たまり場。
引っ越してきたのは小僧ども・・・もとい、青銅の彼らだった。
約1週間ぶりに再会した沙織お嬢様は今日も今日とて大変麗しく、私が出した紅茶を優雅に飲みながら話を切り出した。
「彼らはさんと同じく氷帝学園の生徒なんですの」
「・・・え」
「今までは私の屋敷で暮らしていたのですが、いろいろと問題が発生しまして・・・学園に近い物件を探していたのです」
「は、はぁ」
まさかまさかの後輩ってオチ?!全然知らなかったけど!と思ったのも無理はない。この春入ってきたばかりらしかった。なんだ。
それにしたって紫龍と氷河なんか目立ちそうなもんだけどなぁ。後で長太郎に聞いてみよう。
「何かとご迷惑をかけるかと思いますが、何かございましたらすぐに私にご連絡くださいね」
「わかりました。・・・それで、一つ聞きたいことがあるんですけど」
「なんでしょう」
「彼らは4人で一部屋使うみたいですけど、もう一つの部屋は誰が?」
そう、引っ越してきたのは星矢、瞬、紫龍、氷河の4人。(一輝がいないのはなんというか納得である)
その4人で一つの部屋を使うようだし、とすればもう一つの部屋は一体誰が使うのだろうか。
まさか、黄金の人たちではないよね??ちらりと沙織さんの後ろに控えているサガを見ると、その視線に気づいた彼は少し苦笑いをした。
この表情からするに、彼らではないような気がする。
「詳細は引っ越しの日取りが決まりましたらお伝え致しますが、知人が部屋を探しておりまして」
「知人・・・ですか」
「ええ、外国の方なものですから勝手が分からず私に依頼がきまして。さんのところでしたら安心かと思いましたの」
うふふ、とかわいらしく微笑む彼女は一体何処まで私の事情というものを知っているのだろうか。
ていうか知人で外国の方って、部下と云わないということは・・・なんかわかったような気がするけどわかりたくない気がするっていうかどっちのって感じだけれども。
とりあえず今の段階では沙織さんも誰が引っ越してくるかまで把握していないんだろう。でも、私のところなら大丈夫と感じた。
それでも青銅の4人も一緒に送り込んだことは保険なんじゃないだろうか。考え過ぎかな・・・
「・・・あの」
「はい」
「沙織さんは私のこと何処までご存知なんですか?」
なんだかもやもやするし、相手が相手だし、思い切って率直に聞いてみることにした。
沙織さんは数秒の無言の後、小さく微笑んだ。全て知っています、とでも云っているようだった。
「そうですわね、さんが可愛らしい魔女で、とても優しい方だということは存じておりますわ」
「・・・・・・」
なんだろう・・・は、恥ずかしい。ていうか、なんですかその答えは!
納得いかないとばかりに見返せば、沙織さんはニコニコと微笑んだ。
「あら、だってこの度の事件を示談にしてくださいましたし、彼らの非をあっさり許してくださいましたし、突然の契約にも快く応じてくださいましたし」
「それは」
「それに、可愛らしいのは見たままですわ。ねぇサガ」
「はい」
「ちょ、ええっ!」
なぜそこで即答するかサガぁぁぁ!そしてその笑顔やめてぇぇ。かっこよすぎるからぁぁぁ。
本気で顔から火が出そうになりながら、二の句を告げられなくなった私を2人は優しげな眼差しで見ている。
だから、恥ずかしいから止めてほしいんですけど。
「さん、あの4人をお願い致しますね。」
「・・・はい」
「私もまた貴女にお会いしに来てもいいでしょうか」
「もちろんです」
「ありがとうございます」
なんだか居たたまれない、と居心地の悪さを感じていたところにバコッと・・・何か聞いてはいけないような音が響き渡った。
一瞬、部屋の空気が凍り付いた。
「・・・何今の音」
「・・・星矢」
「お、おれじゃねぇって沙織さん!」
「星矢、嘘はいけないよ」
顔を顰めた私、引きつらせた沙織さん、焦ったような星矢くんの声、たしなめる瞬くん。
・・・何をやらかしたんだ天馬座!
見たくないけど見ない訳にはいかないと音のした方を見れば、リビングのドアがあり得ない角度で曲がっていた。
何をどうしたらそんなになるんですか、ん??
「このドアちょっと脆いんじゃないかと思う!」
「力の加減を考えなさいと何度も云いましたのに・・・さん、本当に申し訳ございません」
「・・・あの、もしかしてさっき云ってたいろいろな問題ってこういうことですか?」
「あら、うふふ」
ばれちゃいましたか、と恥じらうように笑う沙織さんはとっても可愛い。可愛いけれど・・・それって厄介払いってことじゃ・・・
もちろんそれだけじゃないんだろうけどさ、屋敷を壊され続け堪忍袋の緒が切れたんじゃないだろうか。
その点、うちならば私やリーマスが直してあげられるし・・・
「はぁ・・・まぁ家の中だけならなんとかするけど」
「さん、もちろんただでとは云いません。修理代はお支払い致します」
「え、別にいいですよこれくらい」
「いいえ、そういうわけには参りません。さんの優しさは大変嬉しいですが、それでは彼らが反省致しませんから」
ですから一カ所ごとに彼らのお小遣いから差し引いてお支払い致しますわね、と微笑んだ彼女の言葉に驚いたのは私ではなく当事者の4人だった。
「沙織さん!?そんなの聞いてないぜ!」
「今云いましたもの」
「ち、ちなみにどれくらい引かれるんですか・・・?」
「そうですわね、それはさん次第ですが・・・」
「え、私?」
なんだかとっても重要な決定権を頂いてしまいましたが4人の視線が痛いです。
まさかそんな大金引かないよね、と云わんばかりの彼らの視線にたじろぐ。
中3と高1ってことは、云ってもそんなにお小遣いなんてないよね。何に使っているのか不明だけど何千円もとったらさすがに可哀相だ。
かといって沙織さんからはあんまりお安くなさいませんよう、と云わんばかりの視線を送られ板挟み状態だ。
だったら沙織さんが決めればいいのに!
「え、えと、じゃあ3・・」
「さん、遠慮なさらずよいのですよ」
「じゃ、じゃあ500円かな」
「だそうですわ。普通業者に頼めば何万とするところ500円だなんてさんはなんと寛大なんでしょうね」
おほほ、と口に手を添えて微笑む沙織さんは・・・なんというか、ちょっと黒い。
幾らもらってるか知らないけど500円てそれなりに痛いんじゃないかなぁ。星矢くんなんてあの様子じゃ常習犯ぽいしなぁ。
がくりと肩を落とす4人を可哀相に思うけれど、まぁ壊さなきゃいいだけの話だ。頑張れ青少年。
「とりあえずコレ直しちゃうね」
「おお!」
ひょいっと杖一振りで直してみれば、みんな興味津々とばかりに目を輝かせた。
あれ、魔法とか見るの初めてなのかな。
「すげー!さんてホントに魔女なんだ」
「そうだよ」
「あの、話に聞いていただけだったのでびっくりしました」
「そっか。」
しかし考えてみれば彼らの方がよほど吃驚人間である。
ちょいちょい、と元通りのドアをつつく彼らを微笑ましく思いながら、あんまり派手に壊してくれるなよと心中ごちた。