庵に戻ると、学園長が何故かいじけていた。・・・なんで。
いや、そりゃ黙って食堂に行っちゃったのは悪いけどあれは不可抗力なんですけど。
いいんじゃどうせわしなんかわしなんか、と畳にのの字を書く学園長の背中には深い哀愁が漂っている。
・・・はぁ、しょうがないなぁ。ちょっと待っててくださいね、とテントからクッキーの詰まった缶を持ってきて「差し上げます」と云うと学園長はころっと態度を変えて嬉々として受け取った。
現金だな・・・ま、ともかく機嫌が直ってよかった。



「そうじゃ、後で小松田くんが来るから学園内を案内してもらってくれ」
「小松田くん?」



て、あの事務員のトラブルメーカー、通称へっぽこ事務員の困った小松田くんですか。
というわけで、小松田くんに学園内を案内してもらうことになりました。・・・仕事はいいんだろうか。



さんは異界から来たって本当ですか〜?」
「うん、本当だよ〜」



小松田くんと話しているとこっちまで語尾が伸びて来るんですけど。聞けば彼は16歳とのことだったが・・・6年生の方がよっぽど落ち着いてるなぁ。やっぱり忍者のたまごは特別なのかなぁ。ま、本人の性格が多分に関係しているだろうけど。



「異界ってどんなところなんですか〜?」
「うーん、そうだなぁ。私が住んでるところは此処よりも文明が進んでいて、経済的にも豊かなところだよ」
「ふうん、そうなんですかぁ。そういえばさんは魔法が使えるとか」
「うん」
さんの世界では当たり前なんですかぁ?」
「使える人もいるし、使えない人もいるよ」



へえ〜、と小松田くんは目を輝かせている。どんな想像をしてるのかなぁ。なんか可愛い。
あ、と小松田くんが声を上げた。



「1年は組が実技の授業をしてるみたいです〜」
「え、あー、ホントだ」



ちっさい子がわらわらといる中に昨日見たふわふわの髪の頭を見つけて頷く。
私に関する変な話を流した根源、乱きりしんがその集団の中に居た。
云いたい事はいろいろとあったけど授業の邪魔をしたら悪いと思って迂回しようとすると、向こうがこちらに気づいて「あー!」と声をあげた。



さんだー!」
「え!あの話の?!」
「どれどれ?!」
「こらお前達授業中だぞ!」



山田先生の怒声もなんのその、1年は組のよい子達(?)はきゃーきゃー云いながら近寄って来た。
いや、君達授業中でしょ・・・すみません山田先生、邪魔しないようにと思ったんですけど遅かったみたいです。



「わー、ホントに美人さんだー」
「え?」
「美人さんだー」
「え、ええ?」



あらやだこの子達ったら、そんなお世辞云っても何も出ないんだからね!しかしなんとも可愛いなあ。わらわらわら、とちっさい男の子に囲まれて思わずふにゃんとなってしまう。あー、もう、皆の頭をぐりぐり撫で回したいいいい。



「皆いい子だから授業戻ろうね〜」
「ええ〜、さんとお話したいです!」
「休み時間にね」
「ええー!」



ぶーぶー、と文句を云う様も可愛くて終始ニコニコしてしまう。小平太くんも可愛いと思ったけど、やっぱりこの子達には勝てないわぁ。なんてゆーかもうなけなしの母性本能がこれでもかとくすぐられる感覚ってゆーの?はぁ、此処にマイナスイオンが発生している・・・



「お前達、くんの云う通りだ!話は休憩時間にしろ」
「ええー」
「そうださん!授業一緒に受けようよ!」
「え?!」



なんでそんな展開になるんですか。私は忍者になるつもりないんですけど?!てか絶対迷惑でしょそれ!
しかしよい子の皆は既にその気満々である。困ったように山田先生を見上げると、「わがままを云うな!」と一喝してくれた。またも大ブーイングが起こったが、また今度ねと云うと皆渋々頷いた。
ううー、可愛いよぉ。我慢ならなくて一番手前に居た子の頭を撫でてしまった。



「あー!ずるい団蔵!」
さん、僕も!」
「私も私も!」



あららー、なんか知らない間に懐かれてしまっているなぁコレは。昔っからなんでか子どもに好かれる体質だったけど・・・
ま、可愛いからいっか。一人一人撫でてあげると皆満足して授業へと戻って行った。一応後で学園長に授業に参加してもいいか聞いてみよっと。



「山田先生、すみませんでした」
「いやいや、こちらこそ生徒達が悪かったね。小松田くんと学園内を回っているのかい」
「はい、そうなんです」
「あー、気を付けてね」



いろいろと、と云って山田先生はちろりと小松田くんを見た。見られた小松田くんはきょとんと首を傾げているけど・・・
山田先生、それって小松田くんが何かやらかすかもってことですか。こわー。