「宗三さん、はじめまして」
「…ええ、初めまして。貴女が主ですか。ふうん」
うわーうわー、傾国の美じょ…うぶですよ!いやいや美女なんて言ってません。美丈夫です。美男子です。さすがです。少し冷ややかな目で見下ろされてうっかり新しい世界に足を踏み入れそうですよ!
「貴女は…」
「はい」
「僕を戦わせたくないのかと思っていました」
「はい?」
えーと、どういうことで。確かにあんまり出陣させてなかったけど…あ、それでか。最近連隊戦や遠征には出してるし、そういうことですか。いやあ、別に戦わせたくなかったというわけではなく、単にレベル上げしてなくてすぐ怪我してくるから放置していた…なんて口が裂けても言えないなうん。
「えっと、宗三さんは戦いたいという意思でいいんですよね」
「は?」
「あ、兼さんには怒られたんですけど、やっぱり意思確認したいというか。貴方たちの存在意義を否定するわけじゃないんです。でも、戦いたくないなら戦わなくていいって思ってて」
「待ってください。貴女は何を言っているんですか」
宗三が困惑気に見下ろしている。そうだよね、いきなりそんなまくしたてられてもだよね。
「すみません急に」
「…貴女は馬鹿ですか」
「え」
「そんなこと気にせず、貴女の使いたいようにすればいいんですよ。貴女は主で、僕たちは刀なんですから」
「…みんなそういうこと言うけどさぁ、でもそれじゃおかしいんだよ」
「何がです」
「貴方たちが顕現されたこと。貴方たちに個性があること、心があること、全部おかしくなる。ただ使われるだけなら、そんなの必要ないんだもん」
「……」
「まあ、私のエゴって言われたらそれまでなんだけど。聞いてみたいの。特に宗三は、そういうことちょいちょい言うじゃない」
「…別に、戦うことは嫌いではないですよ。飾られるだけより、よっぽどマシです」
「そっか。じゃあ、これからも出陣して頂きますのでよろしくお願いします。」
「…おかしな人ですね」
宗三が口元を袖で隠しながらそっぽを向く。調子が狂うと言わんばかりだけど、私にはなんとなく照れているように見えて可愛かった。
「…何笑っているんです」
「いえ、宗三さん綺麗だなと思って」
「…」
急に顎を掴まれて上を向かされる。え、何、顎クイ?!しかも顔近いよ!う、美しいお顔が間近に!!とテンパった私を見下ろして宗三はフッと笑う。
「貴女もなかなか可愛らしい顔をしているじゃないですか」
「えっっっ」
「中途半端な敬語はやめてください。貴女は主なんですから、好きにすればいいんですよ」
「う、うん」
一応、気に入ってくれたのかな。わかりづらいんだよなこの人は。ツンデレだな。ツンツンツンデレってとこだな。ところでいつまで顎掴んでるんですか。若干首も顎も痛いんですけど。せめてもうちょっと優しく掴んでくれませんかね?てか指の力すごくない?細身でもやっぱり刀剣男士かぁ。
「主は此処で一人でお住まいなんですか」
「え?うん」
「そうですか…まぁ、せいぜいお気をつけなさい」
「??」
なんのことかわからなくてちょいと首を捻ったら、ハァと大きく溜息をつかれた。ええー、なんで?!
「貴女は本当に馬鹿なんですね」
「ひどい」
「僕たちは刀ですけど、一応男なんですからね」
そう言って空いている左手で腰をぐっと引き寄せられた。え、なに、どういうことなの、何がおこっているの。体が密着している。思っていた以上に引き締まっている宗三の身体の感触を認識した瞬間、ぼっと顔が熱くなった。ていうか全身熱い。
「宗三?!」
「全く警戒心が足りなくて困りますね」
「あんまり困ってないよね?!」
にっこりと麗しい笑みを浮かべるだけな宗三はどことなく楽しそうだ。わたしゃちっとも楽しくないが。抵抗して腕で胸辺りを押し返すとあっさり宗三は離れた。ハアハア、心臓に悪い。
「何を気をつけなければならないか、わかりましたか?」
「ハイ、ワカリマシタ」
でもどうやって気をつけたらいいのかはわかりません。どうしたらよいですかせんせい。…無論誰の返事もない。いや、鯰尾くんが「まぁなんとかなりますって!」と笑顔で答えてくれた。勿論私の脳内で。
「ああ、あと、小夜が貴女が優しそうでよかったと喜んでいましたよ。よかったですね」
「う?」
「あの子はあまり多くを語りませんが、江雪左文字が来ることを望んでいます。いくら馬鹿でもお優しい主殿なら、この意味はわかりますね?」
「は、ハイ」
いや、江雪さん待ってるの私もだから。全然来てくれないんだから。鍛刀めっちゃ江雪さん来るようにレシピまわしてんだから。レア4でいないの江雪さんだけなんだから。全くどんだけ戦いたくないんだって…あ、戦いたくないんか。どうしよ、江雪さんのことを考えると顕現しない方がいいのでは…と思い至った時、びしっとデコピンかまされた。
「あだっ、今度は何?」
「全く貴女は、本当の馬鹿ですね。…貴女が言ったんでしょう、戦いたくないなら戦わなくていいと。江雪左文字が戦いたくないと言うのなら、戦わせなければいいのです」
「そ、そっか!」
ぱっと声を上げた私に、宗三は呆れたような、けれどしょうがないなぁというような笑顔を漏らした。むむ、そんな笑みでも美しいとは。馬鹿ばか言われるのは解せないが、彼なりの親愛の表し方なのかもしれない…たぶん。蔑まれているわけではなさそうなのでそう思いたい。
「宗三は江雪さんに会いたい?」
「さあ、別に思ったことはありませんね」
「え、そうなの?」
「小夜がいますし…それに、主とも会えましたしね」
……やっぱりツンツンツンツンデレだ。いや、ようやくわかりやすいデレにへなっと笑った私にまたもやデコピンを喰らわせたことに鑑みるとツンツンツンデレツンかな…痛い…もう少し仲良くなったらデレが増えるかな…増やしていきたいな…



いずれツンデレデレデレツンデレに進化する。