「平野藤四郎といいます。主さまにお会いできて光栄です」
「平野くん、いらっしゃいませ。さあ、どうぞどうぞお掛け下さい」
「はい、ありがとうございます」
キリッとした表情の平野くんは、勧められるがまま席に着いた。手と足をお行儀よく揃えて、前田くんと並んで座っているところをぜひ見たいところです。かわいい。そう言えば、粟田口のみんなって最初ちゃんと名乗るなぁ。
「兄より、失礼のないようにと言われておりますので」
「兄って、一期さん?」
「はい。いくら主さまと以前からお付き合いがあったとしても、お目にかかるのは初めてなのだからきちんと名乗りなさいと」
うわー、めっちゃ行き届いてる。めっちゃ想像できるよその会話が。さすがしっかりしてるなあ。
「すみません、こういったことはあまり言うべきではありませんでしたね」
「ううん、私が聞いたんだから。教えてくれてありがとう。粟田口のみんなは仲がいいね」
「はい!」
満面の笑みが返ってきた。本当に仲よさそう。羨ましい。喧嘩とかしないのかな?平野くんはしなさそうだよね。
「兄弟仲がいいのはいいことだよね。他の兄弟刀たちはどうなのかな?みんな仲良くやってる?」
「はい、皆さま仲良しです。というより、全員が仲良いと思います」
「そっかー、よかった」
「全て主さまの人徳のなせる業です」
そ、そうかな?私関係あるかな??まあ、どんな理由であれ仲良きことは美しきかな。ま、うちまだ虎徹兄弟蜂須賀さんしかいないしな…。他はうまくやってるんだろう。
どんな生活してるのか気になってきたなぁ。でもそっちには行きませんからね、髭切さん。ぽん、と頭に浮かんだ髭切さんの笑顔に頭を振ると平野くんが首を傾げた。ごめんなんでもないよ。
「そうだ!鶯丸さまから、主さまが僕と前田に世話されたいと仰っていたと伺いました」
「えっ、やだ鶯丸さん言っちゃったの!恥ずかしい」
「喜んでお世話させていただきますので、なんでもお申し付けください!あ、お茶のご用意でもいたしましょうか?」
「う、うん、ありがとう。でも、のんびりしてっていいんだよ」
「そんな、主さまの前でのんびりなど」
「大丈夫!私以外に誰もいないんだし、咎める人はいないよ。いやお世話されたいというのは本当でもあるんだけど、平野くんはいつもがんばってそうだから、ゆっくりする時間も必要だよと思って」
「お気遣いありがとうございます。ですが、あちらでも兄弟と遊んだりゆっくりできる時間はありますし、僕はやっぱり主さまのために何かしたいです」
なんっっていい子なんだろうか。…ちょっと長谷部みたいな片鱗もあるけど…でも純粋なお気持ちなら、ぜひともお世話されたい。
「そっか。じゃあ、お願いしたいことあったら遠慮なく言うね」
「はいっ!」
「ふふ、今日はひとまず、少し私の話に付き合ってね」
「お任せください」
ちょっぴり胸を張って若干どや顔な平野くんぐうかわです。やっぱりお世話されるなら平野くんや前田くんみたいな可愛い子がいいよね。ごめん長谷部、君はお役御免になるかもしれな…あ、ううん、ごめん、しない。しないよ?だからそんなめっちゃ笑顔で迫ってこないで。って私脳内で何やってるんだろう。
「主さま?」
「なんでもないよ。いつもみんなどんなことして遊んでるの?」
「そうですね、この時期は雪だるまを作ったり、雪合戦もします。普段は追いかけっこやかくれんぼ…折り紙なんかもやります。あっ最近はしゃぼん玉が流行ってます!長谷部さんが作ってくれたんですよ」
「えっっ、長谷部が?」
驚き…どういう経緯でそんなことになったんだろう??あの長谷部がしゃぼん玉?短刀たちのために作ったってこと??
「最初は博多が、室内でもできて、新しく何か購入する必要もないような低予算な遊びはないかと思い立ったらしいです。それを長谷部さんにご相談したらところ、しゃぼん玉液を作ってくださって」
「っへえ。長谷部優しいね。てっきり、いつでもクールで『怠慢は許さん』てびしばし言ってるのかと思ったけど」
「そうですね、厳しい面もある方ですが、お優しい方です」
長谷部やるじゃん。見直したぞっ。ちっちゃい子に優しいクール男子ってすごいよいぞ。遠くから観察したいぞ。ところでしゃぼん玉って室内でやるもの??んん、小さい頃屋内でもやったことある気もするけど、基本的に外でやるものだと思ってたけど。
「室内というか、縁側から外に向けてやっています。一度室内でやったら部屋がべたべたになってしまいまして」
「だよね~ちょっとならいいけど、みんなでやるとなると大変そう。でも楽しそうだね」
「はい!ただ気泡が出るだけなのに、何故あんなに面白いのでしょう?」
「確かに…不思議だよね、見ていて飽きないし…あとはみんなでやるから面白いのかもね?」
「そうですね!1人でも楽しいですが、みんなでやるともっと楽しいです」
短刀のみんながわちゃわちゃしゃぼん玉で遊んでるの想像すると可愛いわー。…待って待って、私の脳内だと1番はしゃいでるの鶴丸なんだけど。
「鶴丸さまですか?はい、体がすっぽり入る大きさのを作ると張り切って、日々しゃぼん玉液の改良に勤しんでいらっしゃいます」
「…はは」
でん○ろう先生に相談かな。でも鶴丸さんなら自力で達成することに意味があるだろう的なことを言いそう。がんばってください。
「平野くんは何をするのが一番好き?」
「えっ、僕ですか?ええと、そうですね…どれも楽しいですし一番と言われると難しいです」
「そっか。遊びじゃなくてもいいよ?」
「あ…それなら」
「うん、何々?」
何か思い当たるものがあったのか、考えていた表情からはにかんだ顔になった平野くん。え、かわいいけど、なんだろう?
「こうして主さまとお話できることが一番好きかと…思います」
「う、うん…そっか。ありがとう。私も、平野くんとお話できて嬉しいし、好きだな…」
「本当ですか!嬉しいです!」
あかん。かわいすぎる。天使すぎる。満面の笑みにハートを射抜かれました。はあああああ、できることなら今ここで床をローリングしたい。
思わず抱きしめそうになったけど頭を撫でるだけで留めた私を誰か褒めてください。
お世話されたい。