「学校でクイーンて呼ばれてるんだって?」
「ぶふっ」
2人でご飯当番をしていると不意に落とされた爆弾。え、待ってどこからその情報を?!
内緒って面白そうに笑うお兄ちゃんこと翠川結緯氏は今日もイケメンです。
お兄ちゃんが我が家にやってきてから2週間経った。
今までずっとマグルとして生きてきたらしい彼は最初の頃こそ初めて見るいろんな不思議体験に困惑していたけど、もはやすっかり慣れたようだ。順応性が早い。
(リドルの仕事は魔法界関係だと思っていたのだけど違ったのかな。まぁやっぱり怖いので深くは突っ込めないんだけど。ていうかマグルに魔法の存在教えちゃって大丈夫なのかな?兄だからいいのかな??)
家事や神社の仕事も率先して手伝ってくれるしそれがまた手際がいいし何事もよく気がつくし優しいしかっこいいしけしからん筋肉だし、私はブラコンになりかけている。
「すごいあだ名だなー。まぁ似合ってるけど」
「やめてー!ほんと私的には恥ずかしいんだから」
「そうなのか?ちなみになんでクイーン?」
それはですね、中等部時代、自他ともにキングって認める生徒会長がいましてね、生徒会長がキングなら副会長はクイーンだって理由で呼ばれるようになったんですよ。ただそれだけのことなのですよ。
「副会長だったのか」
「うん、高等部でもやったよー。もう引退したけど」
「すごいんだな」
「んー、私は指名されただけだからそんなにすごくない」
「十分すごいと思うけど。自分でキングって言っちゃう子もすごいな」
「あー、まぁ実際それだけの実力もあったしね」
どんな子なんだって?顔よし頭よし家柄よし、俺様で自信家で全国クラスの男子テニス部200人の頂点を3年間務めてさらには本当に全国1位取っちゃったカリスマイケメンだよ。
「でも景吾の偉いとこはね、恵まれた才能や境遇に甘んじず努力するとこなの!めっちゃ努力家なの!」
「へぇ」
「ほんと見てるこっちが少しは休めって言っちゃうくらいの頑張り屋でね」
「そうか。俺のダチにもそういうやついるわ」
懐かしそうに目を細めるお兄ちゃんはなんだか少しだけ切なげだったので腕にぴとっとくっついた。お兄ちゃんってたまにこういう時あるんだよなぁ。ポーカーフェイスで顔には出ないんだけど、オーラでばればれである。「どうした?」って聞かれたけど「んーなんとなく」と曖昧に答えてお兄ちゃんがぐるぐるかき混ぜる鍋の中をなんとなしに見つめた。人肌って安心するよねってくっついただけだよ。
「本人はそういうの人に見せたがらないけど生徒会でも部活でも大体一緒にいたからわかるんだけどね。あ、その時はテニス部のマネージャーも頼まれてやってたんだ」
「仲いいんだな」
「ん〜、まぁ私途中編入だったからいろいろ気使ってくれて。景吾には一番お世話になったかなぁ。意外と面倒見いいんだよね」
「付き合ってるのか?」
「ぶふっ!つ き あっ て ない。ないない。ファンに殺される」
ファン?ってお兄ちゃんは首を傾げていたけど彼にはファンが大勢いるのである。なんでか公認カップル扱い受けてた気もするけど、実際付き合ったら怖い。気がする。ていうか付き合ってないし。そういうんじゃないし。なんかほんと相方って感じ。
「大体自分で言うのもなんだけど私特殊すぎて彼氏とか作れない」
「…別に、いいんじゃないか?」
「いやいや難しいよー?魔女だってあんまり言えないし、何よりうちの神さまたちが認めてくれないと無理だし大魔王もいるし」
「あー、ハハハ…」
渇いた笑いいただきましたー。わかってくれましたか!
お兄ちゃんがほとんど事情知っちゃってるのだって結構驚きだからね。さすがに私が異世界から来たってことは知らないみたいだけど…
リドルたちがよく許したよなー?いくら兄だからってなー、なんかおかしいよなぁ。ま、怖くて聞けないけど。人生知らなくていいこともいっぱいあるよね、うん。
「まぁ景吾は割とみんなに好かれてたけど」
「た?過去形?」
「あ、今はイギリスに行っちゃってるから」
「へえ、イギリス」
「うん。小学生の時もイギリスにいたらしいんだけど中学だけ日本に帰って来たんだって。私もイギリスから来たからって親近感もあったみたい」
ま、実際はイギリスからじゃなくて異世界から来たんだけどな!
「年末帰ってくるって言ってたからお兄ちゃんにも紹介するねー」
「年末か……そうだな、楽しみにしてるよ」
ん?なんの間かな?あ、お兄ちゃんうちにいるのって今だけだったっけ。でもまぁ、遊びに来てよね!なんなら別にずっといてもいいんだよ?と言ったらよしよし、と頭を撫でられた。
「はクイーンていうよりプリンセスって感じだけどなー」
「え?」
「俺のお姫様だからな」
「ンン゛ッ」
お兄様、どうしてそんないい笑顔でそんな恥ずかしいことをそんな恥ずかしげもなくさらっと言えてしまうんですか驚きだぜ。妹相手にイケメンぷりを発揮しなくていいんですから。そういうのは彼女さんに言ってあげてください。そういえば彼女いなんですか。
「彼女?いないよ」
「えーっ、なんでなんでなんでこんなかっこよくて優しくて家事できていい筋肉でスパダリっぽいのに!」
「(筋肉?)仕事が忙しいから彼女作ってる暇ない」
「今は仕事が恋人かー」
「あとな」
「………お兄ちゃん、ほんとちょっと自重した方がいいと思う」
「え、ごめん?」
妹相手に以下ry
きょとん、とした顔は可愛いけどさ。何が?みたいな顔やめろー。わかってないのに謝るなー。私もよくやるけど。
私ばっかりドキドキしてるみたいで悔しかったので「じゃあ私の彼氏は暫くお兄ちゃんね!」と言ったらすごい嬉しそうだった。なんだろう、私が言うのもなんだけどお兄ちゃん、着々とシスコンに進化(退化?)してきてないかい?やめておいて?シスコンはモテないよ!
十数年ぶりに会った年の離れた妹は可愛いのかな?可愛がってくれるのは嬉しいんだけどなんだかとっても良心がズキズキするから程々でよろしくです。
いい匂いにつられてやって来た御手杵が「お前らほんとに兄妹みたいだな」って言うので腹パンしといた。そういう設定なんだよ!不審がられるようなこと言わないの!
学校から帰ってくると本殿の脇でお兄ちゃんが誰かと話していた。なんだか険しい顔をしているので声を掛けられるような雰囲気ではない。お仕事関係の人だろうか。邪魔しないでおこうとスルーしようとしたけどそれより先にお兄ちゃんが私に気づいて優しく笑った。
はー、今日もうちの兄がかっこいいです。
「おかえり、今日は早かったな」
「ただいまお兄ちゃん」
「お兄ちゃん?!」
お兄ちゃんと話していたお兄さんがびっくりしたように大きな声を出した。そして私とお兄ちゃんを交互に見やる。どうやら彼に妹がいた事を知らなかったらしい。うん、私もひと月前まで自分に兄がいるとは全く知らなかったですよ。
そのお兄さんは灼けた肌にミルクティのような明るい髪が眩しい美形さんだった。やはり類は友を呼ぶのか…ってかこの人の声、マジか。
「妹のだ、可愛いだろ」「え、お前、妹って…」というやりとりからして思っていたより気安そうな間柄っぽい。こんなとこで立ち話してないで中入ってもらったらいいのに。
ていうかお兄ちゃんに可愛いって言われたんですけどすんげー嬉しいんですけど。あのね、お兄ちゃんもかっこいいよ!!
「お友達?家に上がってもらったら?」
「いや、もうすぐ帰るから大丈夫だ。な、ゼロ」
「あ、ああ…」
ゼロ、と呼ばれたお兄さんはまだ困惑げに私とお兄ちゃんを見比べる。
そんなに驚くことなのか。いや、まぁ似てないし、もしかしたら「お前ひとりっ子って言ってなかったけ?」て感じなのかもしれない。目かっぴらいて驚いた顔しても美形は美形だなぁと思いながらこれ以上はお邪魔かな、と小さく頭を下げて家に向かった。
「どういうことだ」
降谷は厳しい目で目の前の男――翠川を見据えた。
ひと月前、組織にNOCであることがばれ、自ら死ぬことを選ぼうとしていた親友。止めようと駆けつけた先で見知らぬ男に目の前で連れ去られてしまい、臍を噛む思いをした。ようやく見つけ出し、この目で無事を確認してどれほどホッとしたことか。
未だにあの夜の詳細は教えてもらえていないが、妹が出来ているとは一体全体何事だ。
「どうも何も、偽装だよ」
「そんなことはわかっている!…あの子は一体何者だ。あの刀の男たちと関係があるのか」
「さっきも言ったが今はそのことについて話せることはない。とにかく、此処は世界一安全だから俺は大丈夫だ」
「っ、お前な!」
俺がどんな思いでいたと思ってるんだ!と憤慨する降谷に翠川は苦笑した。わかっているさ。それだけの付き合いだ。わからないはずがない。もし逆の立場だったら自分も同じように思うだろう。
だがしかし今降谷に真相を話したところで信じてもらえはしないだろう。
話すのは、自分がこの居心地のいい神域を出ることになってからだ。
翠川の頑とした態度に降谷は折れるしかなかった。おそらくこれ以上聞いたところで彼は何も言わないだろう。
湧き上がる怒りを抑えこみ「ぐっ」と小さく呻いた後ハァ〜と大きく息を吐いた幼馴染に翠川はフッと笑った。
「悪いなゼロ」
「今日のところは、勘弁してやる。その代わり次は洗いざらい吐いてもらうからな」
「お手柔らかに頼むよ」
果たしてしかしどこまで話すことができるかな、とその時のことを思って少し胃が痛くなった。
こいつ結構凶暴だからな、暴れないといいけど…
捜査は足、と何十件と神社を回ってようやくスコッチを見つけられてホッとした降谷さん▼
無事でほんっっっっっとうによかったけどいつの間にあんな可愛い妹ゲットしたんだ羨ましいとか思ってない。なんだあの甘ったるい笑顔は!可愛いだろってシスコンか!ドヤ顔が心底ムカつく!羨ましいとか思ってないんだからな!警察戻って神社のこと調べるけどアクセス権がないとかで全然詳しく探れなかった。なんなんだこの神社は?!
まさか見つけてくるとは思わなかった翠川さん▼
さすがゼロだな。心配かけて本当に悪いと思ってる。いろいろ話せないのも申し訳ないと思ってる。でも俺の姫マジ可愛いだろ羨ましいだろドヤァ。ちなみに松田と萩原も元気そうだったぞ。ところで情報の出所はみつかったか?
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