クロロが戻って来た時にはうっすら涙が浮かびました。ちゃんと戻って来てくれたんだという安堵感と、やっぱり逃がしてはくれないのねという絶望感とで。何処に行ってたんだということは怖くて聞けませんでした。はい。

行くぞ、とカフェを出て連れて来られた先はちょっと高級そうなマンションでした。ハテナ。
クロロは何の躊躇いもなく中に入って行く。も、もしやこのマンションの何処かの部屋に押し入るのかしら?!そういうことなのかしら?!とヒヤヒヤしましたがクロロはしっかり鍵を使っていて押し入るって感じでもない。しかも入った部屋はがらんとしていて何もなかった。ハテナ。



「あの、此処は」
「今日からお前の部屋だ」
「ええっ?!」



何がどうなってそうなったの?!え、何?!何事?!と混乱していると、クロロは丁寧に説明してくれた。
曰く、私が異世界から来たばかりで行く宛もないということなので部屋を用意してくれたらしい(さっき席を外したのはこの為だったらしいギャー)。なおかつご丁寧に自分も一緒に住んでこの世界についてあれやこれやをレクチャーしてくれるらしい。家賃その他諸経費はクロロ持ち、生活に必要となるものも用意してくれるってさぁ。わーお、まさに何から何まで至れり尽くせりのサービスだわ!ってちょっとまてーい!



「いやいやいや、そこまでしてもらうわけには」



っていうかそんなんいらないから解放して!というのが本音なんですがクロロはそんなんお構い無しですよ。



「遠慮するな。命の恩人に対して出来る限りのお礼がしたいだけなんだ」



なんてもっともらしいこと云ってごり押しですよ!いやでもね、自分で云うのもなんですか年頃の娘がそんな出会ったばかりの男と一つ屋根の下なんて普通無理ですよ?
相手が誰であろうがそこはがっつり反対させて頂きますよ?いややっぱり誰であろうがっていうのは訂正する。もしも相手がクラピカさんだったりはたまた良識あるハンターの方々だったなら違っていたかもしれません。じゃあお言葉に甘えて、なんてことになっていたかもしれません。しかし相手があなただという時点で全てノーサンキューです!!
え?安心しろ?命の恩人に手は出さない?・・・・・・そんなん信じられるかあああああああ!!



「そんなに心配なら部屋に鍵つけるから」
「そういう問題じゃないです!」
「・・・、よく聞け」
「な、なんです?」



さすがに息巻いて反論してしまったけれど致し方ない状況でしょ?でも改まってクロロに見据えられるとびくっとなってしまうのも致し方ないでしょ?やっぱり怖いんだもん!



「この世界はあまり安全とは云いがたい。特に、のような特殊な力を持つ人間は」
「それは、一体」
「何もわからないでうろつくのは危険だ、ということだ」



・・・それ、あなたが云いますか。でも確かに彼の云う事も一理ある。念ではないけれど、魔法という特殊な力を持っていると狙われやすいのだろう。
現に私はクロロに狙われているようなものなんですけどね!!やっぱりクロロに云われたくない!!



「俺みたいに大怪我して死にたくないだろ?」
「・・・それって、クロロも何か特殊な力を持ってるってこと?」
「まぁ、そうなるな」



バレたか、なんて暢気に笑ってますけど。
え?安心しろ?命の恩人に手は出さない?ってそれさっきも聞いたわあああああ!
それ本当に本当ですか!絶対手を出したりしませんか!いろんな意味で手出さないって誓いますか!もし誓ってくれるならこんなに頼もしいボディーガードはいませんけど!
しかしいつ反故にするかわかったもんじゃないんですよね!本当にね!そこんとこどうなんですか!かといって一度云い出した事を撤回することなんてないんだろうけど!



「よし、納得してくれたところで買い出し行くか」
「は?いつ私が納得を」
「しただろ?」
「・・・・・・」



納得なんていくはずない。けれどクロロは絶対引いてくれない。どうにもこうにもならない。なら諦めるしかない。
そうね、出会ったが最後だったのよね。最早自分の不運を呪うしかないわね。いや、私悪運はあるっていうか、一見不運と見せかけて実はそこそこ運がいいっていうタイプだからきっと大丈夫ね。そう信じる事にしよう。信じる事が大事よ。

こうして奇妙な同居生活がスタートすることになりました。
・・・ハンター界、過酷過ぎます。