膝枕される



「全く、この人は何度云ったら・・・!」

ティエリアは憤然として拳を握りしめた。
だがしかし、寝ている相手に云っても反応が返って来ることはない。

「ほんと何処でも寝るよな。これはもう特技と云ってもいいんじゃないか?」
「でもさ、無防備すぎるよね」
「だな。ったく、此処は男所帯だってわかってんのかねこのお姫様は」
「・・・・・・わかっていない。というより、気にしていない」
「だよね・・・」

ハァ、と折しも全員の溜め息が重なった。
彼らの視線の先には身体を丸めて眠るの姿。
もはやプトレマイオス内ではよく見る光景となっているが、やはり慎みを持ってほしいと思うのは何も神経質なティエリアだけではない。

「どうして自室に戻って寝ないのかな」
「戻るのが面倒だと云っていた」
「聞いたの?刹那」
「ああ」
「お前が自分から人に尋ねるなんてなぁ」
「・・・」
「ま、お前には結構懐いているしな」
「懐かれているのは俺だ」
「あー、そうだったな」

ロックオンはいつもの方が刹那に懐いているとからかうが、は元々人なつこいし、実際は刹那の方が懐いていると思っている。
だが今重要なのはそこではなく、をこのまま放置しているといろいろな意味で精神衛生上好ましくない、ということだ。
ロックオンはの目線までしゃがみこみ、肩を揺すって起こす算段に出た。

「おい、。寝るなら部屋で寝ろ」
「・・・・・・・」
「熟睡だね」
「こんなところで熟睡できるとは、ロックオン・ストラトスが云うように、もはやこれは特技だな」
「ああ」

軽く揺するくらいでは眠り姫を起こすに至らなかったらしい。
他のマイスターズの暢気な会話をBGMに、仕方なく先ほどよりも荒っぽく揺するロックオン。
気持ちよさげに眠るを無理矢理起こすのは忍びないが、問題が起こってからでは遅い。
それにちゃんとベッドで寝た方がだってよく眠れるはずだ。と心を鬼にして少々強引に揺する。

「おい、。起きろ。」
「ん・・・」
「起きたか?」
「・・・・い」
「ん?」

さすがにがくがくと揺さぶられるとの意識も浮上してきたようだ。
ぼんやりと目を開けたを覗き込むように、何かを云いたげなの言葉を聞くために、ロックオンはの隣に座った。
すると。

「ロックオン、眠い」
「あ?って、お、おい!」

がっと衝撃を感じたと同時に、膝に乗る重みにロックオンは目を丸くした。
どうしてこうなる?!という心境だ。女性に膝枕をされるのは大歓迎だが、何故にその逆をやらねばならないのか。
別にが嫌だとかそういうわけではない。嫌ではないからこそいろいろと問題があるのだ。精神どころか、身体的にも大問題だ。

「つきあっていられないな」
「後は任せた」
「頑張れ、ロックオン」
「おい、ちょ、お前ら!」

そんなロックオン(と)をさっさと見放したティエリア、刹那、アレルヤはそれぞれに声をかけて出て行った。
薄情者!と叫ぶロックオンのそばにもしハロがいれば、「ビンボウクジ!ビンボウクジ!」と云われていたことだろう。
地味に落ち込んだロックオンは大きな溜め息をついて自分の膝に頭を乗せて気持ち良さそうに眠るの顔を見下ろした。

「ったく、ホント無防備過ぎだぞ」
「・・・・・・」

すやすやと眠るの寝顔を見ていると、起こそうという気力ももう湧かない。あんまり寝顔をじろじろ見るのもどうかと思ったが、それくらいは役得とさせてもらおうと開き直る。
ぷにぷにと頬を突ついてみたり、鼻をむぎゅっとつまんでみたりしても起きないに、どんだけ熟睡だよ、と呟いてロックオンは笑った。
かわいい顔して寝ちゃって、襲われても文句は云えないぞ、と呟いて、観念して自分も目を閉じた。