「前田藤四郎です。お会いできて光栄です、主君」
「いらっしゃい前田くん。さあさあどうぞこちらに」
「は、はい。失礼します」
前田くんは少し緊張した面持ちで、勧められるがままに椅子に座った。お行儀よく手と足を揃えて座る様は品があって、おかっぱ頭と相まっていいところのお坊ちゃんて感じである。あー、かわいい。
「緊張してるかな」
「いえ…あの、はい、少し。すみません」
「謝らないで!初対面だもん。緊張するよね」
「えっ、主君も緊張されるんですか?」
「するよー。ちゃんと主って呼んでくれるかなぁとか、思ってたのと違うってがっかりされたらどうしようかなぁとか心配だし」
「そんな!主君は主君です!がっかりなんてしませんし、むしろ思っていた以上に素敵な方で恐縮しているのです!」
「あ、ありがとう」
すごい勢いで力説されてしまった。普通に嬉しいです。
「前田くん、ちょっと頼りない審神者だけど、これからもよろしくお願いします」
「こっ、こちらこそ末永くよろしくお願いします!」
「うん。ふふっ」
「な、なんでしょう」
「ううん、かわいいなーって思って」
頬を上気させながら一生懸命な前田くん。ぐうかわ以外の何ものでもないよね。将来子どもできたらこんな子に育てたい。
「そんな…僕よりも主君の方が…」
「え?」
「いえ、なんでもありません」
「そう?あ、そうだ、前田くん連隊戦でめきめきレベル上がってるね~。連日連戦ありがとうね~」
「お役に立てていますでしょうか」
「もちろんだよ!むしろこき使いまくってごめんね。疲れたら早めに意思表示するんだよ」
疲労表示出たら休ませるようにしてるけど、なんとなくだけど粟田口のみんなって無理しそうなイメージだもんな。あ、薬研に言うの忘れた。考えてみたら薬研て全然疲労マークつかない気がするなぁ。本当は数値とかシステム上決まってるはずだけど、個体差とかあるのかな。よくわからん。桜舞うやつもいまいちなんなのかわかってない私は今一度システムを勉強すべきかもしれない。てきとーに遊んでるのバレバレだな…でもまぁとりあえず。
「薬研にも言っておいて!無理は禁物って!」
「わ、わかりました。伝えておきます」
がしっと肩を掴む私に前田くんは少し驚いたようだ。ごめん。でもすぐに「主君はお優しいですね」と笑った。はぁ、かわいい。
「主君こそ、無理をされていませんか?」
「え?」
「今回はその、いつも以上にがんばっておられる様子なので」
心配された~。嬉しい~。前田くんに労わってもらえるなら審神者もっとがんばれる~。
「だいじょうぶだよ!みんなもがんばってるもんね!一緒にがんばろうね!」
「一緒に…はい!そうですね!」
ぱあああとさらに笑顔になった前田くんをこのままうちの子にしたくなりましたが我慢した私を誰か褒めてください。
「そうだ、主君にお土産があるのでした」
「お土産?」
「はい。こちらです」
そう言って前田くんが取り出したのは、瑞々しく赤い、宝石のような果物。
「わ、立派な苺だね!どうしたのこれ」
「本丸で育てているんです。今日初収穫だったので、主君もよろしければと思いまして。苺はお好きですか?」
「うん、大好き!前田くんは?」
「僕も大好きです」
「じゃあ一緒に食べようか」
「はいっ」
かわいい満面の笑みが返ってきました。本当に好きなんだろうな~と思ったんだけど…衝撃的な言葉が飛び出ました。
「うわあ、すごい!少し酸っぱいけど甘い!不思議ですね!苺ってこんなに美味しいのですね!僕初めて食べました!」
「ええっ、さっき大好きだって言ってたのに?」
「それはその、苺って、いち兄と同じ名前なので…」
ああ、そういう意味。いやそれだけで好きとかすごいね。美味しくてよかったね。一期さん、本当に慕われているんだなぁ。まあ、素敵だもんな。いいお兄さんだろうなぁ。前田くんがこんなに嬉しそうなんだもん。今度会う時はそういう視点で接してみよう。そしたら、少しは緊張しないで済む…かな。本当はその場に前田くんも一緒にいてほしいくらいだけど、近侍しか来れないんだもんね。審神者、そん時は気合い入れてがんばるとするよ。いつになるかは、わからないけどね…
マントがかわいい前田くん。