臨時教師承りました。



事の発端はマンションの一階に住むマルコ・ルイス氏からの突然の申し出だった。

「は?な、何故に私なんですか」
「頼めそうなのはだけなんだ」
「いや、他にも探せばきっと・・・」
「適任者がすぐそばにいるのに、探す必要なんてないでしょ?」

マルコは中学生サッカーの東京都選抜チームのコーチをやっている。そんな彼からのお願いとは、その選抜チームの勉強を見てやって欲しい、というものだった。
8月のチーム結成以降、定期的に練習を行っている選手たちは、サッカーに夢中になるあまり学校の成績が急落しているらしい。
いくら将来有望な選手たちとは云え今はまだ学生の身。本分は学業だと学校側から苦情が来てしまい、コーチたちは困っているとのことだった。
そこで白羽の矢が立ったのが私。監督も了承済み、早速次回の練習日から来て欲しいと頼まれてしまった。

、この間の全国模試?だっけ?いい成績だったんだろう」
「いや、なんでマルコが知ってるんですか」
「そういう噂は自然と入って来るものだよ」
「ええー」
「っていうのは半分冗談で。実は榊さんから聞いたんだ」
「榊・・・?」
「ジュニアユースの監督だよ。なんでも彼の従兄弟がの学校の先生らしいじゃないか」
「まさか・・・」

榊っていう先生はあの榊先生以外にいない。つまり、榊太郎(43)とトレセン委員会の榊さんは従兄弟同士ってことで・・・
エエー、そんなんアリですかー。ていうか何その情報網っていうか偶然っていうか、加えて私がマルコの大家だなんてホントどんだけすごい偶然なの。

「ね、頼むよ。彼らも同世代の女の子がいるってだけでやる気になると思うし」
「逆効果なんじゃないのかなぁ・・・」

心配いらないよ、というマルコに不安を抱きつつも、結局押しに押されて頷いてしまった。



ってバカでしょ」
「そんなことない、とは云えないけど」

マルコとの約束の話をすると、案の定リドルにお小言をいただきました。
は押しに弱すぎる、とか、また面倒引き受けて、とか、鴨がネギしょってくるようなもんだ、とか。
リドルさん、最後のはちょっと意味合いが違うような・・・ハイ、すみませんでした。リドルさんのおっしゃる通りです。

「・・・て、何読んでるの」
「え?お菓子づくりの本だよ。15日が侑士の誕生日だから、何作ろうかなって」
「こないだも作っていたじゃないか」
「あれは景吾にだよ」
「その前も」
「あれは宍戸に・・・ちなみにその前はがっくんだけど」

9、10ってやたら多いんだよなぁ。まぁ、お菓子作るの好きだしそれくらいしかしてあげられないし、苦ではないんだけどね。
あれ、リドルの機嫌が更に悪くなったような気がするのは気のせいかしらー。

、いつも云ってるけどね、男っていうのは簡単に勘違いを起こすような生き物なんだから」
「それは女子も変わらないんじゃ」
「男の方が単純だって君だって云ってるだろ」
「まぁ。でも友達にお菓子作ってあげるのがおかしいことだとは思わないけど」

特別扱いではないんだし。と云ったら、目が合っただけで気があると思うんだ、と切り返された。おいおい、どんだけよ。
大体そういうリドルさんこそ男でしょーに。

「だから分かることもあるんだよ」
「え、リドルも目が合っただけで気があるかもって思うの?」
「まぁほとんどが僕に気があったことは間違いないね」
「・・・だろうね」

それは勘違いでもなんでもなく真実なのでは・・・
でも今まで皆にあげてて、去年だってあげたのに侑士だけ今年はないってなったら後々めんどくさいんだよ。
侑士は特に・・・絶対めんどい。

「とにかく、マルコからの話もそうだけど、私がやりたくてやることなんだからやらせてよ」
「・・・しょうがない。どうせ、そっちの話もの“知っている”ヤツらなんだろう?」
「うん」
「別にやめろとは云ってないよ。ただ、気をつけてって云ってるの」
「大丈夫だよ、心配症だなぁ」

常々リドルは過保護だ。私の事に関するとキャラ崩壊甚だしい。嬉しくもあれば、心配し過ぎだとも思う。

「愛だと云って欲しいね」
「はいはい、ありがとーございます」

心がこもってないよ、と激笑顔向けられました。
いや、ホントすみません。ありがとうございます。身に余る光栄でございます!!