嫉妬の相手



はマサキといつも一緒ですね」
「え・・・そうですか?」

いつものお茶の時間、いきなりそんな風に云われてはてと思う。
私からしてみたらマサキと一緒の時間とシュウさんと一緒の時間はほぼ同じくらいなのだけど。
なぜなら彼は毎日この時間にお茶しにやってくるのだから。
ということはもしや、シュウさんはマサキともっと絡みたいということだろうか。

「妬けますね」
「そんなにマサキと一緒にいたいんですか」
「・・・なぜそうなるんですか」

はぁ、と大きなため息をつかれた。違うのか・・・

「私はマサキに妬いているんですよ」
「ええ?またまたぁ」
「本当ですよ」

ひらひらと手を振れば、その手を取られた。
どきりと心臓がはねる。シュウさんはスキンシップがやたらと激しい。
ラ・ギアスはそういうところなのかなぁと思ってるんだけど、マサキは単にセクハラだから気をつけろと云う。

「ま、マサキと一緒の時間もシュウさんと一緒の時間も同じくらいですよ?」
「私はマサキよりも、誰よりもずっと長くあなたと一緒にいたいのですよ、
「は、はぁ」

この人はホントにもう、どうしてこういう歯が浮くようなせりふをさらっと云うんだろう。
アムロ大尉やクワトロ大尉も大概だが、彼ほどではない。と思う。
ドキドキしっぱなしで体に悪い。

「その様子では、私がどれほどあなたの事を想っているかわかっていませんね」
「いや、だって」
「わかりました。いい機会です、たっぷり教えてさしあげます」
「いえ!別にいいです!」
「遠慮しなくてもいいんですよ」

別に遠慮はしてないんですけど!
なんだか雲行きが怪しくなってきて、思わず体を引いたけれど手を握られているので距離はとれない。

「わっ、きゃあ!」
「おっと、大丈夫ですか?」
「!」

なんとか逃れようと立ち上がったけど、イスに足を取られてバランスを崩した。
すかさずシュウさんが支えてくれたけど・・・さっきより状態は悪くなった。
倒れるのを支える為に軽く抱えられていたのが、しっかりと抱きしめられるように力を込められた。

「シュウさん!」
「なんでしょう」
「なんでしょうって・・・は、恥ずかしいんですけど」
「恥ずかしがるあなたも可愛いですね」

なんなんですかもう!
全身に熱が回る。逃げたいけどしっかり抱きしめられているので逃げられない。
シュウさんの整った顔が間近にあって、吐息がかかる。思考さえうまく働かなくなってきた。

「あなたは私以外の方もこうして室内に招き入れてお茶をご馳走しているみたいですね」
「そりゃあ医務室なんですからいろんな人が来ますけど・・・」
「いくら医務室でも、男と密室で二人きりという事実に変わりありません。気をつけなければ」
「そ、そうみたいですね。今後気をつけますので放していただけませんか」
「今後気をつけるのはいいですが、別に私には気をつけなくてもいいんですよ」
「なんですかそれは」

自分は棚に上げるのか。そうなのかシラカワ博士。
私の反応が面白いのか彼はとても楽しそうである。私はちっとも楽しくないけど!

「ん!」
「ふふ、可愛いですね」

ちゅ、と耳に軽くキスをされた。
こそばゆくて肩をすくませると、シュウさんは笑う。くすくすと笑う息さえくすぐったくて、体が震えた。

「や、」
「イヤですか?」

耳元で囁かれると、弱い。絶対わかっててやってるな。確信犯だ。
だめだ、この人に飲まれる。

「か、からかうのは止めてください」
「まだそのようなことを云うのですか?私は本気です」
「う、そ・・・!」

あ、アレ?うそ、じゃ、ない?
シュウさんが本気になるはずなんてない。と思ってた。でも・・・この人は、誰だろう?
目の前にいる、真摯な表情をしたこの人は、本当にあのシュウ・シラカワなのだろうか。
こんな表情、私は知らない。
知らなかった。

「私はあなたのおかげで救われました」
「!」
「それだけで十分あなたに惹かれる理由になる」

私は私の中のイメージでしか彼を見ていなかったのかもしれない。
今目の前にいる彼は、今まで知らなかったような真剣な表情で私を見ている。
瞳の奥に熱情がちらちらと揺れて見えて、私を捕らえる。まるで心臓を鷲掴みにされたようだった。

「あなたは私にとって特別なんです」
「・・・・・・」
「わかっていただけましたか」
「・・・うん」

もう「嘘だ」とは云えなかった。本気なんだ彼は。
こくり、と頷くとシュウさんは嬉しそうに笑った。
こんな笑顔も、初めて見る。
なんていうか、びっくりするくらいの笑みだ。こういう笑い方もできるんだ。

「・・・シュウさん、そうやって笑った方がいいのに」
「え?」
「いつもの胡散臭い笑顔より、すっごくかっこいいのに」
「・・・・・・」

ぽかん、と口を開けて私を見下ろす彼は少しだけ幼く見えた。
次の瞬間、うっすら頬を染めたところを見ると恥ずかしがっているらしい。(き、貴重だ。)

「・・・胡散臭いとは、心外ですね」
「ええ?本当のことですよ。シュウさん、イコール胡散臭いって皆云ってますよ」
「その皆というのが大変気になるところですが、そうですか・・・しかし残念ながら、これはおそらく専用です。あなたになら、いつでも何度でも見せて差し上げますよ」
「・・・・・・あ、そう」

だから、心臓に悪いんだってば。
かあーと頬を赤く染める私を彼はそれはもうとろけるような微笑みで見つめて、火照る頬に唇を寄せた。
なんか、もう、むしろどうにでもなれって感じで。
こういうシュウさんは嫌いじゃないと思ってしまったものだから、私は暫く彼の好きなようにさせていた。