「…本体がつかえました」
「そ、のようですね」
太郎さんが、その体躯を持て余していました。えーと、本体置いてきてもいいんじゃないですかね?いらっしゃいませ太郎太刀さん。うわ、さすが、ひょー、大きいですね。迫力美人!でもさっきのあれで、なんとなく和んだ。心なしか目元が赤いっぽいし(化粧じゃないよ)、照れてるのかもしれない。
「お見苦しいところをお見せしました」
「いえ、すみません通りづらくて。あの、どうぞお掛けください」
「恐れ入りいます」
「…」
「…」
会話が途絶えました。話題。えーと、ひとまず、本丸での暮らしはいかがですか。
「そうですね。特に問題なく過ごしておりますが」
「それは良かった。でも何か悩みとかあれば教えてくださいね」
「悩み…ですか」
「何かあります?」
「いえ、特には。しかし不思議なものだと思いまして」
不思議?何がでしょうか。首をかしげると、太郎さんにじっと見つめられた。出たー。太郎太刀の“みつめる”攻撃!審神者はひるんで技が出せない!てな感じです(ポケ○ンわからない人ごめんなさい)。太郎さんの金色の瞳に吸い込まれそうになります。綺麗。
「いえ、刀であった時分には悩みなど考えたこともなかったので」
「ああ、なるほど」
「貴女こそ如何ですか」
「え?」
「現世は何かと穢れが溜まりやすいですし、悩みの一つや二つあるでしょう。貴女は…どうも溜め込みやすい性質のようですし」
「えっっ」
それは、えーと、どういうことで。単純に、悩みを溜め込みやすいっていうそのまんまの意味ですか?それとも、まさか。
「祓って差し上げたいですが、私はこの通り大き過ぎますので。御幣をお持ちすればよかったのですが…後ほど石切丸殿にお願いしておきましょう」
「は、ハイ、よろしくお願いします」
ひええええ、やっぱりそういうやつー!まじか…ちょ、まじか。太郎さんがあまりに淡々としているので実感が湧きにくいけど。ううう、そうなのかぁ。私ってそういう体質だったのかぁ。今まで気にしたことなかったけどなぁ。
「そうですね。強力な光も感じますので、守られてはいます。が、全く影響がないわけではありません」
「は、はぁ。でもそれって…あー、つまり穢れとかって、悩みにも関係があるものなんですか?」
「心身というのは繋がっていますからね」
わかるようなわからないような。まぁ体調悪い時って精神的にも落ち込むし、落ち込んでる時は体が重くなるし、そういうことだよね。確かに悩みの一つや二つや三つや四つあります。
「貴女は…他人の迷惑になるからと悩みや弱音を吐き出さず溜め込むことが多くありませんか」
「うわー、なんでわかるんですか」
「吐き出す場がなければ、流れが滞り淀みます。昇華できれば違いますが、いきなりは難しいでしょう。私でよろしければ、お聞きしますから」
「太郎さん…」
優しい…!でも小娘の他愛ない愚痴なんて聞いて神威下げちゃったりしないですか?!
「貴女は主ですから。お力になれるのなら、神威も高まることでしょう」
「…本当ですか?」
太郎さんはこくりと頷いた。逆に高まるってことあるんだろうか?でも、悩みを聞いてくれるというのなら、相談してみようかな。神様に相談なんて、どきどきする。でもすんごくご利益?ありそうな気がする!
「ありがとうございます。じゃあ、あの、さっそくいいですか?」
「はい、どうぞ」
「恋愛のことなんですけど」
「恋愛は専門外ですので、他の者にお願いします」
即答!あ、うん、そうね、太郎さんそういうこと疎そうだもんね。悪かった。私が悪かった。太郎さんの優しさに舞い上がってそこまでちゃんと考えなかった。そうよね、いくら神様とはいえ得手不得手というものがあるよねきっと。と反省していたら太郎さんは代替案を出してくださいました。
「聞くと言っておきながらお役に立てずすみません。そうですね、次郎なんか如何でしょう。あれは私よりも現世に近いですから、そういったものもわかるでしょう」
「わ、わかりました。こちらこそすみません。あの、では健康面のことでよろしいですか」
「はい、どうぞ」
「最近寝ても全然疲れが取れなくてずっとだるいんですけど、どうしたらよいですかね」
「それは石切丸殿に今の憑きものを祓っていただければ改善するかと思います」
「あ、そうですか」
おや、あっさりと悩み解決ですね。まぁそんなもんだよね。意外とそんなもんなのよね、悩みって。んー、しかし穢れが先か悩みが先か。これもまた相乗効果なのかね。ありえるね。
「他には何かありませんか」
「え?んーと、悩みとはちょっと違うんですけど、参考までにお聞きしたいんですけど。太郎さんが素敵だなぁと思う女性ってどんな女性ですか?」
結局恋愛絡みかと言うなかれ。割と切実だわこっちは!それに太郎さんの好みのタイプってどんなか気になるよね!いくら恋愛に疎くても、それくらいはあるかもしれない。と思ったんだけど。
「はぁ。あまり女性との接点がないので、よくわかりません」
「え、あ、そうですか」
「…ですが、そうですね。主は素敵な女性だと思います」
「えっ?!」
ちょ、や、待って。なんの準備もできてなかった。から、破壊力ばつぐんなんですけど?太郎さん、どうしてそう言う時だけ微笑浮かべるんです?美しすぎますよ?今までずっと真顔だったくせにどうして、もう、ほんとはわかっててやってるんじゃないですかね??よくわからないと言っておきながら、わかってるんじゃないですかねええ??
「主、如何されました。顔が赤いようですが、体調が悪化しましたか」
「違います。だいじょぶです。太郎さんがびっくりするようなこと言うからです」
「はぁ。私のせいですか。申し訳ありません」
「い、いえ!すみません八つ当たりです!太郎さんに素敵って言われて恥ずかしかっただけです!」
「そうですか」
え、ちょっと、なんでそこで顔を覗き込んでくるんですか。え?恥ずかしがる姿もなかなか…?あの、太郎さん、意外と俗っぽいですね!この天然たらし!
「参考になりましたか」
「あ、あんまり…」
「そうですか。申し訳ありません」
いえ、謝らないでください。そうです。私が悪いんですから。太郎さんに恋愛系の話を振るのやめよう。自爆する。


現世にだいぶ近づいています。