「鯰尾藤四郎です!わーっ、主ほんと美人さんですね!」
「え、そ、そう?ありがとう」
「あっはは、照れてます?可愛い~」
「う、鯰尾くん、からかってる?」
「そんなことないですよ!ひどいなぁ、本心ですよ?」
こう矢継ぎ早に言われると、恥ずかしい。ニコニコ笑う鯰尾くんの方がよっぽど可愛いと思うんですけど。
「俺と背丈同じくらいですね」
「ああうん、そうだね」
「でも細いし小さいし、女の子なんですね~」
「女の子って年じゃないけどね~」
「そうなんですか?若く見えますけど」
あら~ありがとう。て、待って顔近い!覗きこまないで至近距離で見るといろいろごまかしてるのバレるからっ!しかし鯰尾くんまつげ長いっ、髪キレイっ、女の子みたいなのはそっちだよ~。…ちょっと、私の服着てみませんか。
「ええっ、嫌ですよ。そういうのは乱でやってください。俺そういう趣味ないし」
「ええ~」
「あっ、逆に俺の服着てみてくださいよ!」
「えっ、それはちょっと興味ある!」
「おっ、いいですね~!じゃあ、予備の服持ってくるんで待っててくださ~い」
そう言うが早いか、鯰尾くんは本丸へと戻っていった。おやおやさすが脇差、早いですこと。そしてあっという間に戻ってきた彼の手には今着ている服と同じもの。わあ、ちょっとこれはテンション上がりますね。
「着替えてくるね」
「お手伝いしましょうか?」
「大丈夫です」
ニコッと邪気のない笑みを浮かべるけど、さすがにそれはない。ていうかからかってるよね!ちぇーとか言いながら笑ってるもんね。鯰尾くんを置いて、寝室へ行って着替える。うおー、コスプレって初めてする。いやこれはコスプレっていうか彼衣装というものでわ。わわわ、鯰尾くんは彼じゃないけど、何となく照れる。若干落ちる肩の部分とか、ベルトでぎゅっと締めないと落ちちゃう腰周りとか、長い裾とか、体格の差がまざまざと突きつけられて照れくささが倍増した。今更ながら見せるのが気恥ずかしい。けど、出て行かないわけにもいくまい。
「あの~着替えてみたけど」
「おっ、早く見せてください!」
顔だけドアから出してみても、催促されるだけだった。さもありなん。覚悟を決めて部屋から出る。少しうつむきがちになってしまったのは許してほしい。けれどすぐに「わあ」と嬉しそうな声が聞こえたので顔を上げたら、彼は喜色満面の笑みを浮かべていた。お、と思った瞬間には手を引かれてリビングの広いところまで連れてこられる。両手を握られたまま、上から下までしげしげと見つめられて恥ずかしさに固まるしかない。
「わあ~すごい、似合ってますよ!あは、でも肩とか袖とかやっぱり少し余りますね」
「う、うん。腕も脚も長いんだね!いいなあ」
照れを誤魔化すためにあえておどけたことを言ったのに、鯰尾くんは少々うっとりとした恍惚の表情を浮かべているものだから、顔の熱がさらに上がった気がした。ちょ、なんつー表情しているんですか君は!なんだかとっても変な気分になっちゃうじゃないか!
「うん、すっごい可愛いです。ああ~、独り占めしたいけど、誰かにも見せたい!ねえねえ、これ骨喰にも見せてくださいよ!俺の次でしょ?」
「えっ、そうだけど…」
この格好でお出迎えするの?恥ずかしいんですけど。ていうか、骨喰くん反応してくれるかな?そこも微妙そうなんですけど。
「いいでしょう?俺の服着てる可愛い主さん自慢したいんです!」
「う、うう~ん、骨喰くんだけだよね?」
「はい!骨喰だけです!他は勿体ないから見せません!」
そのあれもどうかと思うけど、まぁ、ばみくんだけならいいか。それこそスルーしてくれそうな気もするし。
「わかった、それなら」
「やった!あ、主ネクタイ曲がってますよ」
「え、本当?」
「はい、これでよし。うん、お揃い…すっごくいい。ねえカメラないんですか?一枚記念に撮っておいてくださいよ」
「うん、いいけど」
それは私もちょっと思ってた。こんな機会ないしね。照れてばかりでも勿体無い。屈託ない笑顔に戻った鯰尾くんに少しほっとしたし、折角だから一緒に写ろう!と言ったら最初からそのつもりだと言われた。あ、うん、そうね。
「博多が今あっちで張り切って写真撮りまくってますよ」
「そっかそっか。楽しんでくれてるようで何より」
「この写真大切にとっておいてくださいね!そんでまた見せてくださいね!」
プリントしなくていいのかなと思ったけど、誰かに見られたら嫌だからいいんだそうだ。それは私もちょっと嫌だな…
「こーんな可愛い主さんは、ちゃんと俺の目に焼き付けておけばそれでいいんです」
「そ、そうですか」
「はい!主さんとの思い出ができて嬉しいな~」
「うん…またいっぱい作れるといいね。ううん、作ろうね!」
はい!と元気よく頷いた拍子に彼のトレードマーク(?)の前髪もぴょんこと跳ねて、なんとなくおかしくなって笑ってしまった。
「主さんがいっぱい笑顔になれるような思い出、作っていきましょうね」



思い出はこれからたくさん作るんだ。