「山姥切さん、はじめまして」
「ああ」
うわー、ボロ布を纏っていると言えど、やっぱり綺麗な顔してるなぁ。ああ、でも綺麗とか言うと怒られるんだろうな。ああ、でもやっぱりかっこいいよまんばくん。正統派美青年というか、一期さんがいるから王子枠はつい一期さんて思っちゃうけど外見だけで言ったらまんばくんが一番“女子が憧れる王子様”って感じかもしれない。
「…あんまり見るな」
「あ」
しげしげと見上げていたからか、ぷいと顔を逸らされてしまった。機嫌を損ねちゃったかな。
「ご、ごめんなさい。会えて嬉しくて、つい」
「…俺は写しだ。アンタが嬉しがるほどの価値はない」
「そんなことないよ!」
「え…」
「あ、大きな声出して、ごめん。でも、うん…いい機会だから言うけどね、まんばくんは確かに写しかもしれないけど、いい刀に変わりはないよ」
「そんなことは」
「きっと多くの人がそう思ってるよ!自分だって、国広の傑作なんだって言ってたじゃない。それに自信を持っていいんだよ。私も、貴方に価値がないとは思わない…ねぇ、お願いだから、貴方が今まで存在してきた時間とか、関わってきた人の想いとか、否定しないで」
「今まで存在してきた時間?想い?」
「まんばくんはさ、ずっと、何百年ていう長い間存在し続けている。それってすごいことだよ。尊いことだよ。たくさんの人が、まんばくんを後世に残したいって思ってた証拠なんだよ。本当に価値のないものだったら、そんなに長い間存在し続けられるはずないんだよ。だから価値がないなんて言わないで」
「…」
「それに私はまんばくんに会えて嬉しいし、こうして話せることはもっと嬉しい。まんばくんと出会ってからもうすぐ2年だけど、この期間が価値のないものだとは到底思えない。…思いたくないよ」
「俺、は…」
言いかけてまんばくんは黙り込んでしまった。うーん、言いたいこと言って私はすっきりしてしまったけど、悩ませちゃったかな。まあ、彼はいつでも悩みの最中なんだろうけども。
「…ねえ、まんばくんの好きなことって何?」
「は?」
「うーん、例えば…あ、光忠さんの作るごはんてどう?美味しい?」
「え、あ、ああ。そうだな」
いきなり何を言いだすんだというような目で見られるけど、無視して話を続けます。
「じゃあ、歌仙のは?」
「あいつが作るのも美味い…と思う」
「そっか!じゃあ、2人の料理は好きだよね?」
「ああ…そう、だな」
「うん!他には…あ、動物は?可愛いと思ったりする?」
「悪くはない、と思っているが」
うん、その感じだと嫌いじゃないんだな。よかった。ちゃんとあるじゃん、好きなもの。
「そういうさ、ちょっとしたことでいいから、好きなものみつけて、増やしていけばいいと思うよ。それで、好きなことたくさんしたらいいの。そうしたら、一分一秒が大切になるし、きっと、生きてることが愛おしくなるよ」
「生きることが、愛おしい…」
「なんてさ~私も好きなことみつけるの必死だよ~。必死っていうのも変だけど。でもさ、生きてるなら、せっかくなら楽しく生きたいじゃん?」
「楽しく、生きる…写しの俺にそんな資格があるのか?」
「んもー、だから写しとか…いや、今はいいや。資格なんて必要ないよ!でも強いて言うなら、生きていることこそが、その資格なのかな。だから、まんばくんはもう資格を持ってまーす」
おどけて胸を張って言ってみれば、ふっとまんばくんが笑った。わ、笑った…かっこいい…王子…
「あんたは、眩しいな」
「え、え?」
「あんたの刀でいれば、俺は…もしかしたら、変われるのかもしれない」
「それって、変わりたいって思ってるってことだよね。変わりたいという思いがあるんなら、絶対変われる。大丈夫!」
つい熱が入って興奮気味に詰め寄ったらちょっと体引かれた。うわ、引かれた…ごめん、確かに鼻息荒かったかも…でもお願いだから引かないでくれるとありがたい。
「あ、あんまり近寄るな」
「ごめん」
「いや…」
ん?なんか顔赤い?下から見上げてると案外表情は見やすいな。これ逆にまんばくんより背の高い人は本当に顔とか見えないんだろうな。身長低くてよかったかも。じっと見つめられていることに気づいたまんばくんはサッと布を手で引き下げた。あ、ごめん。学習しよーよ私…
「え、えと、一緒に楽しい時間増やしていこうね」
「…ああ」
こっくり頷いたまんばくんを見て、素直な刀なんだなぁと思った。ピュアだからこそ、写しのこと気にしちゃうし、いろんな謂れを真に受けちゃうんだろうな。少しでも、自分を認めていけるようにお手伝いできたら嬉しいな。
自信を持つって言うが易し、だけどね。