学校から帰ってくると境内に綺麗な女の子がいて、目が合うとにっこり微笑まれた。
20代前半くらいの、赤い口紅が印象的な美人さん。参拝者なんて珍しいなと思いながら会釈だけして家に帰った。
その話を夕食の席でするとリドルが「最近、毎日のように通ってくるよ」と言った。
「あれはただのマグルじゃないね」
「魔女ってこと?」
「いや、霊力が少し高い人間てところかな」
マグルの中にも霊力の高い人がいて、そういう人が占い師とか祈祷師とかやってるんだそうな。
魔力と霊力の違いがイマイチわからなかったけど、とりあえず「へー」と頷いた。
「あー、あの別嬪さんか。俺っち達が人間じゃないことも気付いてるみたいだな」
「え、そうなの?」
「興味津々って感じでいっつもニコニコ見てるよねー」
「うん。なんか人間にああやって見られるの慣れてないから緊張するよ」
この神社は特殊な術がかかっていて、普通の人にとってはみつけにくい場所らしい。
主に縁のある人は入ってきやすいみたいだからあの女の子は私の知っている人なんじゃないかってリドルは思っていたみたいだけど私的には思い当たる人物はいないなぁ。気付かなかっただけだろうか。
今度また会ったらもうちょっと観察してみようかな〜。なんなら声かけてみようかな〜と思った翌日。
テスト前で生徒会活動も制限されているため久々に早く帰路についたところ、神社までもう少しと言うところで学ランの男の子に声を掛けられた。
「すみません、ちょっといいですか」
「え」
栗色の長めの髪。優しげな笑みを浮かべた中性的な顔立ちはなんだかとっても知ってる雰囲気の男の子ですよ〜?
あれあれ〜?なんで君が此処にいるのかな〜??私の勘が正しければ君ってほら〜ちょっとこっ恥ずかしい名前の中学のテニス部の子じゃないかな〜??なんで話しかけてくるのかな〜??とガン見して固まっていると彼は少し困ったように笑った。あ、見すぎましたかね。
「急に話しかけてごめんね。この辺りに勝負ごとにご利益のある神社があるって聞いて来たんだけど、知りませんか?」
「あー、はい、ありますよ」
なんだ道聞きたかったのか。なるほどね。ていうかそれうちだね?見つけられなかったのかな?一緒に入れば入れるよな〜。たぶん。
こっちですよ、と歩き出すと彼は「ありがとう」と言って隣に並んだ。隣来るんか〜いと思ってちらっと見上げるとにこりと微笑みが返ってきた。うおう、美少年ですね。
「氷帝学園生ですよね」
「あ、はい」
「僕は青春学園中等部3年、不二周助です」
「あ、ご丁寧に…氷帝学園中等部3年のと申します」
マジで不二くんだったよ!そうだろうなとは思ったけど本物だよ!なんでこんなことになってるんだろーか?!
思いもよらなかった出会いにちょっとテンパってますなう。
「同い年だね」
「そうですね」
「敬語じゃなくていいよ?」
「あ、うん」
「青春学園は知ってる?」
「名前だけは」
そっか、と優しい声が隣から聞こえてきます。うわ、すごい、私不二くんと話してる。跡部と話した時もドキドキしたけどそれはまぁ予め心の準備をしてたからなんとかなったけどこれは想定外過ぎてちょっとテンパってます!(2回目)早く神社つけ!
「僕テニス部なんだ。氷帝ってテニス部いつも応援すごいから制服ですぐわかったんだけど」
「あぁ、うん」
「跡部くんは元気かな?」
「あー元気げんき」
なんであんな元気なのかなってくらい元気だよねー。朝晩休日返上で部活もやって生徒会もやって勉強もやってヤツはほんとにスーパーマンだよね。生徒会の仕事はすんごい肩代わりしてるけどね。まぁそれくらいやってあげるかって思っちゃうけどね。
「さんて跡部と仲良いの?」
「え?なんで?」
「なんかそんな口ぶりだったから」
そうだろうか。仲良いのか?悪くはないけどなんていうか仕事仲間?同僚って感じだよね?いや、上司と部下か。ははは。私は下っ端その一ですよ。よっしゃ神社着いたぜ!
お探しの神社はこちらです、と指し示すと不二くんは首を捻った。
「あれ?さっきここ通ったと思ったんだけどなぁ」
「入り口わかりにくいよねー。でも中は広いよ」
「ふぅん。ありがとう、助かったよ」
「いえいえ」
さてどうしようか。一緒に入る?君も来るのって変な目で見られるかな?と思ったけど向こうから「さんも行く?」って聞かれた。
え、あ、はぁ、まぁ行くっていうかうちなんですけどね。と迷っていたら後ろから「大将?」と薬研の声が聞こえた。
びっくりして振り返ると両手にスーパーの袋を提げた薬研が不思議そうに立っていた。どうやら買い出しの帰りらしい。
またどうしてこのタイミングで。
「おかえり。学校の友人か?」
「あー、いや、うち来るのに迷ったらしくてそこで会った人」
「へぇ」
薬研はじっと不二くんを見つめた。不二くんは軽く会釈してこんにちはと言った後「うちって?」と至極もっともな質問を繰り出した。
「あー、うん、実はこの神社うちなんだよね。言わなくてごめん」
「へぇー、そうだったんだ」
不二くんは驚いたように私を見た。うわ、開眼した。なんていうか先入観で見てはいけないものを見たような気がするよ。なんか面白いものみつけたみたいにキラって目が光った気がしたよー。怖いよー。
「うちの神社目指して来るなんざ珍しいな。誰かに聞いたのか?」
「あ、確かに」
全然気づかなかった。薬研はまだ不二くんを見つめている。怪しい人かどうか見極めているんだろうか。
大丈夫、一応身元はしっかりしています。
「姉さんがね、最近見つけたらしくて。すごくおも…いい神社だから行ってみなって勧められたんだ」
「へ、へー、お姉さんが」
今面白いって言おうとしたよね?!別に面白いでもいいよ?!何故言い直した!逆に怪しいわ!
「もしかして最近よく来るあの別嬪さんか?」
「ああ、例の!」
そうかそうか不二くんのお姉さんでしたか!あれが!美人姉弟だな!……ん?待てよ、確か薬研あのおねーさんはみんなが人間じゃないこと気付いてるって…不二くんはご存知なんだろうか??
パッと不二くんの顔を見るとさっきと同じようににこやかに笑っている。それがまたなんとも得体の知れない感じがして怖いんですけど!
「ま、なんだ。とりあえず入ってもらったらいいんじゃないか大将」
「そ、そうだね」
どうぞ、と手を出すと不二くんは「ありがとう」と中に入って行った。少し距離を取って歩き出すと薬研が隣に並んでこっそり「弟は普通の人間みたいだな」と言った。
「あ、そう?」
「勘は鋭そうだがな」
やっぱり?と思ったところで「さん」と呼ばれた。薬研は荷物があるからと言って先に帰ってしまった。えー、置いてかれたー。
渋々不二くんのところへ行くと薬研のことを弟かと聞かれてちょっと面食らった。
まぁそういう風に見えるか…特に訂正する必要もないかと要件を聞く。
「さん神社の仕事手伝ったりするの?巫女さんやったりとか」
「やるのは掃除くらいかな。うち普通の神社と違うから巫女とかそういうのないんだ」
「そうなんだ…巫女さんの格好似合いそうなのに」
「え、あ、一応衣装はあるんだけどね。完全にカタチだけだけど」
「へぇ。今日は着ないの?」
「休みの日くらいしか着ないよ」
「そっかぁ。じゃあ日曜日とかにまた来よう」
「え?うん」
いつ来ても自由ですけどね。じゃあって何ですか。わざわざ見に来るほどのものでもないと思うよ。
「ね、普通の神社と違うってどういうこと?」
「んー、うちって特定の神さま祀ってるわけじゃないんだ。簡単に言うとこの土地そのものって言うか。超強力なパワースポットだから整えておかないとよくないことが起きるって整備のために創られた神社らしいよ」
「へぇパワースポットなんだ」
いっぱいパワーもらって行ってねと言うと不二くんは笑った。「もうもらってる」って、え、そういうのわかる人なんですか。
「うーん、どうだろう?姉さんはそういうのわかる人だけどね」
「え?じゃあ」
「さん、よかったら連絡先交換しない?」
「え?」
言葉を遮られたと思ったらなんかいきなりの話題転換ですけど連絡先?いいんですか?逆にいいんですか?ってダメなら言い出さないよね。
戸惑いつつも頷くと不二くんはホッとしたようにはにかんだ。可愛いか。
「テニス部の試合は応援に来たことないの?」
「まだないなぁ」
「そうなんだ。興味ない?」
「なくはないけど。機会がなかったから」
実は氷帝に編入したばかりだと言うと驚かれた。どうして氷帝に入ったのかと聞かれたけど入れたからとしか言いようがないなぁ。むしろ入ること決まっていたと言うか。
「そっかぁ。青学来てくれれば毎日会えたのにな」
「うん?」
「ううん。氷帝とは都大会当たることになってるから、よかったら見に来て」
「あー、関東大会は行こうかなって思ってるんだけど」
ていうか来いっていう会長命令なんだけど。はいはいって適当に返事したけど実際関東大会っていつ?まだ先だよね?私的にはその前の中間考査と球技大会のことでいっぱいいっぱいなんですけどね。
「都大会の日は他に予定があるの?」
「いや、特にないと思うけどレギュラーが出るのが関東大会からだからって跡部が」
「やっぱり跡部と仲良いんだ」
「いやー、仲良いっていうか…跡部が生徒会長やってるのは知ってる?私生徒会副会長なんだよね。それで」
「え?さん編入したばっかりなんだよね?」
「おかしいでしょ?跡部の独断と偏見と俺様発言により強制的に生徒会入りだよ」
やっぱ普通は編入したばかりの生徒にやらせないよね?不二くんはその様子を想像したのか納得したように苦笑した。
「大変だね」
「大変です」
「でも、ふぅん…そっか。やっぱり跡部は見る目あるなぁ」
「え?」
「なんでもないよ」
そう言われても気になるんですけど。やっぱり不二くんは何か気づいてるのかな。しかも跡部も何か気づいてる風な感じなんですか。こわー。この人達こわー。
「さてと、遅くなっちゃったけどお参りしようかな。ええと、普通の神社じゃないのはわかったけど、二礼二拍手一礼でいいのかな」
「えっ、あ、うん。なんでも大丈夫」
「なんでもって。そんなアバウトでいいの?」
私の言い方に不二くんは苦笑い。そりゃそうなんですけど、本当に気持ちがあればうちの神社はそれでいいんです。大事なのは感謝の気持ちです。そう言うと不二くんは「わかった」と笑った。
「手水は…」
「ああ、それならこっちだよ」
さすがというかなんというかちゃんとしてるなぁ。手水舎まで案内すると「引き留めてごめんね」と帰っていいお許しをいただきました。うん、まぁ参拝は静かな気持ちでした方がいいしね。
「ゆっくりしてってね」
「うん、ありがとう」
まぁ不二くんとはまた会うだろう。
関東大会の会場で見かけるかもなとは思っていたけどまさかこんなに早く、しかもうちに来るっていうイベントつきの出会いだとは思わなかったなぁ。連絡先も交換してしまったよ。驚きだぜ。
自室に戻って着替えている間に不二くんから帰る旨と案内してくれてありがとうというメッセージが届いた。
不二くんはちょっと得体が知れないけど、礼儀正しくていい子という情報が私の脳にインプットされた。
back