「小夜くん、初めまして」
「はじめまして……あなたが、主…」
「うん。あの、小夜くん、いつもありがとう。お世話になってます」
「別に…世話してないけど」
……………あ、うん。話続かないね、予想はできてたけどね。
「あ、の…お菓子でもどうかな?よかったらこっち座ってゆっくり…」
「ありがとう。でも、もう帰るよ」
「えっ」
も、もしかして、あ、会いたくなかったとか、こんなとこいつまでもいたくないとか思ってたり…?あー、あーうん、あれだよね、実は小夜くんあんまり出陣させてないっていうか、一度うっかり育ててた小夜くんを錬結しちゃったことあって、ただでさえ短刀は連隊戦本腰入れるまで全然レベル上げしてなかったし小夜くんは特に新しくお迎えしてから全然出陣させてなかったしで…仕方ないよね、きっと好感度低いよね。うう。
「ご、ごめんね、早く帰りたい、ね?」
「?どうして謝るの。そうじゃないよ。三日月さんが、主に待ちくたびれたって伝えてって」
「え、三日月さんが?」
「そう。だから、次…早く三日月さん呼んであげて」
…いい子!なんていい子なの小夜くん!おねえさん邪推しちゃってごめんね!ていうかおじいちゃん何言ってるんだ!まだ30分と待たせてないと思うけどね!ごめんね!
「う、うん。わかった。次は三日月さん呼ぶね。でも、もう少し小夜くんとお話ししたいんだけど、いいかな」
「…うん」
こくりと頷いた小夜くんは今度は椅子に座ってくれた。お菓子を勧めると素直に受け取ってくれて、それだけで嬉しくなる。よかった、嫌われているわけではないみたい。
「それで、何を話すの?」
「えっと、そうだな…本丸での生活はどう?何か、私に言いたいこととかない?」
「言いたいこと…あなたには、復讐したい相手はいる?」
「え、ああ、復讐ね、うん。いないかな。もう二度と会いたくない人くらいはいるけど」
「そう…じゃあ、どうして主は戦うの?」
「え?あー、そうね…」
答えにくい質問キター。戦ってないもんなぁ。こっちはゲーム感覚だしっていうかゲームなんだし。まずい。これはどう答えたらいいんだろう。
「んと、みんなに会いたいから、かな」
「え?」
「ほら、えっと、刀剣男士のみんなに会うにはそれしかないから」
「…そう」
まさか本当にこうして対面できるようになるとは思わなかったけどね。他に何かある?と聞いたら、すごくまっすぐ見つめられた。視線に重さなんてないけど、意思の強い鋭い視線はずしっとした重みを感じる。短刀の中でも小さい体なのに、すごい圧だ。これが刀剣男士か。
「…主、ぼくはもっと戦に出たい」
「えっ」
「それが僕の存在理由だから」
「そ、っか…うん、わかった。ごめんね、ずっとお休みさせてて」
「ううん。……主は…優しいんだね」
おや?小夜くんちょっとだけ笑った…?はわぁ、そんな顔もするんじゃん。よし、ここはいっちょご要望にお応えして連隊戦がんばってもらっちゃおうかな!そう言ったら至極真面目な顔で「わかった」と頷かれた。小夜くんてピュアなんだな~。だからこそ、復讐にも一途なんだろな~。むむむ、ジレンマですな。
「主、お菓子ごちそうさま。僕はもういいから、そろそろ三日月さんに交代してあげて」
「あ、うん。小夜くんて三日月さんと仲いいの?」
「べつに、普通じゃないかな…向こうが何かと声かけてくるけど」
「へえー」
「…あんなにそわそわしてる三日月さんは初めて見る。よっぽど主に会えるのが嬉しいんだね」
「そ、そうなんだ」
な、なんか期待値高いんじゃないのそれ。がっかりされたりしたらどうしよ…緊張してきた。
「主は三日月さんが怖いの」
「怖くはないよ。緊張するけど」
「ふうん…何かされたら、言ってね。僕が復讐してあげる」
うん、大丈夫。ありがとう。くりっとした目がらんらんと輝き始めて、よっぽどのことがない限りは小夜くんには言わないようにしようと誓ったのである。
復讐はもうさせたくないね。