10分後、富松作兵衛くんが神崎くんと次屋くんを探しに来てくれました。
どうやらこの2人の迷子は毎日のことだそうで・・・苦労してるんだね富松くん。君もよかったら一服して行きなさいよ。



「この一杯を頂いたらおれたち行きますね」
「うん。授業間に合う?」
「大丈夫だと思います」



引き止めておいて授業終わっちゃったら申し訳ないもんねー。あ、でも富松くんには2人を引き止めていてくれてありがとうございます!って物凄く感謝された。やっぱり私の勘は当たってたんですね。



「ところで学園長先生はいらっしゃらないのですか」
「うん、私が戻って来た時にはいなかったんだ。何処行っちゃったかわかる?」
「多分学園内を散歩してるんじゃないですか」
「散歩かぁ、まぁ一日中この庵に居てもつまんないだろうしね」



学園長って暇そうだもんなぁ〜。だから怪しい術なんか試そうと思っちゃうんだよ。
お茶を飲み終わった3人は授業へと戻って行った。富松くん、神崎くんと次屋くんロープで繋いでたな・・・ありゃあ相当な方向音痴なんだろうなぁ。富松くん、がんばれ。私は君を応援しているよ。
さて、私はどうしようかなぁ〜。学園長を見習って散歩でもしようかな。ってことで。
足下に気をつけながら(また落ちたくないからね!)歩いていると、荷車を引いた食堂のおばちゃんと出会った。



「あらちゃん、お散歩?」
「あ、そうです〜おばちゃんは?」
「食材が届いたっていうから取りに行ってたのよ」



成る程荷車にはたくさんの食材が積まれている。これ1人で引くの重くないかなぁ・・・
いつもやってることかもしれないけど、重いものは重いはずだ。よし、ここは一つ。



「手伝います」
「あら、いいの?何処かへ行く途中だったんじゃない?」
「いえ、やることがなかったので散歩していただけなんです」
「そうなの。手伝ってもらえるなら助かるわ」



おばちゃんは嬉しそうに手伝いを受け入れてくれた。よかったー、提案してみて。荷車を後ろから押しておばちゃんについて行く。夕飯は何作るのかなぁ。おばちゃんの料理は予想以上に美味しかったから、今晩も期待です。



「ああ着いた!ちゃんのおかげで楽だったわ、どうもありがとう」
「いいえ、このくらいお安い御用です。もしよかったら、何か仕込みもお手伝いさせてください」
「ええ?いいの?じゃあお願いしちゃおうかしら」



私に任されたのは野菜を洗う仕事だ。よーし、いっちょやったるでぇ。
・・・かなりの量だけど、これもいつもおばちゃん1人でやってんのかぁ。すごいなぁ。そう云うと、午後の授業が終われば食堂当番の子が手伝いに来てくれるのよ、とおばちゃんは笑った。そっか。食堂当番というものがあるのか。でもこれだけの量なら手は多いに越した事ないよね。おし、洗って洗って洗いまくるで!
せっせせっせと野菜を洗っていると、午後の授業の終わりの鐘が鳴った。



「あれっ」
「あ、5年生の・・・」



しばらくすると食堂当番の生徒がやって来た。5年生の、さっき会った子だってのはわかるんだけど・・・あかん、名前が思い出せない!えーと確か、きくち?おばま?そんなような名前だったような?



「久々知兵助です」
「尾浜勘右衛門です」
「あー、ごめんね覚えらんなくて。久々知くんと尾浜くんね」



察してくれた2人は改めて自己紹介してくれた。おお、惜しい、1文字の違いだった。
何やってるんですか、って聞かれたけど見たらわかるでしょーにお手伝いしてるんです。



「なんでさんが食堂の手伝いを?」
「やることなくて困っていた時におばちゃんに会ったから」
「ほらほら2人とも突っ立ってないで手伝ってちょうだい!」
「あ、はい!」



3人でやり始めるとあっという間に野菜洗いは完了した。次は洗った野菜を切る作業です。洗った量があれだけなんだから、切る量だって相当だ。
あまりの量に「おらああああ!」と内心で叫んで気合いを入れながら出来うる早さでざかざか切っていたら
周りから感心の声を頂きました。



ちゃん手際がいいわね!」
「ホント、すごいですね。普段料理なさるんですか?」
「うん、まぁ。でもこれだけの量の食材を扱うのは初めてだけどね」
「いや・・・初めてとは思えない手さばきです」



感心ばっかりしてないで2人は手を動かしてー、と云うと5年生2人は慌てて作業に戻った。おばちゃんは流石と云うか作業の手は止めていない。
しかし5年生2人もなかなかの手際である。流石5年もやってれば上手くなるかぁ。



「おばちゃん、今日の夕飯は何ですか?」
「今日はねぇ、豚の生姜焼きと天ぷらと麻婆豆腐よ」
「麻婆豆腐!」
「あ、いいねぇ麻婆豆腐。私麻婆豆腐にしよ」



麻婆豆腐に嬉しそうに反応した久々知くんに同意して夕飯を決定すると、久々知くんはばっと私に振り返った。実にいい笑顔である。ものっそいキラキラしている。元の顔がいいだけに、素晴らしく輝いておられる。・・・一体どうしたの。私麻婆豆腐、って云っただけなんだけど??



さんも豆腐好きなんですか!」
「うん、好きだよ」
「っ」
「え、何?」



久々知くん・・・どした?顔が真っ赤だよ?そんなに豆腐が好きなのか?豆腐が好き過ぎて興奮したのか?豆腐好きに会えて感動したのか?でも豆腐嫌いな人ってあんまりいないんじゃないかな?やっぱり夕飯に豆腐料理が出て嬉しいとかそういう感じ?けどそんなに?!って感じの反応なんですけど?



「あー、今のは結構な破壊力だなぁ」
「え、尾浜くん、破壊力って何の事?」
「いや、こっちの話です」



こっちの話ってどっちの話だよー。気にしないで下さい、って尾浜くんが笑うので釈然としないものを感じながらも作業を続けた。



「兵助、大丈夫?」
「あ、ああ・・・今一瞬真っ白になった・・・頭ん中豆腐になったかと思った」
「それいつもじゃ・・・いや、俺も正面切ってあんな事云われたら・・・やばっ」



・・・そこ、なんの話をしているんだ!何友情を深め合っているのだあああ。仕事しろ!
ともかく、なんとか大量の野菜を切り終わると、タイミングを見計らったかのようにこれまた5年生が飛び込んで来た。
えーと、今度は誰だっけ。尾浜くんが「竹谷八左ヱ門ですよ」と耳打ちしてくれる。あ、そだった。随分慌てているようだけど、どうしたのかな。



「どうした八左ヱ門・・・また何か逃げ出したのか」
「ああ、きみこがいなくなったんだ!」
「「きみこが?!」」
「きみこって誰?逃げ出したって何?」



至極当然の疑問を漏らすと、竹谷くんは私の存在に気づいたらしい。それまでは慌てていたこともあって見えてなかったみたい。さんがなんで此処に?!」と驚いていたけど・・・だからさ、どう見ても手伝いしてる以外ないでしょ。君達忍者のたまごなんだからそれくらい察して。



「で、きみこって?探してるんだったら協力するけど」
「え、いや、さんはいいですよ」
「どうして?皆で探した方が早いでしょ?」
「でも、さん、爬虫類苦手じゃないですか?」
「爬虫類?」



なんでこのタイミングでその質問なの?ま、全然苦手じゃないんだけどね。だって私はリドルと同居する身ですからね。ナギニちゃんいるし。
蛇もトカゲも亀もワニも触れるよー。・・・まさか、そのきみこってその中に含まれる何かですか。



さん、きみこって云うのは青大将のことなんです」
「蛇の?」
「そうです」
「私、蛇大丈夫」
「マジで?!」
「マジで」



まー、普通の女子は苦手だろうけどねー。私は残念ながら普通の女子と違うのです。
てゆか蛇ならアクシオかサーペンソーティアで来ないかな。お試しでやってみましょう。



「何をするんですか?」
「まぁ、見ててー。失敗したらゴメン」



勝手口から外に出て、試しにアクシオで呼んでみる。・・・あれ、反応無しかな。アクシオで生き物呼ぶ時って成功率五分五分なんだよね。どういう基準なのかよくわかんないんだけど。



「何も起きませんね」
「うーん、失敗かな」
「ん?なんか聞こえないか?」
「・・・ホントだ」
「え?あー・・・」



遠くの方で悲鳴が聞こえた。その後にもう一つ、また一つと悲鳴が増えて行き、それが徐々に近づいてくる。これはあれでしょ。成功っぽいよ。とりあえず、悲鳴を上げた人々よ申し訳ない。



「これ、来るっぽい」
「来るって?」
「竹谷くん!キャッチの準備!」
「へ?」
「あっ、あれ!何か飛んで来るぞ!」
「えっ?!うわあああ!!」
「八左ヱ門!大丈夫か?!」



べちっ!といい音を立てて勢いよく竹谷くんの顔面に緑色の何かが当たり、その衝撃で彼は背中から地面に倒れた。
あーあ、だから準備って云ったのに・・・



「ぎゃああああ!た、たす、助けてくれえええ!」
「うわあ、これはなんて云うか」
「御愁傷様」
「2人とも見てないで助けてあげなよ」



竹谷くんてなんか可哀相な扱いだな・・・蛇ぶつけておいてなんだけど。
でもなんで竹谷くんがきみこちゃんを探していたのかな。確か蛇キャラは他に居た気がしたんだけど・・・
ところで、この蛇ちゃんはきみこちゃんで合ってるよね?