伝説はこうして創られる。
「私常々思っていることがあるんですけど」
「なんだ」
今日も今日とてなぜだか少佐がやってきている。
いつものごとくハーブティーを振る舞っていたのだけど、今日こそは云いたいことがあると切り出した。
「あつくないんですか」
「・・・俺は君と違って猫舌ではないのでな」
「そうじゃなくて。髪ですよ髪!」
「君も長いだろう」
暑いか、と聞かれて首を振る。
そりゃあ、慣れてるから改めて暑いと思ったことなんてないけどさ。
男性は断然短髪が好みなのだ!!
「切らないんですか」
「・・・伸ばそうと思って伸ばしているわけではないのでな、切ろうという思いもわかん」
要するに、興味ないと。
邪魔とかは思わないんだろうか。
なんだか無性に切ってやりたくなってきた。
「・・・」
「云っておくが、君に切ってもらいたくはないぞ」
「・・・じゃあせめていじってもいいですか」
「・・・・・・」
少佐は無言でお茶をすすった。
これは是ととらえていいんですよね。
デスクに自分のマグを置き、立ち上がって少佐の背後に回った。
座ったままの少佐の頭に手を伸ばす。
なんだかドキドキするなぁ。
「うっわ、ふわふわ〜。ていうか見事なキューティクルですね」
「・・・そうか」
「何か特別なケアとかしてるんですか?」
「そんなものはしていない」
「うっそだ!絶対コンディショナーとか使ってるでしょ!」
「支給されたものしか使っていない」
それでこの艶って・・・なんつーか嫉妬だ。
「やーん、なんかずっと触ってたい」
「・・・・・・」
反応なし。きっと微妙な顔をしてるに違いない。
なんだか楽しくなってきた私は鼻歌を歌いながら少佐の髪をまとめていく。
「できましたよ」
「そうか」
「うん、絶対こっちの方がいい!ていうかできれば切りたいくらいですけど」
あ、今顔ひきつった。
興味ないとかいいながら切りたくないんじゃん。
「・・・手慣れているな」
「よくやってあげてましたからね〜」
「・・・・・・それで」
「はい?」
「大人しく好きにやらせてやったんだ」
「は、はぁ」
「こちらも好きにやらせてもらう」
「え?」
ニヤリ、と意地悪な笑みを浮かべて少佐は立ち上がった。
あれ、何コレなんかピンチ??
「座れ」
「へ、変にしないでくださいね」
「さあ、どうなるかわからんな」
今度は私が顔をひきつらせる番だった。
しかし逃げられるわけもなく、云われるがままに座らせられ後ろをとられた。
少佐の指が後ろ髪を掬う。何度も梳くように往復され、ちょっと気持ちよくなってきた。
「なんか」
「?」
「いいですね。頭撫でられてるみたい」
「撫でられるのが好きなのか」
「少佐が云うとやらしいですね」
「・・・・・・」
あ、しまった失言。開いた間が気まずくて、少佐に先に口を開かせるとどうにも事がよくない方に進みそうな気がして慌てて話題を反らした。
「少佐こそ慣れてる感じしますけど、自分で結わいたりするんですか?」
「たまにはな」
「見たことないですけど」
「人前でしたことはない」
「えー、結んだ方がかっこいいのにもったいない」
「・・・・・・」
あれまた黙っちゃった。どうしたんだろうと思ってちらりと振り返ったら動くなと怒られた。
一瞬見えた顔はなんとも云えない表情を浮かべていたけど、何か変なことでも云っただろうか。
「君は頭が小さいな」
「そうですか?」
「脳味噌も小さいのか」
「失礼ですね」
「だが・・・いい毛並みだ」
「猫じゃないんだから」
「ずっと触っていたくなるな」
「・・・・・・」
これさっき自分でも云ったセリフだけど云われると恥ずかしい。
きっと少佐はわざと云ったんだと思うんだけど。この人私をからかうの楽しんでるからなぁ絶対。
本当はどんな顔してるか確かめたかったけど、また怒られるのはイヤだったので大人しく前を向いていた。
「できたぞ」
「はぁーい」
暫くして出来上がったのは普通にポニーテールだった。
すんげー変な頭にされたらどうしようかと思っていたのでほっとする。
「可愛いな」
「・・・・・・わざとですか」
「わざとだ」
「そりゃどーも」
「だが、本気でもある」
くっ、この人食えない!
ニヤリと笑みを向けられ、顔に熱が上った。
「教官?どうしたんすかその頭・・・いえ、髪」
「・・・がな」
「え?」
「〜頭可愛いじゃない?」
「イングラム少佐と結びっこしたんだ」
「え?!」
なんだか私の伝説とやらが増えたってマサキが云ってたけど・・・なんのこっちゃ。