はぐれたら。
クリスマス直前。私はリドルとダイアゴン横町に来ております。初イギリス&魔法界ですよ。すごっ!大興奮中!
でもあんまりはしゃぎすぎると怪しいから我慢がまん。うー、でも、はしゃがずにはいられないでしょ。
なんていったって本物のダイアゴン横町なんだから!なんて結局心あらずにぽけっと街並みを見上げてたら、人とぶつかってしまった。
「あ、ごめんなさい!」
ドン!と盛大にぶつかってしまったため、相手の荷物が道に落ちてしまった。
紙袋に収まっていたのだろう小物が、複数散らばってしまっている。慌ててしゃがんでそれらに手を伸ばした。
「あ、待って!」
「え?」
拾おうとしただけなのに、触るなとばかりに手首を掴まれた。反射的にぱっと視線を上げると、ぶつかった相手は大変イケメンな男の子だった。あらー。
視線が交わったところで、一瞬間が空く。あれ、何これ見つめ合っちゃってる感じですけど。
「あの?」
「あ・・・コレ、悪戯グッズなんだ。無闇に触ると危ないよ」
「そうなんだ・・・」
これが!有名な!悪戯グッズ!一体何に使うんだろう・・・てモノが多数ですが。
それにしても、こんなキレイな顔して悪戯とかしちゃうんだぁ。人は見かけによらないっていうか、すました顔してやんちゃなのね。
ヘタに触れないので結局落ちた物は彼が全部自分で回収してしまった。なんていうか、申し訳ない。
「あの、本当にごめんなさい」
「ううん、僕もぼーっとしてたから」
「そうなの?」
「うん」
私だけじゃなかったんだ。ちょっとホッとした。でも、こんなイケメンとぶつかるなんて私ってばちょっとラッキーじゃない?
「って、あ!」
「え?何?どうしたの?」
リドルが居ない!ということに気づいてしまった。やばー、はぐれた?!
いきなり叫んだ私に吃驚した彼は目を見開いている。ううん、イケメンは何をしてもイケメンね。なんて思ってる場合ではなく。
「一緒に来てる人とはぐれちゃったみたい」
「え?大丈夫?探す?」
「ううん、はぐれたらその場を動いちゃダメって云われてる」
「そっか。まぁこの人の多さだし、下手に動かない方がいいかもしれないね」
万が一はぐれたら、って最初に云われてたんだ。でも、まさか子どもじゃあるまいしはぐれないよー。って笑った。けど結局はぐれた。
後で何云われるかわかんないなー。とりあえず、だから云ったでしょ?って呆れた顔されるな。
「じゃあ、僕も一緒に待とうかな」
「え?」
「実は僕も連れとはぐれたんだ」
「え?そうなの?」
うん、と無邪気に笑う彼は、思ったよりも若いのかもしれないと思った。外人さんの年齢は見た目じゃようわからん。
学生っぽいなぁとは思ったんだけどね。ていうか、此処で会う学生って、ホグワーツの生徒なんじゃないだろうか。
道の端っこに移動して、2人で肩を並べてお互いの連れを待つ。なんとも不思議な光景である。
「ね、ホグワーツの生徒さん?」
「そうだよ。君は?」
「私は卒業生だよ」
一応、と心の中で付け加える。リドルに埋め込まれた記憶の中には確かにホグワーツでの生活の記憶もあって、これは一体誰の体験なんだろうって思う。
この感覚は未だに慣れないけれど、深く考えちゃいけないことのように思えてリドルにも問いかけたことはない。
・・・っていうか、何その反応。
「ゴメン、僕と同じくらいか、年下だと思ってた」
「・・・いや、いいよ?むしろ嬉しいよ」
そういうことじゃないかなぁと若干の推測はしていた。今現在中学生として生活している立場としては、若く見られた方が安心というものである。
まぁ、私と同じで外人の年齢は判断しづらいのかもしれないけど。
「何年生?」
「5年・・・5年生です」
「あ、別に堅苦しくしなくていいよ」
「ありがとう。君は?」
「私は卒業したてだよ〜」
もしかしたら学校ですれ違ってたかもしれないね、と笑うと、じーっと見つめられて戸惑う。
「君みたいな可愛い子知らなかったなんて、もったいないことしたなぁ」
「へ?」
あれ?何コレ、もしかしたら口説かれてる?お世辞?にこにこと毒のない爽やかなスマイルでそんなことさらっと云っちゃう彼に、ちょっと吃驚。
さすが英国。日本とは違うわぁ。なんて変な感心をしてしまう。
「名前聞いてもいい?」
「あ、えと、・・・だけど」
「?それファーストネームだよね、ファミリーネームは?」
「」
「うーん、難しい発音だなぁ。、でいい?」
「いいけど・・・」
あれなんだこれペース乗せられてるなぁ。ていうか、彼の名前聞いてないし。
「僕はリーマス。リーマス・J・ルーピン」
「リー・・・?!」
「どうしたの?」
「いや、あの、有名な人、と・・・しゃべってるんだなぁって」
悪戯仕掛け人、というのは記憶の中にもある。
年代違くね?と思ったけど、この世界は私の知る世界と酷似しているだけで全く一緒ではないのだからそういうこともあるだろうと今では割り切っていた。
割り切っていたつもりだった。実際に目の前に現れると、吃驚するよ。リーマスは、そんなに有名ってほどでもないと思うんだけど、と苦笑している。
有名なのはシリウスとジェームズで僕はオマケさ、なんて云っているが・・・いや、リーマスにもファンは絶対いると思うよ。
「じゃあもしかして連れっていうのは」
「うん、シリウスたち」
「あー、じゃあ、私と一緒にいるのはあんまりよくないかも」
「え?どうして?」
きょとん、と目を開いたリーマスに理由を云うかどうか迷っていたら、その理由の方が先に到着してしまった。
「!」
「あ、リドル・・・」
「トム・リドル?」
リドルが少し慌てた様子で人垣を掻き分けてきた。
リドルの顔を見てほっとするも、隣のリーマスの反応にちょっとした不安がよぎる。
「よかった見つかって・・・て、ルーピンじゃないか」
「こんにちは、リドル先輩」
「なんでとルーピンが一緒にいるか聞きたいところだけど、今は止めておいた方がいいかもしれないね。」
キミが居るならブラックやポッターもいるんだろう、とリドルはめんどくさそうに眉を顰めた。
リーマスはなんだか興味深げに薄く笑っている。
「僕はじっくり聞きたいところですよ。貴方と彼女の関係とか」
「キミの興味を引くようなものは何もないよ」
「そうでしょうか。稀代の優等生でホグワーツ1ハンサムと云われていたリドル先輩が女性を連れているっていうだけでとても興味深いですけど」
にこにこ、とお互い笑みを浮かべてはいるものの、その場にはうすら寒い何かが漂っていた。
あれ、なんか背筋がぞくぞくするんですけど。防寒バッチリなんだけどなぁ。風邪引いたかなぁ。アハハ。
「・・・キミは、ブラックたちとつるむようになって変わったよね」
「おかげさまで」
「前は目立つのを極端に嫌っていたのにね。いや恐れていたのかな。まるで、何がなんでも隠し通したい何かがあるようだったよね」
「!」
え、リドルってもしかしてリーマスが人狼っていうこと知ってるのかな。
リーマスは途端に顔色を悪くしてしまった。いや、元々あまりよくなかったように思う。
そういえば、満月ってもうすぐじゃ・・・
「おやルーピン、顔色が悪いが大丈夫かい?」
「・・・・・・。」
「ねえ、本当に顔色悪いよ?何処かで休んだ方がいいんじゃ・・・」
「っ!」
リドルがすんごく意地悪に笑っている。意地悪なのはいつもだけど、私にはこんな笑い方したことない。
初めて見るそれに吃驚したけど、それよりもどんどん顔色をなくしていくリーマスが心配になって、傍にある手を取った。
びくりと彼は震えたけれど、振り解かれはしなかった。ただ、困惑気なリーマスの視線が私を捉えた。
「・・・君は・・・?」
「」
リドルの厳しい声が、私を呼んだ。あまりの硬い声に吃驚して、リドルを見る。
彼は責めるような、憂うような、複雑な表情をして私を見つめていた。
「行こう。ルーピンは大丈夫だ、じきにブラックたちも来る」
「でも・・・」
「リドル先輩の云う通りだ。僕は大丈夫」
ふわりと微笑むリーマスから、渋々手を離した。今にもぶっ倒れそうだったけど、リドルは怖いしリーマスも大丈夫だって云うし、そうする以外なかった。
ぱっとリドルが私の手を握って、それじゃあと踵を返す。
「ああ、そうだ。ルーピン、よい年を」
「・・・さようなら、リドル先輩。――も」
「うん・・・またね」
リドルってば、年明けに満月が来ること知っててああいう風に云ったんだ。なんていうか、極悪だなぁ。リーマス可哀想。
またね、って自然とポロリと云ってしまったけど、“また”があるといいんだけどなぁ。ハァ、と大きな溜息をこぼしたら手を引いていたリドルが不機嫌そうに振り返った。
「何その溜息」
「いや、リーマス可哀想だなって思って」
「何それ、僕が悪いの?」
「知ってても黙っててあげたらいいのに」
「先に喧嘩売ってきたのはアイツだよ」
いや、別に喧嘩は売ってないと思うけど・・・
「大体、僕は一生懸命キミのこと探してたっていうのに、キミはルーピンと楽しげに談笑しちゃってさ。酷いと思わないか?」
「う・・・そ、そりゃあはぐれた私が悪かったと思うけど・・・」
「僕ばっかり悪者扱いだなんて、悲しいね」
「ゴメン・・・」
そもそも私がリーマスにぶつからなきゃこんなことにはならなかったんだ。悪いことしたなぁ。
軽くヘコんでたら、リドルが大きな溜息をついた。
「ルーピンに手紙でも出してあげたら」
「え!」
「アイツ、の事気に入ったみたいだから」
「いいの?」
別に、僕が止めるいわれはないよ、とリドルは云った。もしかしたら、リドルも少しいじめ過ぎたと思ったのかもしれない。
男の子に手紙書くなんて初めてだし、何を書こうかなぁ〜なんて変わり身も早く機嫌をよくした私を、リドルはまた複雑そうな顔で見つめていた。