「邪魔するぞ、主」
「どうぞ」
ドッキリをしかけられるかもとドキドキしたけど、意外にも普通に鶴丸さんはやって来た。まぁPCモニターからにょきっと現れる時点で驚きだしこの瞬間は毎回ドキッとするんだけど。
鶴丸国永は白かった。全体的に、白かった。そして美しい。三日月さんとは違う美形ですが、とっても美形です。色合いからしてとてもこの世のものとは思えない、儚げな美しさが彼にはあった。
はわー、見惚れる。まつげも白い。長い。琥珀色の瞳もキラキラして綺麗。背高いんだなぁ。太刀だもんなぁ。とほけっと見上げていたら、鶴丸さんは私を見下ろしてその風貌からはちょっと想像つかなかったような、ニッという屈託ない笑みを浮かべた。
「うん、別嬪だな」
「?!い、いきなりなんですか!」
「驚いたか?はは、今のは別に驚かせるつもりはなかったんだが」
美形に唐突に別嬪だとか褒められたらびっくりしますよ!いやむしろ別品なのはあなたですよ!
「俺が?まあなぁ。そのせいで俺はいろんなところを転々とすることになったからなぁ。主も気をつけろよ」
「何をですか。と、とにかく立ちっぱなしもなんなのでどうぞ座ってください」
素直に座った鶴丸さんは今度は興味深げに室内をきょろきょろ見回している。掃除はしてあるけど、あんまり見られるとなんとなく恥ずかしくなる。そもそも家に人をほとんど呼ばないから、うちに他人がいるってすごく違和感なんだよね。そわそわするっていうか。
「主は此処で暮らしているのか?」
「そうですよ」
「1人でか?」
「はい。先に言っておきますが結婚してないので人妻ではありませんよ」
「はははっ、なんだなんだ。俺は包丁のように人妻が好きという癖は持っていないぜ」
「知ってますけど、さっき三日月さんに聞かれたので、聞かれる前に答えておこうかなって思って」
私の言い分が面白かったのか、鶴丸さんはけらけらと笑った。なんか、すごい美形なんだけど親しみやすいかも。リアクションもいちいち大きくて楽しそうだし、こっちまでなんとなくつられてしまう。
「そうかそうか独り身か。…1人で暮らすのは寂しくないか?」
「え」
「いや何、本丸は大所帯だからな。なんというかまぁ賑やかだ。でも此処は静かなもんだから、ちいと心配になったのさ」
「…そうですね、たまに寂しくなります」
だからとうらぶやってるんですよ。みんなに萌というパワーをもらいに行ってるんですよ。脳内補完で癒されに行ってたんですよ。ぐすん、なりたいよリア充。
「ああ、変なことを聞いてすまないな。まぁなんだ、これからは寂しくなったら俺たちがいるからな」
「そうですね、今までも十分お世話になってましたけど、今度は物理的にお世話になれますね」
鶴丸さんは物理的?と首をかしげてたけど何か合点がいったのか、またニッと笑って立ち上がった。むむ、これはまさか。と思ってたらあっという間に目の前に。
「物理的ってのは、こういうことだな!」
「ひゃあ!ちょっ」
「はははっ、驚いたか」
わー、ある意味予想通りだけどいきなりぎゅってされたら驚くわー!確かに物理的だけどこういう意味ではないんだけど…むむっ、意外にもいい筋肉!細いと思ってたし実際細いけどちゃんと筋肉質ですよ!ってちょっと、二の腕揉むのやめてください!
「おお、主は柔らかいな。なんだこの腕は。ふにふにだな!」
「ちょ、揉みすぎでしょ」
「いや、この感触なかなかないぞ。最高だ」
「だからってそんなにされたら痛いです!」
「ああ、すまんすまん。うーん、これくらいで痛いのか。確かに細いしなぁ。すぐ折れちまいそうだ」
いやー、岩融にだったら折られそうだけど、鶴丸さんだったら大丈夫じゃないかな。いや、痛いのは痛いだろうけど。
「む、君は少し俺を見くびっているな」
「そんなつもりはないですけど…でも鶴丸さん細いし」
「聞き捨てならないな。これでも君くらいは軽々持ち上げられるぜ」
「んー、まあ乙女の願望的にはそれくらいはしてもらいたいってええええ!」
「そーら、軽い軽い」
待ってえええ!お、お姫様だっことか!それは小狐さんの専売特許…てわけでもないけどお姫様だっこといえばあなたではないでしょ!!ちょ、マジほんと軽々だけど!私くらい抱えられてほしい願望はあったけどだからってほんとにしないでほしいよ恥ずかしい!
「君、ちゃんと食べているか?軽すぎじゃないか?」
「食べてます!あのもう降ろして」
「そうだ。光坊が今昼飯作ってるから、後で持ってこさせような」
「えっ、燭台切さんのご飯食べれるの」
「おう、光坊の作る飯はうまいぞ。主に食べてもらえるならあいつも喜ぶだろ。決まりだな」
それはちょっと嬉しいです。ていうかやっぱり燭台切さんて料理うまいんだ。むしろ習おうかな。ていうか割とガチで心配されてるなこれは。むしろあなたが少し太った方がいいのではないかな。でも刀剣男士って太ったり痩せたりするのかな?食べるんだからあり得る?でも歳とったりはないだろうしそのあたり謎ですね。そして早く降ろしてください。
「俺もなかなかだろう?」
「はい、私が悪かったですごめんなさい」
「何、わかってくれればいいんだ。ほらよっと」
そう言ってソファに降ろしてくれたのだけど降ろし方がなんというかすごい優しくて、もしかしてさっきの話の流れでちゃんと優しく扱ってくれたのかな、何このイケメン!てきゅんとしちゃったんだけどどうしましょうほんとイケメンすぎませんか鶴丸さん。
「ん?なんだ?さては俺に見惚れてるな?」
「うん。鶴丸さん優しい。かっこいい。イケメンすぎて驚いてる」
「え、あー、それ本気で思ってるか?」
「当たり前です!」
「そ、そうか。君はなんというか、素直な性質だなぁ」
え、やだ何々、自分から言っておいて照れてるなこれは。これはあれですね。自分からはぐいぐい押すけど押されるのは弱いタイプですね。ちょ、美形で親しみやすくて中身もイケメンでしかもかわいいとかチート過ぎませんかね。ごちそうさまです。照れを隠すためか勢いをつけて隣に座った鶴丸さんに、心の中で合掌。
「まったく驚きだぜ」
「何がです?」
「主だ。やっぱりいろいろ想像するだろう?いい意味で予想を裏切ってくれたよ」
「そうですか。驚きの結果をもたらすことができてよかったです」
「あっはっは、こりゃ一本取られたな。なあ、君。…君に会えて本当に嬉しいよ。これからもよろしくな」
さっきまでの照れと一瞬前の朗らかな笑いはどこに吹っ飛ばされたのか、美しい微笑みを浮かべながら片腕はソファの背もたれに肘をついて頬杖をつきながら、もう一方の手で私の頬にかかる髪を耳にかけてくる鶴丸さん。やだ…何この名画を切り取ったかのような構図。もう惚れちゃう。どうしよう鶴丸さんのばか。そんな優しい目で見ないでよ!うっかりほれてまうやろ!!最後についでとばかりに頬を撫でられて、また顔から火が出るかと思いました。恐るべしは天下五剣というより平安生まれかもしれない。そんな私の心中を知ってか知らずか、鶴丸さんはまた屈託なくニッと笑った。
ギャップの宝庫。
(そして一人ぼっちの寂しさを誰よりもわかって心配してくれる)