「おい聞いたか、今日はツインテールらしいぞ」
「オレ見た!ぶっちゃけ今まで高校生にもなってツインテってどうよって思ってたけど人によるんだと思い知った」
「マジか」
「あれはヤバイ」
「今日1限体育だったよな」
「あ、だから朝からまとめてきたんじゃね?」
「それだ」
「うおー早く見てぇ」

クラスメイトの奴らが何かの話題で盛り上がっていた。主語がないので何の話をしているのかわからなかったが、授業開始の5分前に謎は判明した。

「おっ、来た来た」
「うわやっべ。マジやっべ」
「だろ」
「もう何、どこのアイドルなの」
「かわいすぎだろ。つーかなんかエロイ」
「わかる。ツインテールであの色気ってやばくね」
「オレ今日ほど窓側の席でよかったと思ったことないわ」
「うらやましいぞオイ」

彼らの視線の先を辿って窓の外へ目をやると、校庭に体育ジャージ姿のがいた。
なるほど髪を耳の後ろあたりで2つに結わいた姿は目新しく可愛らしい。あいつらが騒ぐ気持ちもわかる。だがなんとなく気に食わない思いもあってオレは口を開いた。

「おい、うちのマネージャーを変な目で見るなよな」
「変な目じゃねーよ、健全な目で見てんだよ」
「いいじゃんかよ見るぐらい」
「いいよなぁ、バスケ部は。放課後になれば毎日会えるし話せるし」

うんうん、と周りの奴らが同意する。まぁな、と返せば悔しそうな声を出す相手になんとなく得意な気分になった。

「ばーか、バスケ部だからってそうやすやすと話しかけられねーよ」
「うわマジか。でもそうだろうな」
「普通に話しかけてんのって牧と神くらいじゃね?」

同じ部活の佐藤が話の輪に入ってきた。そうは云うが部活中に声を掛けたり掛けられたりというのはあるだろ、と云うと挨拶程度のもので会話とは云えないという答えが返ってきた。
考えてみれば確かにがオレと神以外の奴と話しているところをあまり見たことがないかもしれない。だが彼女は社交的だし話しかければ答えてくれるだろう。話したいのであれば話しかければいいじゃないか。

「お前なぁ、そう簡単に云うなよ」
「高嶺の花だもんなー」
「でも挨拶してくれるだけでもうらやましい」
「なー今度紹介してくれよ」
「ていうか教室に連れて来てくれよ」

それいい!と数人が期待を込めた目で見てくるが誰がそんなことするか。

「話したいなら自分で声をかけろ」

えええ、と文句の声が上がったが始業のチャイムが鳴ったので無視して席に戻った。
ちらりと席から校庭に目を移せばすぐにを見つけられた。確かに、今日ほど窓側の席でよかったと思ったことはないかもしれない。