3年生の伊賀崎孫兵くんときみこちゃんの感動の再会を前に、ああそういえば蛇キャラはこの子だったと思い出した。



「生物委員かぁ。そういえばさっき小松田くんに虫小屋の場所案内してもらった」
「よく脱走するので近づかない方がいいですよ」
「それも云われた」



虫は苦手だからこっちから近づこうとは思わないけど・・・脱走したら関係ない気が。
頼むからしっかり管理してくれ。



「でもまぁ、今回はきみこだったからまだよかったよね」
「そうだな、いつもは大抵毒がある奴らばっかりだからな」
「さすがの俺でも毒持ちの生物を顔面キャッチなんてマジゴメンだし」
「さすがに私も毒蛇だったらもちょっとちゃんとキャッチできるようにしたげたよ」



うっ、そんな恨みがましい目で見ないでよ竹谷くん。うー、と唸りながら涙目で見られると良心が痛みます。云っとくけどわざと顔面キャッチさせたワケじゃないんだよ!しかしわざとじゃないとはいえ、この場は謝っておこう。
ほんとごめんね!と手を合わせて見上げると、竹谷くんの顔が赤い事に気づいた。・・・あ、もしかして、さっきの衝撃で?!



「竹谷くん、きみこちゃんがぶつかった衝撃で顔が赤くなってるから、冷やした方がいいよ!」
「えっ!いやっ、これはっ」
「いやー、これの原因はそうじゃないような」
「・・・無自覚って危険だな」



うん、とい組の2人が頷き合っているけどなんのこっちゃら。
首を傾げていると、感動の再会をひとしきり堪能し終えた伊賀崎くんが正面に立った。



さん、きみこを見つけて頂いて本当にありがとうございました」
「いいえ。今度から気をつけてね」
「あー、それは・・・」
「難しいんじゃないかな・・・」
「しょっちゅうだもんな」
「ええと・・・なるべく気をつけてね」



5年生3人が遠い目をした。もはやこういった脱走劇はお約束なのであろう。しかしできれば虫は勘弁願いたいです。
すっかりきみこ捜索に時間を割いてしまい、その間におばちゃんは仕込みを全て終えてしまったらしく「もう戻っていいわよ」と云われてしまった。



「じゃあ俺は委員会があるのでこれで」
「お、俺も。孫兵、行くぞ」
「はい。ではさん、失礼します」
「はーい。・・・尾浜くんは?」
「俺も委員会あるんですけど・・・よかったらさんも一緒に行きませんか?」



一緒にって、委員会に一緒にってこと?尾浜くんは何委員会なの?と聞くと、学級委員長委員会ですとの返答。どういう委員会なんだそれは。活動内容は主に互いの愚痴を聞き合っているだけとのことで(ますますなんの委員会なんだそれは)、さんが来てくれたら皆喜ぶと思うと素敵な笑顔で説得され、流れで学級委員長委員会に参加する事になってしまった。



「え!さん?!」
「え!あの?!」
「おい勘右衛門、なんでさんと一緒なんだ」
「食堂で一緒におばちゃんの手伝いしてたんだ」
「マジでか!なんだよ抜け駆けか?兵助もだろ」
「そうだよ。でも皆聞いて驚け、今日はさんも学級委員長委員会に参加してくださることになった!」
「マジでか!」
「「わーい!」」



なんだこの委員会は。座布団にお茶にお菓子って。これで互いの愚痴を聞き合うだと・・・?まるで主婦ジャナイカ。
早速私の分の座布団とお茶とお菓子を用意してくれる1年生2人・・・可愛いなぁ。こんな可愛い子達が愚痴とか云い合うの?うわっ、なんか微笑ましい!



「で、そちらは鉢屋くんですか不破くんですか」
「鉢屋三郎です」
「なんで2人の名前は覚えてるんですか?」
「インパクト強かったから」



ぶーぶーと尾浜くんが口を尖らせて「ずるい!」と云いますが、尾浜くんのこともちゃんと覚えたよ?と云うと今度は1年生が「ぼくたちのことも覚えてください!」と元気よく手を挙げて自己紹介をしてくれる。うううー、可愛いのう。



「1年い組、今福彦四郎です!」
「1年は組、黒木庄左ヱ門です!」
「うんうん、彦四郎くんに庄左ヱ門くんね」



にまにましながらよく出来ました〜とばかりに2人の頭を撫でてあげたら2人ともちょっと照れながらでも嬉しそうに笑ってくれて、ああーもうおねいさんは大満足です。すると今度は5年の2人がむくれた。なんだ。



「なんでさん1年は名前で呼ぶんですか」
「え?なんとなく?」
「私の事も名前で呼んでほしいです」
「俺も!」
「あ、そう?じゃあそうする」



別に呼び分けしていたわけではないので快諾すると、2人はよっしゃーと拳を握った。あらま、そんなに喜んで頂けるとは。
んで。



「ごめん、下の名前なんだっけ」
「うっそ?!私さっき名乗りましたよね?!」
「名前覚えたって云いましたよね?!」
「えっとぉ、勘ちゃんとさぶちゃんだっけ」
「逆!逆ですって!勘ちゃんはこっち!」
「てゆーかなんでちゃんづけ?!」



実は普通に覚えてるんだけど、なんかからかってみたくなったんだよねー。ははは。



さんてすごい・・・!」
「うん、あの先輩達をからかっている・・・!」



なんか1年生に尊敬の眼差しを向けられている・・・なんでだろ。
さてからかうのはこの辺りにして。せっかくだからお茶頂こうっと。あらこのお茶美味しいな。お団子も〜。こんなのいつも食べてるの?いいなぁ。



「おいしい〜」
さん甘いもの好きなんですか?」
「勿論!女の子ですから」
「え、さんて女の子って歳なん「三郎くん、今何か云ったかな」・・・イエナニモ」



なんて失礼なのかしら。そりゃあこの時代からしたら十分大人の年齢だし実際女子とか云えない歳かもしれないけど女性はいつまでだって女の子としての気持ちを忘れたりしないんだからねっ!



「・・・・・・」
「あーあ、さん落ち込んじゃった」
「鉢屋先輩酷いですね」
「鉢屋先輩最低ですね」
「え、むしろ今私の方がハートブレイクなんですけど」



何故か三郎くんがフルボッコ状態に。あれま、味方が多くて嬉しいねー。いやー、1年生はあれ素だろうからともかく、勘ちゃんは乗ってくれたんだな。いいかい、1年生諸君。三郎くんはこうやってからかうんだよぉ。



「そ、そういえば、さんの世界ではさんの歳で結婚されている方は珍しいんですよね」
「えっそうなんですか?」
「・・・なんで知ってるの」
「勿論、その話をされている時私も勘右衛門も食堂にいたからです」
「あ、そう・・・」



一体何人があの話を聞いていたのか・・・で、それがどうしたの?
つまりまだ結婚には早いということで女子と云っても差し支えない年齢なんですよね、とな。そうそう、そうなのだよ。いちおーね。



「私の認識不足でした!謝りますからもうこれ以上私をイジらないでください」
「あれ、いじってるってわかった?」
「わかりますよ」
「いつもなら三郎がいじる側だもんな」
「まーな」



成る程。だから1年生はいつもいじる側の三郎くんをいじる私に尊敬の眼差しを送ってきていたのか。
ああ、ほら、こんなキラキラした目で見つめられたら・・・またやってあげたくなっちゃうよね?
とりあえず今のところはこれで勘弁してあげよー。あんまりやりすぎると、こういう相手は返り討ちが怖いからね!引き際が肝心なのだぁ。