ハッとして目が覚めた。汗でべっとりとした体が気持ち悪い。

「嘘でしょ」

誰か、夢は夢だと言ってください。





まだ外もまっくらな早朝だったけどリドルの部屋に突撃した。
ノックもそこそこに返事貰わないうちに突入。いきなり入って来た私を見て「?」と起き抜けの凄まじい色気を放つ彼にちょっとくらっとしたけど今はそんなバヤイではない。

「リドルどうしようマジで嫌な夢見た聞いて」
「どうしたの」
「松田さんが死ぬ。爆弾、観覧車。あと病院。どうしようこれ夢なんだよね?ただの夢だよね?!でも夢じゃないならどうしよう!!」
「落ち着いて。ゆっくり話して」

優しい声と背中をさすってくれる手に少し落ち着きを取り戻したので見たばかりの夢の内容を整理して話す。
最後の方は声が震えて涙が出た。だって、死んじゃう人がはっきりとわかる夢なんて初めて見た。それも知り合いだなんて。夢ならいい。でもすごくリアルで、本当に起きるんじゃないかって、頭の何処かで思ってる。
だってもう解ってるんだよ、ただの夢じゃないんだって。でもどうしたらいいのかわからない。

「大丈夫だから、僕がなんとかするから。心配いらない」
「でもどうやって」
「大丈夫だから。ね?僕を誰だと思ってるの?」
「大魔王リドル様です」
「うん、すっっっごく不本意だけどまぁいいや。とにかくこの件は僕に任せて」

いいね?と超笑顔で念押しされて頷くしかなかった。コワイ。リドルはまだぐすぐす言ってる私をそのままベッドに寝かせた。起きるにはまだ早いから此処で少し寝なって言われて頭撫でられたらなんかすごい眠気が襲ってきた。いま、ぜったい、なんか魔法かけたでしょ…
ぐぅ。





「こんな時間に何〜?まだ暗いし眠いんだけど。ていうかリドルってほんっと俺たちのこと敬う気ないよね」
「まぁまぁ」
「緊急って言うくらいだ。なんかあったんだろ」
「だろうな」

が寝入った後すぐにリドルは付喪神たちを叩き起こした。清光は不満そうに、堀川はそれを宥め、薬研と長曽祢は冷静に、蛍丸は寝ぼけまなこをこすりながら、安定と御手杵に至っては立ったまま寝ているがなんとか全員集まった。

がまた夢を見た。今度は松田という知り合いの警察官が爆死するらしい。泣いて僕にすがってきた」
「わかった今すぐに松田を保護しよう」
「主泣かすとか松田許すまじ」
「いやいや、松田は悪くない。たぶん」

リドルの言葉を聞いて不満たらたらだった清光は一転キリッと眉を上げ、寝ていたはずの安定と御手杵も覚醒した。

「ねー、松田をどうこうするより犯人を捕まえちゃえばいいんじゃないの?」
「そうだね。さっさと見つけて自首させちゃいますか」
「いや、現行犯逮捕が理想だろ」
「なんで?」
「人間(ヒト)の罪は人間(ヒト)が裁かなければならない、か?」
「ああ、後あと面倒なことになりかねねぇからな」

本来であれば人間(マグル)界の事件に首を突っ込むこと自体タブーだ。魔法界や神秘の存在が多くの人に露見してしまう可能性だってある。そうなれば世界のバランスは崩れてしまう。だから手を出すのは最小限にしなければいけない、と薬研は言う。

「僕も薬研藤四郎に賛成。それに犯人にはなるべく重い罪で捕まってもらわないとね」
「おーい悪い顔になってんぞー」
を泣かせたんだ。それ相応の罰を受けてもらう」

ククク、と笑ったリドルは誰がどう見ても大魔王だった。と後に清光は語った。
その後方針を決め、観覧車組・病院組・犯人捜索組に分かれて行動開始。

日が昇り、が再度目を覚ます頃には全ての準備が終わっていた――








「ハッ、遅刻!?」
「おはよう、今日は休日だよ」
「あれ?リドルがいる…って、ああ!ここリドルのベッドだった!」

飛び起きたらリドルがベッド脇で優雅に本を読んでいた。え、すんごいゆったりしてますけどあのやり取りは夢だったのかな?夢見た夢見ちゃった的な?いやいやなら此処で寝てるのおかしいよね!?

「今何時?!爆弾は?松田さんは?!」
「今9時。もう全部準備はできてるよ」
「準備って」
「話はご飯食べながらね。支度して降りておいで」

あ、と止める間もなくリドルは部屋を出て行った。なんであんなに余裕そうなんだ。
仕方なく言われたとおり自分の部屋に戻って支度して食堂へ向かうと私以外全員揃っていた。
「おはよう」といつも通りの穏やかな挨拶にこっちは内心気が気じゃない。

「大将、気持ちはわかるが落ち着け?」
「え」
「あーあ、本当にただの夢じゃないって気付いちゃったのかぁ」
「知らないでいてほしかったですけど、仕方ありませんね」
「え、え?」

薬研、清光、堀川くんの言葉に疑問符が浮かぶ。
何がなんだかついていけず固まっている私を席に座らせたそねさんがぽんと頭を撫でながら苦笑いを漏らした。

「俺たちは主の見る物騒な夢が天帝からの啓示だとずっと知っていたんだ」
「え」
「黙っててごめんね?でも内容が内容だし主には知ってほしくなかったっていうか」
「うそ」
「本当だよ。えーと、最初は4年前だったっけ?」
「そうそう、マンション爆破脅迫事件。あ、そーいやあん時も爆弾騒ぎだったなぁ」

みんなの話をぽかーんとしながら聞く。安定も蛍ちゃんもぎねもみんな知ってたとかマジかよ知らないの私だけかよ蚊帳の外悲しい。いやいやでも安定が言う通り内容が内容だったからみんな気を使って黙っててくれたんだろうなぁ。
ん?待てよ?あの時確か犯人が早期に捕まったって…

「あの〜もしかしてですけど〜あの時みんななんかした?」
「ま、ちょっとだけな」
「ちょっとだけ…」

にこっと笑った薬研に顔が引きつる。詳しく教えてくれる気はないみたいだけどなんかしたことは事実なんだな。だから犯人すぐ捕まったんだな。あれ?他の夢の時もなんかしたりしちゃってる?最近で言うとえーっと…あ、そうだ。追われる男自殺事件(仮)。
その後特にニュースでそれらしいことやってなかった気もするけど…そういえば次の日お兄ちゃんが出来たっていう超驚きぶっ飛びニュースが飛び込んできたからすっかり忘れてたわー。

「ああ、あれはユ…もがっ」
「それは置いておいて、今日の夢の話をしようか」

何か話そうとした清光の口をリドルが塞いだ。うん、あの件も何か介入したのですね理解。
清光はリドルを睨んだけどリドルは笑顔で何事もなかったかのように話を続けた。どうやらあまり深くつっこんではいけないようです。

「今回、が夢を見てすぐ僕に話してくれたからか内容も鮮明に分かったし、観覧車も病院もすぐみつかったよ。爆弾は爆発しないように処理してきたから、後はのこのこ現場にやって来た犯人を現行犯で警察に逮捕させるように仕向ければいいだけ」
「えぇー…マジか」

だから準備はできてるって言ったのか!用意周到ですね!犯人も特定済みとかスゴ過ぎさすがです。『証拠は掴んでるんだぜ白状しちまいな』とか言ってさっさと自首させてもいいんじゃないかと思うんですけどいろいろ事情があるらしいです。なんかリドル様が超笑顔で怖いです。内容が鮮明に分かったとかいうのも詳しく聞きたいですけど聞けるような雰囲気じゃありませんガクブル。
うーん、しかしうまくいくかなぁ?爆発しないようになってるならいいんだけどさ…
でもやっぱり心配!と言うと「言うと思った」と苦笑された。じゃあ観覧車行く?と聞かれて即答。そりゃあ行くに決まってるよね!



そんなわけでやってきましたショッピングモール。休日だし人出が多い。こんなところに爆弾を仕掛けるとはけしからん犯人である!
しっかし、本当に此処だよ。夢で見た大観覧車が目の前にあるよ!
お巡りさーん!あそこに爆弾があるんですよー!って可能なら通報したい。いや、もはや通報してもいいのでは。先に乗り込んで「あれれ〜?これなんだろうおかしいな〜??」とか言っちゃえば…

、落ち着いて。準備できてるって言ったでしょ?松田は死なないから」
「う、うん…」
「ほら、折角来たんだし時間まで買い物でもしてきなよ」
「えー…そんな気分には」
「いいじゃんいいじゃん、俺主の服選んであげるよ」
「わ、ちょっと清光〜」

外で主って呼ばないで〜!清光に連行されお店を回る。ぎねと蛍ちゃんもついて来てくれた。ちなみにそねさんと安定は病院の方に行ってくれているので観覧車近くにはリドルと薬研と堀川くんが残っている。何かあったら連絡してくれるらしいので暫くは買い物で気分転換するしかなかった。

なんだかんだ言いつつだんだん普通に買い物楽しくなってきたけどさ。ちょ、清光さん買い過ぎじゃないですか?ぎねが完全荷物持ち状態なんですけど大丈夫かな?本体に比べたら全然軽いから平気だってそりゃそうだろうけども。ただでさえデカくて目立つのに両手両肩女性ブランドのショッパーで埋め尽くされてるイケメンなんて完全に注目の的である。清光も蛍ちゃんも可愛いしなんだろうこの人たちと思われてる感ハンパない。ひぇ〜視線が痛い。
精神的にもどっと疲れたしお昼も近いし一度みんなと合流しようかとスマホを取り出すと同時にリドルから着信があった。ドキッとして通話ボタンをスワイプしたその瞬間。

ドォンという大きな音が響いた。











それが大観覧車だと気づいたのはすぐだった。急いで現場に向かうと既にそこはパニック状態だった。係員の話によると観覧車の制御盤が爆発したらしい。客は全て降ろしたという言葉にひとまず安心する。怪文書の内容の通り、“72”と書かれたゴンドラにブツはあった。
伊達たちが止める中ひとりでゴンドラに乗り込む。
爆弾自体は簡単な作りで順調に解体できたが途中揺れが起きて変なスイッチが入りやがった。だがそれでも制限時間内に解除できる自信はある。しかしすぐにその自信が意味のないモノになった。
液晶パネルに流れた文字。もう一つの爆弾の在処。どこかの病院と思われるがどこの病院かまではわからないし探している時間もない。『爆発3秒前にヒントを表示する』という犯人からのメッセージにくそっ、と思わず悪態が漏れた。

「はっ、こんな時に思い出すのがアイツだとはな」

2年前の謎解き殺人事件以降、何かと心配して連絡をくれるの顔が真っ先に思い浮かんで少し驚いた。泣くだろうな、と思って苦笑する。
電話先の伊達がすげぇ怒鳴ってる。まさか俺が一番乗りだとはなァ、と覚悟したところで伊達の様子が変わった。

『もう一つの爆弾は〇〇中央病院に設置されており既に無力化されている、気にせずそいつを解体しろ』

そんなことを言われて嘘なんじゃないかと思った。だが俺はそこで初めて気付いた。
無力化…ああ、そうだ、この目の前の爆弾もよく見れば既に無力化(・・・)されているじゃねぇか。なんで気付かなかったんだ。だが一体どういうことだ。わけがわからない。
次いで犯人が確保されたという報せに本当にワケがわからなくなった。何がどうなってんだ。まるですべて仕組まれているかのような。

現実味が感じられないまま地上に着いたゴンドラから降りると胸から腰の辺りに衝撃が走った。想定外のことで少しよろける。いや、お前なんで此処にいんだよ。

「松田さんっ!!よかった…!ほんとうによかったぁぁぁ!」
?お前、なんで」

ぎゅうぎゅうと抱き着いてくる華奢な体。泣くだろうな、とは思ったけどほんとに泣いてんのかよ…俺はまだ生きてるぞ。
いろいろな感情がこみ上げてきてを抱きしめそうになったけど伊達たちの視線にハッとなって宙に浮かんだ手はの両肩に落ち着いた。

「泣くなよ、俺はこの通り無事だ」
「うん…っ、うん!」
「ったく可愛い顔が台無し…と言いたいところだがお前は泣き顔も可愛いな」
「へ」

ぽかん、と見上げてくる顔に笑って濡れた頬を拭うとその手にがすりっと頬を摺り寄せた。…いや、無意識なんだろうけど。こいつこういうところあるって前から知ってたけど。
ハァァァァー…おま、こっちがいろいろ我慢してんのにやめろマジでただでさえ爆弾騒ぎの後で神経昂ぶってるっつーのになんだそれ可愛すぎんだろほっぺ柔らかすぎスベスベだしふにふにだし泣き顔エロいし俺の所為で泣いてるとかヤベェちょっと興奮するしなんなら啼かせてやりたいし犯すぞいや待て衆目のあるところだ落ち着け俺。
すっっっげぇ手放しがたかったが、なんとか理性を総動員させてやんわり体を離した。

犯人は4年前のマンション爆破脅迫事件の犯人の関係者だった。驚いたことに犯人が特定できたのはの幼馴染や従兄弟たちの活躍があったからだそうだ。萩原が言うには4年前の犯人逮捕もんちの神社が関係しているらしいが、今回もかよ。
無力化されていた2つの爆弾、タイミングよく捕まった犯人、4年前の事件にも関係があったという神社。偶然にしては出来過ぎだと思うがひとまずこうして生きていることに感謝しておくか…
そういや伊達に「お前あの子とどんな関係なんだ」って聞かれたから「俺の女」ってつい勢いで言っちまったけど、まぁいずれそうなるだろうし……いいか。









「主って松田のこと好きなの?」
「えっ、なんで?!」
「あーんな熱烈なぎゅうしちゃってさ」
「だ、だって!生きてるって安心したらつい体が勝手に動いていたというか」

清光が胡乱な目で見てくるけどそんなんじゃない。と思う。そりゃ松田さんはかっこいいし好きだけどそれは人としてというかある意味お兄ちゃん的な好きというか!いやとにかく本当にあの夢の通りにならなくてよかった!
私が観覧車のところに辿り着いた時にはもう松田さんはゴンドラに乗りこんじゃっていてみんなは大丈夫だって言うけど本当に心臓に悪くてハラハラしながら観覧車を見つめている間にいつの間にかみんなは犯人を警察に突き出していて「えっ?」と思った頃には本当に全部が終わっていた。
ゴンドラから降りてきた松田さんを見たらもう居ても立ってもいられなくて気が付くと彼に向かって突進してしまっていた。
動いてる、温かい、生きている。やすやすと受け止めてくれた身体からそう感じられて涙が止まらなくて、そしたら松田さんが「可愛い」とか言うからびっくりして見上げたら涙を拭われて、笑顔と手のぬくもりにまた安心して思わずその手にすり寄ってしまったらなんか熱い視線で見下ろされて、こんな時なのにお腹の奥がちょっとうずいちゃったりもしたけどべべべべ別にそんな松田さんのことをそそそそそんな目で見たことなんてないよ?………うん、ないよ?!

「へぇーえ」
「ほぉーお」
「ふぅーん」
「そぉーですかぁ」
「うわぁん、やめてみんなでそんな目で見ないでー」

蛍ちゃんも薬研もぎねも堀川くんも目が怖いです。でも一番怖いのは何も言わずにニコニコしている大魔王様です。
あ、あの、そろそろ事情聴取らしいので参りましょうか、ハイ。









吊り橋効果?にかかった夢主▼
ついに夢がただの夢ではないと認め(ざるを得なくなっ)た。怖いけど松田さんが死ななくてよかったし、誰かの役に立つのならちゃんと向き合わないとなぁ。
雄全開の松田さんに見つめられて思わずキュンとなった。いや松田さんにあんな捕食者みたいな目で見つめられたらどんな女だってそうなるに決まってるぁぁぁ!!照


無事救済されたポリスマン▼
ついに箍が外れ猛獣化した。死ぬかもしれないって時に真っ先に思い出すとかもはやこれは何も言い逃れできないしするつもりもない。認めた途端行動が積極的になるタイプ。高校は卒業したし大丈夫だろ、と捕食する気満々。ていうか今更だがこいつなんで彼氏いないんだろう。うっ、なんか悪寒が…??


吊り橋を爆破したい大魔王▼
ついに面と向かって大魔王と言われて実はちょっとだけ凹んだ。病院の方の爆弾はスコッチに連絡して警察に回収させるように仕組んだ。こういう時の為に記憶消さなかったんだから大いに働けよ。


裏で活躍してたポリスマン▼
リドルから連絡があって吃驚。松田を助けるのは大賛成だ!と持てる力全て使った出来る男。が松田を好きかも知れないと聞いて松田ならいいような、でもやっぱ許せないような。複雑な兄(?)ゴコロ。


病院の爆弾を回収したポリスマン▼
上からの指示で急いで現場へ向かったけど爆弾は既に無力化されていて肩すかしを食らった。後から松田にが現場にいて犯人逮捕に彼女の幼馴染や親戚が関わっていると聞いて松田と一緒に首を捻った。ていうか俺もそっちの担当がよかった……なんか前にもあったよなこんなこと。







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