拗ねる
「寄るな!抱きつくな!俺に触れるな!」
「ひどい・・・刹那は私の事、きらい?」
「っ?!」
刹那に嫌がられた。
ひどい。そんな拒否らなくてもいいのに。と若干大げさに涙を浮かべたら刹那は狼狽えた。
あら、意外な反応。と思ったのは私だけではないようで、付き合いの長いロックオンもアレルヤも珍しいものを見たとばかりに目を見開いていた。
「さしもの刹那も美人の涙には弱かったか」
「意外だ・・・」
「てゆーかって強者だな」
うんうん、と数名がデュオの意見に同意する。
何よー、強者って。確かに、刹那に「嫌いか否か」なんて質問投げかける人なんてそうそういないだろうけど。即答で「イエス」と答えられそうだし。
でもねー、私そんなに嫌われてない自信があったんだ。だから、きらい?って聞いたのちょっとしたいじわるなの。
だって刹那、かわいーんだもん。ついつい苛めたく・・・いや、かまいたくなっちゃうの。
「にしても、がショタコンだったとはな」
「ちょ、な、なんですって?!」
聞き捨てならない発言をしたのは一体誰?!と振り向けば、クロウがにやにやと笑っていた。私がショタコンならアンタはロリコンでしょ!
「なっ、俺がロリコン!?そーいうジョークはノーサンキューだ!」
「こっちだってノーサンキューだっての!刹那は立派な16歳男児なんだから、私は決してショタ好きではない!」
「おま、自分の歳考えろよ」
「ハァ?!歳って云うけどねー、一応クロウより年下なんだから」
「あ?そいつぁ、サバの読み過ぎってイテ!」
「太平洋に沈めてやろうか」
「いや、ホントすみませんでした!」
「わかればよろしい」
「・・・どうでもいいがいつまでくっついているつもりだ」
クロウとぎゃあぎゃあ云い合っている間もしっかり刹那の腕に抱きついていた私を、刹那はげんなりとした様子で見下ろしていた。
ちょ、刹那のこんな表情レアじゃない?!いやー、どんな表情でもかわいいな刹那は。
「いつまでって私の気が済むまで?」
「・・・・・・」
しれっと答えたら微妙な顔をされた。面倒だとか思ってるんだろーな。
でも嫌がるわりに力任せに振りほどいたりしない辺り、私はやっぱり嫌われてないと思うんだよね。
「はなんでそんなに刹那に懐いてるんだ?」
「え、この場合懐いてるのって私なのロックオン」
「どう見てもそうだろ」
「むー、だって、刹那ってくっつきやすいし」
かわいいし、と続けたかったけどそれを云ったら刹那の機嫌を損ねるだけなので心の内でとどめておく。
ティエリアには可愛いかわいいと連呼しちゃうけど、刹那は今そーいうのに敏感なお年頃だからな。
てゆーか前に連呼したらちょっとの間口聞いてくれなくなっちゃったからなー。あれはちょっと切なかった。
「でも、って結構いろんな人に抱きつくよね。癖なのかなって思ってたけど」
「うん、癖」
さすがアレルヤ、よく見てるねー。癖なんだよねー。よく怒られるけど。でもほら、スキンシップって大事でしょ。こちらから壁を作らず接すれば、相手も打ち解けてくれやすいし。
この癖に助けられたことも数知れない。と思う。勿論、相手は選ぶし時と場合によりけりでもあるけれど、そこんとこはちゃんと空気読むよ。
「そういえば俺も抱きつかれた事あるな」
「俺も」
「私も」
「僕もです」
「・・・俺、ないけど」
この場の大多数が既に犠牲者となっているけど(いやホントすみません)1人否と答えたのはクロウだった。
うん、クロウにはさ、抱きつかないよ。だって、ほら。
「クロウは抱きついたらお金とられそうだから」
「成る程」
「セクハラで訴えられたら屈辱だもんな」
「でしょ」
「おいおい、いくらなんでもそんなことするわけないだろ」
「えー、でも、やりそうだよね」
うんうん、と大多数の賛同を頂きました。クロウ、残念だったね!
がくりと項垂れた彼は、心底残念がっているようだった。
あれ、何何、もしかして抱きついてほしかったとか?
いやいや、ないよね。ああは云ったけどホントはね、女嫌いって云うから遠慮してるんだよ。相手は選ぶって云ったでしょ?私って空気読める子!
「・・・」
「何?」
「放してくれ」
「わかった」
あっさりと腕を放した私に刹那は少々面食らったようだったけれど、すぐに表情を消して部屋を出て行ってしまった。
あらら、何か変なスイッチ押しちゃったかな。でも、あの流れで?って感じなんだけど。
「怒らせちゃった」
「当然の反応だな」
「えー、ちょっと想定外だよ」
クロウにはざまーみろみたいなこと云われたけど(もちろん沈めておいた)ロックオンは笑いながら違うだろ、と云った。
「あれは拗ねてるんだよ」
「拗ねる?なんで?」
「ああ、成る程ね」
「えー、何なのアレルヤ」
アレルヤを始め、徐々にその意味を理解した他の人たちは「ああ」とか「そういうこと」とか云って笑ったけど、私は何の事だかさっぱりわからなくて出て行った刹那のことが気になって何度もドアを見つめた。
「大丈夫だよ、刹那、怒ってないから」
「ホント?」
「ああ、心配すんなって」
「うん」
ロックオンとアレルヤが云うんだから、心配いらないかな。でも、次会った時も怒ってるっぽかったら、ちゃんと本人に聞いてみよう。
答えてくれるかどうかは、微妙だけどね。