「やあやあ、源氏の重宝、髭切だよ。主」
「髭切さん、お初にお目にかかります」
「うん、初めましてだね。あはは、そんなに堅くならなくても大丈夫だよ。取って食べたりしないから」
髭切さん、割とフランクですよね。大抵のことはどうでもいいんですよね。助かります。いやしかし美形だな。スタイルよすぎです。足ながっ!平安生まれなのに!
「ありがとうございます。あ、どうぞ好きに掛けてくださいね。今お茶も淹れますから」
「ありがとう。へえ、主はこんなところに住んでるのか。狭いねえ」
「すみません。一人暮らしにしては、広い方なんですけど」
「ありゃ、そうなの?ごめんね」
いえいえ、事実です。馬小屋とか言われなかっただけマシです。仕方ないよね。
「まあ住めば都と言うしね。うん、綺麗だし、いい匂いがするし、何よりあったかいし、居心地はよさそうだよね」
「いい匂い?」
ああ、ルームフレグランスの香りがするのかもな。この商品の香りとても気に入っているんだけど、もう鼻が慣れてあんまり感じないんだよね。くんくんと髭切さんと一緒になって部屋の香りを嗅いでいると、いつの間にか髭切さんが背後に立っていて首筋に鼻を近づけられた。えっ、いい匂いって、部屋の匂いのことじゃなかったの??
「部屋もいい匂いするけど、主もいい匂いがする。うーん、これが女の子の匂いなのかな?ふんわりしていて、好きだなぁ。僕、此処に住みたいな」
「ええっ」
来て早々そんなに気に入ったの?いやいや、そうじゃなくて、無理ですよ?住めませんよ?
「え、ダメなの?う~ん、本丸寒いし、君一人住まいじゃ寂しいだろうし、いい案だと思ったんだけどな」
本丸寒いしっていうのが一番の理由ですねわかりました。では春の景趣にしてあげましょうか。なんなら夏にしてもいいですよ?
「いやいや、季節感は大事にしないとね。冬は寒いけど、嫌いじゃないよ?寒ければくっつけばいいんだしね、こんな風に」
「ひゃっ」
いつまで後ろにいるんだろうと思ったら急に抱きしめられてびっくりしました。ちょ、ちょっと、うちはあったかいんですからくっつく必要はありませんよね?
「おお、主は柔らかいなあ。いい匂いがして、いい抱き心地がして、最高だね?」
「そ、それはどうも」
「このまま持って帰りたいなあ。あ、そうか。主が本丸に来ればいいんだ」
「いやいやいや、と、とにかく、お茶、お茶入りましたから!」
飲みましょう。一服して落ち着きましょう。話が変な方向に行きすぎです。平安刀こわい。
「それもダメなの?うーん、まぁ、今はいいか。考えておいてね?」
考えても無理なもんは無理です。行ってみたい気はするけど、リスクが高すぎます。
「本丸そんなに寒いんですか?わかんないけど、暖房器具とか用意できるなら揃えてくださいね」
「んー、そういうの僕もよくわからないからなあ。あ、でもこたつはあるよ。いいよねえ、あれ。外に出たくなくなっちゃうのが欠点だけど」
「あー、こたつはね~、人をダメにしますよね~」
「ここにはないの?」
「ないです。それこそ一歩も出られなくなる…」
1人暮らしでこたつを買ったら終わりな気がして買わないようにしてるんだ…こたつあったら絶対そこで寝ちゃいそうだもんな…だめだめ、よくない。違う、そんなことはどうでもよいのです。寒い他に、何か不便はありますか。
「ん?不便は特に感じないけど、いかんせん男ばっかりだからむさくるしいんだよねえ」
主やっぱり本丸来ない?ってそんな笑顔で言われても無理ですって。いい加減そこから離れましょうよ…。しかし、いくら美男子揃いと言えど男は男かぁ。三日月さんも言ってたけど、やっぱりむさくるしいかぁ。でも短刀ちゃんたちが緩和剤になってくれてるでしょう。
「強情だなぁ。ところで、主って僕のこと好きだよね」
「ぶっ、な、なんですかいきなり…まぁ好きですけど」
「だよね!うんうん、知ってたよ。僕も主のこと好きなんだ。だから」
「本丸にはいきませんよ?」
「ありゃ、だめだったかぁ」
みえみえだぞ兄者~。けらけらと笑っている髭切さんはなんだか楽しそうなのでよかったけど、やっぱりそこから離れませんか。案外強情なのは髭切さんの方なんじゃないかな??
手に入れたい兄者。