からかう



「あ、ティエりん」
「・・・その呼び方はやめてくれませんか」
「ええ?!なんで?!可愛いのに!」
「嬉しくありません」
「うん、だろうね」

しれっと云うとティエリアは不愉快そうに顔を歪めた。
ああ、本当に、この人はからかうと面白い。
同じ部屋に居た人たちは私たちのやりとりに吃驚しているようだ。
そりゃあ、ティエリアをからかおうなんて物好きは私くらいのものだろうけど、いちいち反応が返ってくるから楽しいんだよ?

「ほらほら、そんなに怖い顔してると眉間の皺がとれなくなっちゃうよ」
「あなたが変なことを云わなければ僕もこんな顔をせずに済むのですが」
「えー、ちょっとした冗談なんだからさ、軽く受け流してくれればいいのに」

真面目だなぁ、と云うとますます眉間の皺を深くしたティエリア。握った拳が微かに震えている。
これくらいにしておかないと本当に怒らせちゃうかな、と心配になったけど、私の対処法をだんだん覚えてきたティエリアは大きく息を吐き出して自ら怒りを抑えた。
あらあら、成長したのねティエりん!

「それで、なんの用ですか」
「え?」
「え、じゃありません。声をかけてきたんですから、用があったんでしょう」
「ううん、別に」

私の返答に、またしてもティエリアがわなわなと震え出した。
いや、別に今のはからかったわけじゃないんだよ?!

「ちょっとした挨拶みたいなもんじゃん」
「人の名を呼ぶのが挨拶だと云うんですか」
「そうだよ。声をかければ、私は此処に居ますよってわかるでしょ」
「声をかけられなくてもあなたが入ってきたことには気づいています」
「そうなの?でもさ、気づいているかこっちはわからないし」
「別に用がないのなら気づいていてもいなくてもいいでしょう」

心底理解不能とばかりな彼に、ハァと溜息をつく。
ティエリアはそんな私の態度にむっと顔を顰めた。

「溜息をつきたいのは僕の方なのですが」
「ティエリア」
「な、なんです」

改まった私の様子に少し虚をつかれたのかティエリアは怯んだ。いや、そんな怖い顔をしたつもりはないんだけど。
いいかいティエリア、よく聞きたまえよ。

「人というのはね、知り合いを見かければ用がなくても呼びかけるし、一言二言お話するもんなの。それがコミュニケーションというものなの」
「コミュニケ―ション?」
「そう。なんということのないコミュニケーションこそ、大切にするべきなの」
「そんなものは・・・」
「よし!ティエリア、今からタメ語で」
「は?」

まずはその丁寧口調を改めよう。あと私のことはと名前で呼ぶように。そしたら少しは距離が縮まるはずだ!
と云うとティエリアは狼狽えた。こんなこと正面切って云われたことがないんだろうなー。あー、面白い。

「別に距離を縮めたいとは」
「思わないって?!ひどいティエりん!」
「だからその呼び方はやめろと云っただろう!」
「あ、敬語取れてる」
「あ・・・」

思わず、って感じに口を抑えるティエリア。
・・・なんだその仕草は。
可愛いじゃないか!

「ティエリアかわいいー!」
「だから嬉しくないと云っている!抱きつくな!」

そのあまりの可愛さに思い余って抱きつくとティエリアは赤くなった。いやー、可愛いかわいい。どうしてそんなに可愛いの。そうやって可愛い反応するものだからついついかまいたくなってしまうのではないか。
ニコニコにまにまする私を見て、ティエリアはキッと目尻をつり上げたけれど、それは怒っているんじゃなくて照れだとわかったのでそのままハグ続行。

「スキンシップも大事なの!」
「何にとって大事なのか全くもって理解不能だ!」

私にとって大事なんだよ、と云い張ると、二の句を告げられなくなったのかティエリアは幾度か口をぱくぱくと動かした後、ガクリと脱力した。
全くあなたは、と呆れたように笑うティエリアは格好良過ぎてちょっときゅんとしてしまった。うーん、可愛いのにカッコいいって最強だ。美人て得ね!ていうか、やっと笑った。
まぁ散々怒らせるようなことやってたのは私だけど。

「あなたじゃなくて、でしょティエリア」
「・・・そうだったな。
「何、ティエリア」
「呼んでみただけだ」
「そっかそっか」

うん、とりあえず、美人なツンデレ万歳。
一つだけ明言しておくけど、私は決して変態ではないので、そこだけは誤解しないように!ね!