帰って来たのになぁ」
「委員会帰りって・・・どんな委員会活動をすればあんなことになるの」
「七松先輩は体育委員会の委員長で、体育委員会はいつも裏々山まで一直線でノンストップ登山をするのが定番なんです」
「通称、いけどん登山です。その後マラソン塹壕掘りコースかいけどんバレーコースかは日によって変わります」
雷蔵くんと三郎くんが解説をしてくれるけど・・・解説内にいくつかわからない単語が。いけどん登山て、いけどんバレーって・・・何。「え、裏々々々山まで行くんじゃないの?」「俺は裏々々々々山まで行くって聞いたけど?」とは、い組。いくつ裏山があるんですか。
とにかく、体育委員会はあれだけぼろぼろになるような活動を毎日してるってことだね。でも6年生の小平太くんでこれじゃ下級生は大丈夫なんだろうか・・・
と、またふいにばたばたと足音がして、今度は滝夜叉丸くんが入って来た。彼は小平太くんをみつけるとあっと声を上げる。
「あーっ、七松先輩!やっぱりそのまま来ちゃったんですね!着替えてから行ってくださいとあれほど云ったのに」
「滝夜叉丸くん」
「あ、さん。ご飯、もう食べちゃいましたか?」
「うん、見ての通り現在進行形」
小平太くんといい、滝夜叉丸くんといい、何故私のご飯を心配(?)するんですか。
え、何?委員会中にふと思い出していけどん登山を途中で切り上げて戻って来たの?そ、そうなんだ・・・なんか、ごめんね?
「滝夜叉丸くんも体育委員会なんだ」
「はい・・・」
「あ、なんか、お疲れな感じ?」
「いえ、今日は七松先輩が途中で切り上げてくれたので大丈夫です」
「・・・いつもは苦労してんだ」
力なく笑う滝夜叉丸くんはさながら仕事に疲れたOLのようである。案外苦労性なのかな。意外な一面をかいま見た。
いつの間にか自分のご飯をゲットした小平太くんは、八左ヱ門くんに目を留めたようだ。え、どしたのその悪い顔。
「お、八左ヱ門!お前食べ終わってるならそこ替われ」
「え?!いや、まだちょっと残って」
「か、わ、れ」
「は、はいっ」
え、ちょ、小平太くん、笑顔が怖いよ??八左ヱ門くん顔が真っ青だけど大丈夫?やっぱり先輩は怖いもんなのか。いや、あれは怖いな、うん。
結局八左ヱ門くんは隣のテーブルに移り、小平太くんは私の隣に落ち着いた。いや、すごい早さでご飯をかき込んでいるから、落ち着いたというのはちょっと違うかな。
「小平太くん、もう少し落ち着いて食べたら?」
「んむ!ほうだな!」
「・・・全然落ち着いてない」
「七松先輩が落ち着いてることなんて滅多にないですよ」
「なんだー、三郎、なんか云ったか」
「イエナニモ!」
・・・小平太くんて、後輩には怖いんだなぁ。(後に聞いた話によると、後輩からは暴君と恐れられているとか。うわっ、なんか想像つくー)
滝夜叉丸くんはどうしたかなと思って探したら、八左ヱ門くんの隣で食べていた。あれ、いつの間にか次屋くんと神崎くんと富松くんと伊賀崎くんもいる。
「そうださん、今朝の約束覚えてるか?」
「え?今朝の約束?小平太くんと?」
はて、何か約束しただろうか。うーん、と記憶を遡ってみるけど、思い出せない。
今日取り付けた約束と云えば、1年は組と5年生5人とお話することくらいだったと思うんだけど。あ、学園長に1年は組と一緒に授業受けていいか聞かないと。
「忘れちゃったのか?ホラ、寝床でした約束!」
「ああ!あれね。いや、あれ今朝っていうか昨夜って云わない?」
「え、でも丑の刻くらいだったから今日だぞ?」
「それでも今朝とは云わないでしょ・・・」
「ね、寝床でした約束・・・?」
「丑の刻に・・・?」
・・・あ、あれ?なんか周りの皆の様子がおかしいような。
「そんな、さん、いつの間に七松先輩とそんな仲に・・・?」
「え?」
「ふふーん、いいだろう!」
「え、え?」
何の話ですか?何か、大変な誤解をされているような気がする!
その誤解を解かなければと声を上げようとした時、心強い助っ人が現れた。
「おい、何を誤解しているか知らんが、お前らが思っているようなことではない」
「潮江先輩!」
「俺たちが思っているようなことではないって、じゃあどういうことなんですか」
「かくかくしかじかだ」
「なーんだ、そうだったんですか」
「もう、脅かさないでくださいよ七松先輩」
・・・またしてもかくかくしかじかで終わってしまった。いや、潮江くんよありがとう。助かりました。
しかし皆は一体どんな誤解をしていたんだろうか。
「ところで、その約束の内容というのは?」
「それは内緒だ!」
「ええー?!」
「私とさんだけの秘密だもんな!」
「おい、俺もあの場に居た事忘れていないか」
細かい事は気にするなって小平太くんは笑うけど、そう細かい事でもないような気が・・・いや、さすが小平太くんとしか云えないか。
ところでその約束だけど、1年は組との約束が終わってからでもいいかな。この後庄左ヱ門くんがは組を集めてくれることになってるんだよね。いつの間にと思うなかれ、私は約束は守る女なのだぁ。