なんでこんな話になったんだろうか。
小平太くん、中在家くん、食満くん、善法寺くんが加わり(善法寺くんだけ4年生のテーブルに座らせられてた・・・確かに一番最後に来たけどなんか皆の彼に対する扱いが酷い気がするのは気のせいかなぁ)、話題は私のことになる。
まぁそれは別にいいんだけどね、なんでその質問した?っていう話題になってしまった。発端は小平太くんだ。



さんて結婚してるのか?」
「は?いや、してないよ」



正直小平太くんからこういう質問が来るとは意外だった。ま、皆元服してお嫁さん貰ってもいい歳だろうし・・・気になるのかな。私の住んでる世界では私くらいの歳で結婚している方が珍しいと話すと皆びっくりしていた。そーだよねぇ、こっちじゃ嫁き遅れって云われても仕方ない歳だもんね。
こうなると自然と恋人はいるのか、とか想い人はいるのか、とか好みの男性のタイプはっていう話になり、なんとも居たたまれない空気になってしまった。いや、なんていうか、皆の視線が痛い。

え、何?食堂中が耳をそばだてているようなこの雰囲気は。そんなに皆気になる話題だったの。なんでこういう時にくのたまがおらんのだ!朝は何人か居たのに!くのたまが居たら味方になってもらえそうだったのに!おばちゃんはなんか微笑ましそうにニコニコしてるし!あああ、恥ずかし!



「えーと、好きな人は居ないけど」
「じゃあどんなやつが好きなんだ?」
「・・・なんか恥ずかしいから内緒」
「ええー!教えてほしい!」
「内緒ったら内緒ー!」
「うー、じゃあ、一つだけ!何か!」



ええー、一つだけ何かって・・・何だ。うっ、皆の期待に満ちた視線が・・・!こういう場合ってどういう返答が求められているのだろうか。あれかな、一般的に女の子がどういう男の子が好きなのかってことかな。そしたらあれだよな。うん、あれだ。



「えっと・・・何事にも誠実な人?」
「何事にも」
「誠実な人?」



我ながらいい返答だったんじゃないかな!誠実な男の人が嫌いな女の子ってきっといないと思うし!いや、これは男女関係なくだよね!男だろうが女だろうが誠実な人って尊敬するよね!おおお、うまい!えらい私!グッジョブ!しかしもっと具体的に!と数人に詰め寄られた。ええー。



「その何事にもって何だ?!」
「ええ?!えっと、そりゃあ人にも物事にもってことで」
「人にもってのはわかるが、物事っていうのは例えば」
「ええー?!そ、そうだな、例えば・・・物を大事にするとか、授業や宿題は真面目にやるとか、苦手をなくそうと努力するとか?」



云い切った瞬間、何人もの生徒が“ずがーーーーん!”とまるで雷に打たれたかのように固まった。
え、何。私何か変なことを云った?「物を大事に・・・」「授業を真面目に・・・」「苦手を克服・・・」とか皆ぶつぶつ呟いているけど・・・何事。そんなに思い当たる節でもあったのか。



さん!」
「は、はいっ!」
「私頑張りますから、見ててください!」
「は、はぁ?」



異様な空気の中、滝夜叉丸くんが一番乗りで復活し、私の両手をぎゅうと握って何やらよくわからない台詞を吐いて「おりゃあああああ」と何故か叫びながら食堂を飛び出して行った。・・・いや、マジで何。しかしその滝夜叉丸くんの行動が口火を切った。他の生徒(もはや名前も顔もわからない子まで)も彼と同様の行動を取って次々に去って行った。



「・・・・・・なんなの」



皆真剣過ぎて怖かった・・・
食堂内にはあまりな出来事でちょっと放心状態な私と、小松田くんとおばちゃんだけが残った。
残った小松田くんまでも「僕も頑張ります!」と意気込んでいたけど、皆そんなにまでして女の子にモテたいのかとなんだか切なくなった。ま、誠実な人間を目指すのはいいことだと思うけどね。私も誠実な人間でありたいと思ってますからね。
先生達から「くんのおかげで授業の出席率が上がった!」と感謝されるのはもうちょっと先の話です。・・・今までどんだけ低かったのかって話なんですが。