「やあ、主。はじめまして」
「石切丸さん、はじめまして」
「太郎太刀さんから聞いて来たけど…うーん、なるほど、早速だけどお祓いしようか」
「あ、はい。お願いします」
来るなり苦笑されるレベルって、どうなの。こういうのって、みんながみんなわかるわけじゃないのかな。太郎さんから後の方々は誰も何も言わないし、いろんなことあってお祓いしてもらうっていうのすらすっかり忘れてたけど、やっぱりわかる方にはすぐわかるんですね?
「ああ、そう不安そうな顔をしないで。大丈夫、すぐに終わるよ」
「は、はい」
そして始まるハラキヨ。正座した私の頭上でばっさばっさと御幣が鳴る。こ、こんなの初めてです…どきどき!
「祓い給え、清め給え…ハァッ」
「っ……え?あれ?」
「はい、終わったよ。ね?すぐだったろう?」
「は、はい。正直、拍子抜けです」
「ははは、そもそも大したものではなかったからね。でも、心身に影響を与えているのだから、ちゃんと祓うことができてよかったよ」
にっこり微笑まれて、なんだか心が軽くなった。お祓いされたからかもしれないけど、石切丸さんの笑顔にとても癒された気分だ。
「体の調子はどうだい?」
「えっと、いいです。なんだかすっきりしました」
「それはよかった。うん、これからは何かあったらできる限り私が祓ってあげるからね」
「ありがとうございます」
笑顔でお礼を云うと、石切丸さんがふっと柔らかく笑った。目じりが下がって、とても優しい笑い方をするんだなぁ~と見惚れていると、そっと手を取られた。うわ、大きな手。
「主に会えてとても嬉しいよ。ああ、君の気は温かくて気持ちがいいね」
「そ、そうですか?」
「うん。いろんなものを引き寄せてしまう理由がわかるよ」
「ええ~」
「ふふ、大丈夫。私がちゃんと守ってあげるからね」
きゅん。石切丸さんは三条の癒しどころだなぁ。今剣ちゃんも癒しだけど、それとは違う癒しだよ。パパっていうのわかるー。包容力ばんざい。
「三条の皆さんて仲良いのですか?」
「え?そうだね、うーん、皆自由だからね。悪くはないと思うけど、どうしたんだい?」
「いえ、あの、なんというか…皆さん個性的なので、どうなのかなって思って。やっぱり自由なんだ」
「ははは、うん、たぶん主が思っているとおりだよ」
あー、石切丸さんの包容力は、三条の自由っぷりに鍛えられたものかな。いやまぁ石切丸さんも割とマイペースなんだろうけど。出陣の時のセリフから察するにね…
「もしかして、皆に何かされた?皆悪気はないんだ。許してやってほしい」
「あ、いえ、全然怒ってないです!ただ、やっぱり自由だなーって感じです」
「あはは、なんというか、申し訳ない。きっと主に会えてより舞い上がっていると思うんだ。すまないね」
「いえ!石切丸さんが謝ることでは!」
「でも、許せないことがあるならちゃんと言うんだよ?本人に言いづらければ、私からそれとなく伝えるから」
じいいい~ん。パパ~、もう頼りにしてます~。まだ繋がれている手が大きくて、暖かくて、本当にお父さん思い出しちゃうな。ぜんっぜんうちのお父さんとは正反対なんだけど、なんだかセンチメンタル。
「…石切丸さん、ひとつお願いがあるのですが」
「なんだい?」
「あ、頭撫でていただけませんか」
「え?」
「すみません、少しでいいんです!だから…」
「ああ、いや、勿論それくらい構わないよ」
石切丸さんの右手が、少しだけぎこちなく、けれど優しく頭を撫でる。ああ、こんな風に頭を撫でられたのはいつぶりだろう。
「これでいいかな…え、主、もしかして泣いている?」
「す、すみません、なんだか感傷的になってしまって」
「大丈夫かい?憑き物が落ちた反動かもしれないね」
「あ、やめないで!お願い、もう少しだけ…」
「構わないけど…」
何度も頭の上を往復する暖かい手に、嬉しくも切なくもあって涙が溢れた。こんな初対面で、変な女だなぁと思われてもおかしくないことを頼んでいるししている自覚はあるけど、石切丸さんならそれすらも受け入れて許してくれそうだと思った。ああ、今更ながら、さっき次郎ちゃんと飲んだお酒が効いてきたような気がする。たぶん、それは気のせいなんだけど。
「…主は、ずっとがんばってきたんだね」
「え…?」
「大丈夫、君ががんばっていることを見ている者は必ずいる。私は、君ががんばっていることをわかっている。だから、安心して。泣きたい時は、泣いていいんだ」
「いしきり、さん」
「よくがんばってきたね。えらいね」
うううー、そんなこと、そんな優しい声で、優しい笑顔で言われたら、涙腺崩壊です。本格的に泣き出した私を優しく抱きしめながら、石切丸さんは何度も大丈夫と言って頭を撫で続けてくれた。気の済むまで泣いた後は、気分爽快でした。ありがとう、石切パパ。
石切さんに励まされたい。