補給時間。
よくマサキと一緒にいることが多いと云われるけれど、それには一応わけがある。
「また無茶したみたいだね」
「わりぃ」
「別に、私に謝ることないけど」
私がプラーナの補給ができるとわかってから、マサキは無茶することが多くなった。
サイフラッシュとかアカシックバスターとか、とにかくプラーナを大量消費するような技を連発をするようになったのだ。
それでみんなの戦闘が楽になっていることも事実なのであまり強くは云えないけど、よい気分ではない。
プラーナとはいわゆる“気”だ。
消費すればするほど人体への負荷がかかり、下手すれば命に係わることだってある。
戦闘後に必ずふらふらしながらやってくるマサキを、心配するなと云う方が無理な話で。
(だってあのマサキが此処にだけは唯一迷わずに来られるんですよ。通いすぎて。びっくりでしょ)
「だって怒ってんだろ」
「怒ってるんじゃなくて心配してるの」
「う・・・悪い」
「そう思うなら少しは自重してください」
はい、とマサキに両手を差し出す。
マサキが素直にその手の上に自分の手を重ねた。いつのもグローブは外しているので素肌同士が触れ合い、互いの熱が直に伝わる。
手のひらを通して気を送り込むのがいつもの補給方法だけど、今日はいつもと同量の気を送り込んでもマサキの纏う気は回復する兆しを見せなかった。
「マサキくん」
「な、なんだ」
半目プラス“くん”づけで呼ぶと、マサキは怯んだ。
反射的に引かれた手をぐいと力を込めて引き戻し、一番の笑みで微笑んでみると面白いくらいに肩を震わせる。
「今回は何を何回やったのかしら」
「え・・・と、だな」
「正直に云いなさい」
泳ぐ視線に声を低くすると、マサキは小さい声で白状し始めた。
「・・・サイフラッシュ2回にアカシックバスター1回」
「うん」
「・・・ハイファミリア2回」
「・・・それだけ?」
「こ、コスモノヴァも」
「ばっかじゃないの」
「うっ!」
ぶっ倒れないでここまで来られたこと自体が奇跡だ。
マサキも今回ばかりは云い逃れできないと観念したのか、素直に反省しているようだった。
「今度やったらクスハの健康汁飲ますからね」
「げっ!あれだけは勘弁してくれ!」
「それはマサキの行い次第です」
はぁ、とこれみよがしにため息を吐くとマサキの肩がびくりと震えた。
「・・・今回は我慢しなさいよ」
「何を」
だ、とマサキは質問したかったのだろうが、それは最後まで音になることはなかった。
私が彼の口を塞いだからである。
・・・自分からするのは果てしなく恥ずかしいのだけども、緊急事態であるからしてそんなことは云っていられない・・・よね?!
「・・・い、云っておくけど苦情は受け付けないからね」
「な、な、な」
「この方法が一番効率的なのよ!」
「そりゃ、知ってるけどよ!」
なんだ知ってるのかよ!ならそんな顔しないでよ!
マサキの顔は真っ赤だ。たぶん、私も同じようなもんだろう。
「おま、お前な!」
「何よ、そんなにイヤだったの」
「違え!」
即否定が返ってきて、少しだけ安心した。
自分からしといてなんだけど、補給なんだけど、心底拒否されたんじゃ女子としてちょっと切なすぎる。
「とにかく、今度やったらクスハ汁だからね」
「わ、わかったよ」
「・・・初めてだったとか云わないよね」
「ち、違うけどよ・・・は違うのか」
「まぁ、初めてをこんな理由でしたいとは思わないよね」
ていうか初めてじゃなくてよかった。これで初めてとか云われた日には罪悪感ですよ。ま、これはマサキが悪いんだから自業自得なんだけどさ。
「そう、だよな」
「何」
「なんでもねぇ」
なにやらショックを受けているらしいマサキをいぶかしく思いながら、またこういうことがないといいけど、と到底無理そうな思いを抱くのだった。