現れたのはサーナイトのお兄さんでした。

「ねえ」
「なんですかマスター」
「・・・いや、普通に名前でいいんだけど」
「はい、なんですか
「・・・・・・」

にこにこと柔和な真っ白な微笑みを向けられて、なんだか自分がとっても薄汚れているように思ってしまう。
ああ、ポケモンてなんて純粋なんだろう。サーナイトだから、っていうのもあるんだろうけど。

私、と、一緒に来てくれることになったサーナイトは、シーさんを残しエイチ湖を後にしていた。
サーナイトは“みらいよち”で見た、とわざわざ私を迎えに来てくれたらしく、私の事を最初からマスターと呼んだ。こっぱずかしいことこの上ない。

「“みらいよち”でどんなことが見えたのか聞いていい?」
「オレが見たのは、とエイチ湖で出逢うことと、とオレと、あと数名かで各地を回っている様子でした」
「エイチ湖での件は終わったこととして、後のは他にも仲間ができるってこと?」
「おそらくは」
「それが誰、とか、どういうところを回ってるとかは、わかった?」
「いえ、そこまでは」

どういうタイミングで仲間と出逢うのかも、何処に向かっているのかも、わからないらしい。ただ、今後また見ることはあると思う、と彼は云った。

「“みらいよち”してみて、って云ったらできるもんなの?」
「ええ、ある程度は。ただし、直後に起こることは見えやすいですが、先の事は曖昧だったり、断片的なことしかわかりません」
「ふうん」

とりあえずちょっとやってみてもらうことにした。何か見えたらめっけもんだし、方針が定まるかもしれないし。
瞳がぼうっと光ったと思ったら、「あ」とサーナイトが声を上げた。何か見えたらしい。何ナニ?!と身を乗り出すと、サーナイトは一言。

、足元に気を付けてください」
「え?はわっ!」

直後、積もった雪に足を取られ、ずっこけそうになった。雪まみれにならずに済んだのは、サーナイトが腕を掴んで引きよせてくれたからだ。

「大丈夫ですか?」
「う、うん。ありがとう」

心臓がドキドキしてる。サーナイトが助けてくれなかったら、頭から突っ込んでいたところだ。雪が積もってるから痛くはないだろうけど、代わりに冷たい思いをしていただろう。
思わずサーナイトにしがみついてしまっていたことにハッと気づいて慌てて離れようとしたけれど、手だけは離してくれなかった。

「サーナイト?」
「また転んだら危ないですから」

にっこりと柔らかな笑みを返されて、顔に熱が上った。おおう、なんていうか、こういうタイプは弱いぞ。
今まで腹黒いのばっかり相手にしてきたから、こういうのに免疫がない。うっかりときめいてしまって、さっきとは違う意味でドキドキが止まらなかった。

「ていうか、“みらいよち”で見たのって・・・」
「はい、が転びそうになるところです」
「・・・それ以外は」
「見えませんでした」

がくり。なんていうか、がっくり。はぁ・・・。そううまくはいかないかぁ。ホント、これからどうしようかな〜。

「とりあえず、キッサキ神殿にでも行ってみますか?」
「え?」
「此処から一番近い場所で、希少な種が居るという噂があるのはキッサキ神殿ですから」
「そこに、私を待ってるかもしれないってポケモンがいるの?」
「噂ですから、定かではないですが」

噂だろうがなんだろうが、少しでも可能性があるなら行ってみるべきなんじゃないだろうか。
こうなったら近場から潰していくのがベストだろう。・・・でも、普通そういうポケモンが居る場所って、レベル高いポケモンがうようよしてるんじゃないかな。

「大丈夫ですよ、オレたちポケモンがに危害を加えることはありませんから」
「・・・それ、シーさんも云ってたけど、やっぱり何か違いがわかるの?」
「ええ。もちろんわかりますよ・・・・・・ユクシーには、名前を付けたんですね」
「はい?」
「よかったら、オレにも付けてもらえませんか」
「え、名前?」

はい、とサーナイトは期待に満ちた視線を私に向けた。
ええー、私苦手なんだけど。まんましか思い浮かばないんだけど。まぁサーナイトは文句つけたりしないだろうけど。
きらきらと輝く視線を送られて、嫌とは云えず、私はない頭を絞った。・・・けど、結局一つしか思い浮かばなかった・・・。

「ナイト」
「はい」

にこにこ。ずきずき。
嬉しそうなサーナイト・・・改めナイトを見ると、なんかホント申し訳ないっていうか、もっと気のきいた名前を付けてあげられればよかったんだけど、と落ち込んだ。
ベストは尽くしたのに良心がうずくのはなんでだろう。ああ、私にもっとネーミングセンスをください。

キッサキ神殿は、なんていうかだいぶ雰囲気のある場所だった。
神殿というだけあって、神聖な場の空気というか、張り詰めた感じというか、そういうものが漂っていた。
が、何やら獣の声が中から聞こえてくる。・・・普通に、怖い。

「さあ、行きましょうか。大丈夫、何があってもオレがを守りますから」
「ナイト・・・」

どうしよう、きゅんてした。この人・・・自分で名付けておいてなんだけど、っていうかそういう意味でもともとサーナイトって名前なのかもしれないけど、本当にナイト(騎士)だ。
うっかり惚れないように、気をつけないと・・・シャレでは、ないですよ。